スピッツアルバム研究5「Crispy!」

こんにちは。

桃亀改めandです。

 

スピッツのアルバムを聞いて、

つらつらと感想というか個人的な解釈を

書いています。

 

前回「惑星のかけら」を聞いて

書いたものはこちらから。

https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2019/08/06/142203

 

 

今回は、4枚目のフルアルバム

Crispy!」を聞いていきたいと思います。

 

前作、「惑星のかけら」で

自分達が本来やりたかった音楽を

一通りやらせてもらえたスピッツ

 

売れてないのに好きな事をやらせてくれた

事務所への感謝も込めて、

スピッツは「売れる」という事を

意識しだします。

 

そこで、初めて外部から

プロデューサーを呼び、

「売れるための音楽」を目指して

制作していきます。

 

ここで呼んだプロデューサー、

笹路正徳さんからは

たくさんの事を学んだというスピッツ

結成20周年の際に

著書「旅の途中」という

本を出版しますが、

そこでスピッツのメンバーはたびたび

笹路学校」「笹路マジック」という

言葉を使用するくらい、

笹路さんによってスピッツ

大きく成長した事が窺えます。

 

そのひとつとして、今作から

ボーカルの草野マサムネさんは

持ち味である高音で歌うようになりました。

 

「売れないのは

自分の声が好まれないからではないか」

と悩み、あえて封印していた

草野さんの高音ボイスを

笹路さんが見出だし、

今やスピッツの特徴のひとつとして

大きな役割を果たすものに成長しました。

 

前置きが長くなりましたが、

さっそく聞いていきましょう。

 

Crispy!

1993年9月26日release


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収録曲

  1. クリスピー
  2. 夏が終わる
  3. 裸のままで
  4. 君が思い出になる前に
  5. ドルフィン・ラヴ
  6. 夢じゃない
  7. 君だけを
  8. タイムトラベラー
  9. 多摩川
  10. 黒い翼

 

 

1.クリスピー

 

アルバムの表題曲です。

 

実は「クリスピー」という単語は、

バンド名の候補として挙がっていたもの

だそう。

 

草野さんはとにかくバンド名には

「sp」と並ぶ単語を使いたかったようです。

(「Spitz」「Crispy」)

 

後にも「スピカ(spica)」など

それらしき名前の曲は結構登場します。

 

曲を聞いていきます。

 

最初から音が派手ですね。勢いがあります。

 

そして歌詞も

これまで英語が入る事が

ほとんどなかったのに対し、

カタカナが多く含まれるようになりました。

 

なんか当時流行っていた曲は

こういうポップで

日本の曲だけど英語が入る

みたいのだったんですかね。

 

言葉は流行を取り入れつつも、

歌詞の世界観としては相変わらずの

生や死、エロなどに

こだわっているようです。

 

この曲でいえば…私はどちらかといえば

エロのイメージです。

 

「笑われたっていいからと

クライベイビー恋してた」

 

「輝くほどに不細工な

モグラのままでいたいけど」

 

クライベイビー=泣く赤子

直訳するとこんな感じですが、

初めてとか生まれたてのような

意味合いを込めた言葉だと思うので、

私的にはなんか初恋とか、恋したて

みたいなイメージでした。

 

モグラ=土の中に潜っていく

という事で

恋した相手の心や体の中に深く入っていく

という感じです。

 

ここで出てくる

不細工なモグラ

うまく潜れない、潜る事に慣れていない、

まぁいわば未経験という事ですかね。

 

クリスピーはもらった

 

貰った、なので

相手のを という事になるとは思いますが、

そうするとここでのクリスピーは

初体験という意味になります。

 

「ちょっとチョコレートのクリスピー」

なので、

甘そうで少し苦そうなイメージです。

まさに、恋してた相手との初体験は

そんな感想だったのでしょう。

 

「閉じ込められたスマイル」

…他人には見せない笑顔を、

「独り占めにはしないでよ」

…自分にも見せてほしい と願いながら、

初めての体験をします。

 

「さよならありがとう 泣かないで大丈夫さ

初めて君にも春が届いてるから」

 

唯一、一文中にカタカナが出てこないので

むしろ安心する一文ですが。

 

相手の初めてをもらった事で

未経験からは卒業となりますが、

そのおかげで相手にも

春=明るい展開、幸せ

が届いています。

 

泣き虫で、

笑顔を他人に見せてくれない相手にも

初めて幸せな感情が生まれている様子が

窺えます。

 

「ちょっとチョコレートの

ちょっとカスタードの

ちょっとチェリーソースのクリスピー」

 

甘くて、苦くて、ちょっと酸っぱい。

まさに初恋、そして結ばれた

幸せが込められているように

感じられました。

 

音や歌詞の雰囲気が

今までのスピッツでは

想像できなかった感じなので

ギャップに違和感がありますが、

歌詞の世界観は相変わらずなので

逆に安心しますね(笑)。

 

 

2.夏が終わる

 

まさに夏の終わりを表現した1曲。

 

ポップでありながら

ゆったりと爽やかなメロディが、

これまでの猛暑と

その終わりを告げるような風を

イメージさせます。

 

歌詞もこれまた

日本語の表現が素晴らしいです。

1曲目の「クリスピー」で

頑張ってカタカナ

入れまくってた違和感から、

余計にスピッツの日本語の美しさを

感じられます。

 

「遠くまでうろこ雲続く」

一文で夏空を見事に表現しています。

 

「彼はもう涼しげな襟もとをすりぬける」

「日に焼けた鎖骨からこぼれたそのパワー」

「濡れた髪が 白いシャツ

はずむように たたいてた」

 

襟元とか鎖骨とか、

濡れた髪と白いシャツとか、

夏場の肌の露出や服が透ける感じとかが

とにかく色気を感じられます。

 

その僅かに見える

隙間からの裸の部分が

まさに一瞬の「夏」を表現しています。

 

そんな美しく切り取られた

「夏が終わる」。

暑すぎた夏は、夏の間の君との恋を

表現しています。

 

「深く潜ってたのに」

夏の間に君と深く愛し合っていたけれど、

暑い夏が終わる=熱い恋が終わる

という事で

夏と共に君との恋が終わったという、

二つの意味で寂しい夏の終わりを

感じている、という状況です。

 

最後の

「彼はもう涼しげな襟もとをすりぬける」

では、逆に一人

前を向いているようにも感じられます。

この一文でより

涼しい雰囲気を醸し出しています。

 

制作当時(93年春頃)は

本当に「暑すぎた夏」を想定して

作ったのに、

その年は記録的な冷夏だった、

というオチが

なんか好きです(笑)

 

 

3.裸のままで

 

https://youtu.be/JnSryjy5eNw

 

6thシングル。

本アルバムを担当した

プロデューサー、笹路さんと

初めてレコーディングした曲になります。

 

これまでのスピッツとはかけ離れた、

流行に乗ったポップなものを目指そうと

当時のヒットチャートなどから研究し、

ファンキーで

サックスなども取り入れた

ポップで大胆な音になりました。

 

歌詞も、よくよく見たら

スピッツワールド全開な

意味深なものとも読み取れますが、

パッと見はもう

90年代J-POPって感じですわ。

いいよね90年代J-POP。大好物です。←

 

歌詞を見てみましょう。

 

歌詞に「サル」とか「ケモノ」とか

出てくる時は

だいたい恋愛、エロ系だって

相場は決まってます。

(個人の解釈です。)

 

今まではこだわりが強く

一人でいた自分も、

他人と同じ

「寂しがりやのサル」だったと気づき、

そんな時に大きな存在と「めぐり会えた」。

 

出会ってからは二人、

「時はゆっくり流れ出す」し、

「裸のままで」…正直な自分でいられる。

 

そしてストレートに

「どんなに遠く離れていたって

君を見つめてる」

「ほら早く!早く!気づいておくれよ」。

 

なんかもうこの辺は

ザ・ポップって感じで、

今までの流れからだと

違和感はありますが、

ここまで降り切ってくれるスタイル

嫌いじゃない。

 

後半からは

どちらかというとまだスピッツだな~と

感じられるワードが出てきますね。

 

「地下道に響く神の声を

麻酔銃片手に追いかけた」

「無くしたすべてを取り戻すのさ

地の底に迷いこんでも」

 

心の中の底にある地下道に響き渡る

神の声=自分の中のネガティブな気持ち

(脳内の天使と悪魔で言ったら

悪魔の方)を、

「麻酔銃片手に追いかけた。」

麻酔で眠らせて

そんな気を起こさせないように

しています。

 

そんな心の底に迷いこんでも、

結ばれた二人は歩いていきます。

そんな二人を、

「光は妖しく照らしだす」。

 

二人で一緒にいれば、

確信的な光ではないけれど

それでも希望の光が差している様子が

窺えます。

 

「どんなに深く霧に包まれても

君を見つめてる」

「どんなに遠く離れていたって

君を愛してる」

 

ここもまたストレートな愛を

表現しています。

そういえばはっきり「愛してる」と

言ったのは初めてかもしれません。

意外でしょ。

 

こんだけストレートに、

流行りに乗っかったJ-POP作って

デビュー曲以来のMVまで作成したら

さすがにミリオンいくだろ~と

自信満々でリリースしたのに、

やっぱり違和感が拭えず、

結果オリコンチャート入りすら

果たせないのでした。

 

 

4.君が思い出になる前に

 

https://youtu.be/LrwC2Xu2POs

 

後に7thシングルとしてリリースされる曲。

 

こちらもまた、

流行りのJ-POPに倣って

ストレートな別れの曲になっています。

 

メロディも

笹路さんに見出だされた

ギター、三輪テツヤさんの得意な奏法

アルペジオが活用され、

ロディアスで美しく

儚く切ない世界観を演出している上に、

歌詞がめちゃくちゃ分かりやすいです。

 

メロディから歌詞、タイトルまで

とにかく流行りに乗っかった

「売れ線」を狙って作られた曲です。

 

歌詞解釈しなくてもいいだろレベルに

たぶんそのまんまの意味なんで

どうしたもんかと思いましたが、

とりあえず印象的な歌詞を挙げてみます。

 

「あの日もここではみ出しそうな

君の笑顔を見た」

「水の色も風のにおいも変わったね」

 

二人が離ればなれになってしまうと決まり、

最後に会ったシーン。

君の笑顔は変わらないように見えても、

水の色、風のにおいなど、

醸し出す空気は変わったと

感じています。

 

この絶妙な空気感を

見事に表現していて、

出だしから好きな歌詞です。

 

「追い求めた影も光も消え去り今はただ」

「君の耳と鼻の形が愛しい」

 

別れてもなお

君の事が忘れられない僕。

次第に君の姿が記憶からぼやけていっても、

耳と鼻の形は愛しいまま。

 

耳と鼻の形って随分マニアックですね。

フェチズムを感じます。

ここに今までのスピッツだな~と

逆に安心させられます。

 

そんな、ところどころでは

やっぱりスピッツと感じる歌詞も

散りばめられているものの、

全体で見たらまぁよくあるような

切ない系の曲って感じですかね。

 

けれど安定した演奏力、表現力で

見事にスピッツの曲として

成立させているところは

本当に凄いと思います。

 

この曲は

バラエティ番組のテーマソングに

起用されたり、

大ヒット後の1997年に

CMソングに起用されたりと

タイアップがついた事、

さらにこれまで避けてきた

TV出演をして宣伝をし、

初めて人気音楽番組

ミュージックステーション」にも

出演を果たすなど、

メディアへの露出が増えた事により、

結果的にスピッツの曲では

初めてのヒットとなりました。

 

発売から数年経った頃に

チャートインするという

謎現象な曲ですが

(後の大ヒットの流れと

CM起用の流れから)、

目標のチャートインを果たし、

スピッツ知名度を大きく上げた

きっかけの曲でもあります。

 

 

5.ドルフィン・ラヴ

 

とりあえず

これと次の「夢じゃない」の

歌詞が載ってる

歌詞カードの見開きページ、

若かりしスピッツが頑張ってて

可愛いから見てくれ。

 

それは置いといて、

もうね、タイトルからしてこれも

まぁ流行りのJ-POP

取り入れたんかな~って感じは

プンプンします。

 

ポップで軽快なリズムは

ジミ・ヘンドリックス

意識しているようで、

仮タイトルは「ジミヘン」だったりします。

 

そんな感じで始まりますが、

歌詞を見てみると

さっそくスピッツワールド。

 

どうやらドルフィンは

君…好きな人の事のようです。

 

「イルカの君は僕に冷たい」

「いつも oh yeah 氷みたい」

 

ツンデレ彼女いいね。

デレてはないから雪の女王系か(?)

 

とにかく冷たく

あしらわれているようですが、

そんな氷みたいな彼女と

「火の中へ」逃げ込みます。

 

氷が火の中へ入ったら溶けますよね。

つまりそういう事です。

周りにも自分にも冷たい彼女を

溶けるほど熱い愛で連れ出す、

みたいな感じですよ。

 

「トカゲのしっぽ」が切れても

「まだまだ死ねない」ほどに

君に恋していて、

君と溶けるほどの熱い恋を

したいと願います。

 

「朝もやに溶け出す三日月」

なんかここからは

とてもエロを感じました。

夜明けくらいでしょうか、

まだ三日月も浮かぶ頃、

結局「溶け出す」んですね。

 

「傷痕も気にせずにさ

自由に泳げたらいいな」

溶けるほどに熱い夜を二人で明かしたら、

ドルフィン=君、好きな人には

傷痕があったよう。

 

その傷痕を気にするが故の

冷たい態度だったのでしょうか。

 

「どうせ最後は私が傷つくだけだから、

私に言い寄らないでくれ」

みたいな。

 

なんだか切ない女性像に

なってしまいました。

 

けれど実際、僕は

そんな彼女の傷痕も受け入れ、

彼女が「自由に泳げたらいいな」と

願っています。

 

そんな氷みたいな君と、僕は

火の中へ逃げ込み、溶け合うのです。

 

 

6.夢じゃない

 

https://youtu.be/DIWRNAR-Od0

 

1997年に16thのシングルとしても

リリースされますが、

それとは少し違うバージョン。

どこが違うのか聞き比べても

面白いかもしれません。

 

元々シングルカットする予定では

なかったとはいえ、

ギター、三輪テツヤさんのアルペジオ

活用された美しいメロディに

しっとりとした歌詞と、

割と売れ線曲の流れで制作したのかな

という感じはします。

 

一言で言うと、

 

「裸のままで」

「君が思い出になる前に」

足して2で割った』

 

みたいな曲。

超個人的な解釈です。

 

これも別に歌詞解釈をしなくても

そのまんまな感じですね。はい。

だんだん説明が雑になってきてて

本当に申し訳ないです。。

 

ただ、

切ないようでどこか暖かみを感じる

という少し不思議な魅力を持つ歌詞だなと

全体から感じられます。

 

印象的な言葉を抜粋するというよりも、

全ての言葉が

小さい光と温もりを持っていて

少しずつキラキラしている

という印象なので、

全体の歌詞を見て

曲を聞いてみてほしいなと思います。

 

流行りのJ-POP感はあるものの、

そこまで派手ではなく、

でもしっかりと

スピッツの魅力的な一曲としての

存在感が凄い曲です。

 

アルバムに収録された1993年から

約4年の歳月が経った1997年に

シングルカットという

これまた謎現象に遭う曲ですが、

これもまた、

大ヒットして多忙になったスピッツが、

新しいドラマの主題歌の担当となり

新曲がなかなか書けないという状況で、

この曲をタイアップさせた

という経緯があるようです。

…たしか。

 

主題歌したドラマ「ふたり」では、

挿入歌もこのアルバムの収録曲、

「君だけを」を起用しています。

このドラマきっかけ、

またはつい最近まで

有吉ゼミ」の「家を買う。」シリーズで

頻繁に使用されていたので、

曲の知名度

結構あるのではと思います。

 

バラエティでは

ごく一部分だけ流れてたので、

ぜひこの機会に()

1曲じっくり聞いてみてください。

 

 

7.君だけを

 

ゆったりバラード。

 

弦楽器と重なり、

優雅でおおらかな世界観が

広がります。

 

歌詞を見ていきましょう。

 

「街は夜に包まれ 行きかう人魂の中」

夜の街並みの様子が描かれます。

 

人混みではなく人魂なのが

なんかいいですね。

感情なんか特にない、

魂でしかない人々って感じが

疲れた夜の街並みにたくさんいる

って感じがします。

 

「大人になった哀しみを見失いそうで怖い」

 

子供から大人になる事、

大きな変化に恐れていた

純粋なあの頃の気持ちを

持っていたいけれど、

疲れきった夜の街をさ迷っている

人魂の中にいたら、

自分もそこに飲まれていって

純粋な気持ちを

忘れてしまうのではないか、

そんな恐怖を表現しています。

 

「星の名前も知らず

灯りともすこともなく」

「白い音にうずもれ カビ臭い毛布を抱き」

「思いをはせる 夜空に」

 

空には満天の星空が広がります。

けれどその星たちの名前も知らない。

星空ひとつで

なんとも寂しげな表現をしてきます。

 

灯りをともすこともなく、

ただカビ臭い…使い古された毛布

を抱きながら、

寂しげな星空に思いを馳せます。

 

思いの先には……

 

「君だけを必ず 君だけを描いてる」

 

きっと

変わりたくなかったと願ってしまうのは、

君がそこにいないから。

 

君といた頃は

子供のように純粋でいられたけれど、

君が遠くに行ってしまってからは

周りの空気に

飲まれていってしまうくらい

脆くなってしまった、

という状況なのでしょう。

 

遠距離になってしまったのか、

はたまた夜空の向こう(天国)に

行ってしまったのかは

分かりませんが、とにかく

そんな一人で見上げる寂しい夜空に

君の姿を思い描いています。

 

「一人いつもの道を

歩く 目を閉じて一人」

それでも今は、

一人きりの道を

歩いていかなければなりません。

 

「不器用な手で組み立てる

汚れたままのかけらで」

君の姿を思い描き、

君が残してくれた汚れたかけらを

不器用ながらにも

心の中で組み立てていこうとします。

「いつか出会える時まで」。

 

君の記憶や幻想を浮かべながらも、

寂しく一人で生きていく様子が

感じられました。

 

中盤のギターソロやアウトロのメロディも

寂しくも美しく儚い世界観を

演出しています。

 

 

8.タイムトラベラー

 

ポップだけど

どこかメロディアスなイントロが

印象的な曲。

 

タイトル通り、

タイムトラベル(時間旅行)を

想像する歌詞ですが、

全体的な世界観は「母性」。

そこも意識して聞いていきましょう。

 

「うす暗い屋根裏で見つけたその扉」

 

世界観が「母性」と聞くと、

このフレーズで思い浮かべたのは

母親のお腹の中にいる赤ちゃんが

いよいよ外に出てくる瞬間、

というものでした。

 

「ほほえむ静かに埃をはらったらすぐに

誰だかわかるはず」

 

扉(出口)の埃をはらったら、

もうすぐに自分の母親と対面できる、

というイメージです。

 

「時代のすき間へと つながるたそがれに

鳥居を抜ければ

そこはまぶしい過去の国」

 

一方で、

いよいよ母親になるという

瞬間の「君」。

 

その一瞬で、

自分が産まれてきた

瞬間の事を思い出して、

まさにその一瞬が

タイムトラベラー」になっている

という表現だと

私は思いました。

 

「さぁ僕が産まれる前の

さぁ君と似ていたママに答えをきくために」

 

ママ呼びなのは

ギョッとするかもですが置いといて。

 

君と似ていたママ、

まさに同じ経験をして自分を産んだ

過去の母。

 

自分が母になるまで、

その苦労は分からなかったけれど、

同じく母になる今なら

分かるはずだから、答え合わせできる

という感じでしょうか。

 

まさに、自分が母になる瞬間に

自らの母親の「母性」を感じる

一瞬の時間旅行なのでした。

 

また、そんな母になる「君」を、

「冷たい風になり背中にキスした」

父親になる「僕」も、

「誰よりも大事に思ってた」。

 

ここにも深い愛を感じられます。

 

「変わって行くために」、

二人と新しく産まれてくる命は、

深くて優しい愛に包まれている、

そんな幸せな一幕を想像しました。

 

 

9.多摩川

 

お気付きかと思いますが、

後半辺りから

前半のポップな勢いどうした

ってレベルで暗くなってく気がします。

 

曲調がどんどん落ち着いていくんですね。

途中で限界感じないでよ。。

 

いや、

ずっとポップはさすがに疲れるから

ちょいちょいバラードとか

入れてもいいんだけど、

後半にまとめられるとなんかこう、

聞き始めと聞き終わりの感想が

なんというか…あれ…??

となってしまうのは

私だけでしょうか。

 

さて、曲を聞いていきましょう。

 

多摩川

東京の結構有名な川ですね。はい。

 

音はめちゃめちゃ暗くて、

暗く寂しい川を想像してしまいますが、

ボーカルの高音が美しく響いて

川の美しさを表現しています。

 

相変わらず水の表現が天才的なスピッツ

 

「蒼白き多摩川に 思い浮かべて

すべるように穏やかに 今日が暮れてゆく」

 

まさに日が暮れて暗くなっている

寂しげな多摩川に一人

立っている様子が窺えます。

 

「風の旅人に憧れた心よ」

「水面の妖精は遠い日々の幻」

 

一人穏やかに、

悪くいうと変化のない退屈な日常が

今日も静かに終わろうとする頃、

ふいに風に乗るまま、

きまぐれに旅する旅人に

憧れてしまったり、

遠い日々に見た

水面の妖精を思い出してしまって、

あれは幻だったと落胆したり。

 

「僕の中に」も、

「君の中に」も、そういった

非日常に憧れを抱きながらも、

自分はありふれた平凡な日常を送っている

そんな小さな絶望やモヤモヤを

抱えながら

今日も一日を終えていくのです。

 

あえて実在する川の名前を出すことで、

より今いるここは

現実の世界なんだと

実感させられます。

 

自分も

現実のありふれた世界にいる事が

なんだか残念に思えてしまうような、

全体的に美しいけれど

寂しくて冷たい世界観を

突き付けてくる曲だと

感じられました。

 

10.黒い翼

 

いきなり歌が始まって

ちょっとビックリします。

 

ゆったりしているけれど、

おおらかな気持ちになるような

力強さも感じられるメロディです。

 

「嵐の午後にゴミ捨て場で目覚めた」、

「焦げた市街地をさまよう僕」は

なんとなくカラスのイメージでした。

 

これまでの僕は

ゴミ捨て場で目覚めるような

汚れた感じから、

「いつもモザイクのきれはしだけ握らされ

笑い話のネタにもされてきたけれど」、

「もう二度と負けたりしないから」

と誓い、大空を飛んでいきます。

 

「黒い翼でもっと気高く

無限の空へ落ちてゆけ」

「まだ見ぬ海を駆けてゆけ」

 

力強い気持ちで、気高く飛び、

道の海を目指して駆けていきます。

 

無限の空へ落ちてゆけ、は

目の前に広がる無限の可能性に向かって、

迷うことなく突き進めという

メッセージも込められているのではと

感じました。

 

最後コーラスが増えて

繰り返されますが、

アルバムの最後の曲という事もあり、

今回初めて

外部プロデューサーと制作していき、

仲間が増えた事で、

スピッツというバンドも

迷うことなく大きく

無限の可能性に飛び込んでいく、

という宣言のようにも

感じられました。

 

 

《まとめ》

 

以上で4枚目のアルバム

「Crispy!」を聞き終わりました。

 

リリース当時は

これはヒットするだろと

期待していましたが、

残念ながら結果的にあまり売れず、

スピッツ(特に草野さん)は落胆し、

さらに方向性が迷宮入りしてしまいます。

 

ところが、

流行に乗ったキャッチーな曲、

積極的なメディアでの宣伝、

さらに後にシングルカットした

「君が思い出になる前に」

のヒットなどもあり、

スピッツというバンドは

徐々に知名度を上げていきました。

 

このアルバムがあったからこそ

このあとの大ヒットに

繋がっていると考えると、

このアルバムもスピッツ史においては

重要な作品となっています。

 

そんな、迷走期の中にも

これまでのスピッツの魅力と

これからさらに輝く

スピッツの魅力のかけらが詰まった

このアルバムも

是非聞いてみてください。

 

余談ですが、ジャケットの少年は

ボーカルの草野マサムネさんです。

目の大きさがはっきり分かり、

顔の美しさも

売りのアピールに使ってきた辺りなので、

ビジュアル面でも

楽しめると思います。

 

以上、桃亀改めandでした。