スピッツアルバム研究8「インディゴ地平線」

こんにちは。

桃亀改めandです。

 

スピッツのアルバムを聞いて、

個人的な解釈を交えながら

感想をつらつらと書いています。

 

前回、「ハチミツ」を聞いて

書いたものはこちらから。

https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2019/09/20/071002

 

 

今回は、7thアルバムインディゴ地平線

を聞いていきたいと思います。

 

前作「ハチミツ」で

スピッツ自身も満足のできる

アルバムが出来てしまい、

売り上げも凄い事になってしまった事で

逆にプレッシャーになってしまい、

このアルバム制作は

だいぶ苦戦したようです。

 

さらに、

爆発的にヒットしてしまったせいで

周りの反応も変わってしまい、

連日のメディア出演にくたびれている上に、

プライベートまで騒がれてしまうほど

混乱した状態になってしまいます。

 

元々そんなに売れる気はなく、

正直この勢いが収まってほしいと

メンバーたちは思っていたようですが、

このアルバムに先駆けリリースされた

「チェリー」がまたまたヒット。

 

さらに混乱した状態に。

 

この混乱から

ギターの三輪テツヤさんは

スランプ状態に陥ってしまい、

ギターが弾けない状態にまで

なってしまいます。

 

そんな混乱の中で苦戦しながらも

まだまだ勢いが収まらない、

このアルバムを

さっそく聞いていきましょう。

 

 

インディゴ地平線

1996年10月23日release


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収録曲

  1. 花泥棒
  2. 初恋クレイジー
  3. インディゴ地平線
  4. ハヤテ
  5. ナナへの気持ち
  6. 虹を越えて
  7. バニーガール
  8. ほうき星
  9. マフラーマン
  10. 夕陽が笑う、君も笑う
  11. チェリー

 

 

1.花泥棒

 

元々、前作「ハチミツ」の時点でも

草野さん以外のメンバーにも

曲を持ってくるように指示があった

ようですが、

結果的に「ハチミツ」では

採用されていませんでした。

 

そして今回のアルバムでも

メンバーがそれぞれ作曲した曲を持ち寄り、

今回は2曲採用されています。

 

その1曲。

久々にギターのテツヤさん作曲です。

 

これまでのテツヤさん作曲といえば

どこか上品な音が特徴でしたが、

こちらも、イントロの最初は繊細かと

思いきや

全体的にはテンポの良い

明るくて軽い感じになっています。

 

曲はテツヤさん作曲ですが、

歌詞は草野さん作詞です。

さっそく見ていきます。

 

「どうせ一度なら心が向かうまま花泥棒」

 

「あの娘に似合いそうな花を見つけたぞ

花泥棒」

 

恋をして、好きな子に花を贈る、

という曲です。

 

「花泥棒」は、

花を贈って君の心を奪おうとしている人を

指すと予想します。

 

「この花を渡せたらそれが人生だ!」

 

花を贈ることに

人生を懸けて

一かバチかの駆け引きをしようと

しています。

 

「走るよありったけ力が尽きるまで花泥棒」

「逆に奪われてすべて奪われて花泥棒」

 

いつでも全力疾走で、

頑張って好きな子に振り向いてもらおうと

奔走しますが、

逆に自分の心が彼女に奪われてばかり。

片想いの日々は続きます。

 

「ああ 夢で会う時はすごくいいのにさ!」

 

夢の中でのシミュレーションでは

うまくいっているのに、

現実に戻ると

彼女に振り回されてうまくいかない、

というギャップがあるようです。

 

片想いの心が慌ただしくなってる様子と、

「花泥棒」の部分の

メンバーみんなのコーラスの

わちゃわちゃ感が重なり、

せわしなくも楽しい感じが

表現されています。

 

こういう、

わちゃわちゃしてる曲は

確かにこれまでのスピッツには

なかったかもしれません。

実際、草野さんは

「自分には作れない曲」

絶賛しています。

 

いつもとは違う雰囲気も

また違った魅力に溢れていると

感じさせてくれる曲です。

 

 

2.初恋クレイジー

 

タイトルが凄く好きです。

こういう漫画ありそう。

 

まさに初恋によって

心が狂わされている、という曲です。

 

ピアノのイントロが

可愛らしくもちょっと切ない

恋心と重なり、

最初から

胸が締め付けられるような

気持ちになります。

 

「見慣れたはずの街並も

ド派手に映す愚か者」

「君のせいで大きくなった未来」

 

恋をしたことで

いつもの景色も明るくなってしまう、

その様子を愚かだと

自分でも思ってしまうという、

いつもと違う違和感を抱いています。

 

君のおかげ、よりも せい

というのが、

思ってもいなかった恋という感じを

漂わせていて良いです。

君のせいでこんな自分の未来も

大きく想像できるようになりました。

 

「夢の世界とうらはらの

苦し紛れ独り言も

忘れられたアイスのように溶けた」

 

夢の世界では

片想いの相手ともうまくいっているのに

現実にはなかなか恋が発展しません。

そんなモヤモヤした恋心からくる

溜息混じりの独り言も、

君を見るだけで

忘れられたアイスのように

溶け出していくのです。

 

アイスという言葉が、

とろっと溶けていく様子と

甘い恋心を表現してていいですね。

 

「誰彼すき間を抜けて

おかしな秘密の場所へ

君と行くのさ迷わずに」

 

「言葉にできない気持ちひたすら伝える力

表の意味を越えてやるそれだけで」

 

「おかしな秘密の場所」は

正式な、というか正当な恋というよりも

二人だけに分かる小さな恋

のようなものをイメージしました。

 

具体的な場所ではなく

こういう関係になれたらいいね、みたいな

理想を指していると感じました。

 

自分のこの恋心に正直に行動して、

言葉で伝えるよりも

もっと力がある、

「好き」という表面上の愛よりも

もっと伝わる愛を届けられるような、

そんな関係になりたいと

願っているようです。

 

素直に言葉にはできないけれど

ちょっとした仕草や行動で

間接的に愛を伝える様子が

初恋らしいもどかしさがあって

キュンとします。

 

「軽いペーゼで満たされて

遠吠えしてた常日頃

違う四季はあっという間に過ぎて」

 

「ペーゼ」という言葉を調べてみたら、

フランス語で「接吻(キス)」、

ドイツ語で「悪」という

意味があるそうです。

 

まぁ恋心を歌ってるこの曲だったら

フランス語での意味の方が

合ってるかもですね。

 

でもスピッツの恋は

どこか毒がある、愚かな事だ、という

表現が多いので、

軽いペーゼ=悪 とも

捉えられてしまうという。

 

とりあえず今回は接吻という意味に

訳しますが、

軽いキスで心が満たされて、

興奮して遠吠えしてる日々を

過ごしています。

初恋が実ったのでしょうか。

 

なんか初めてのキスに

ドキマギしてる感じもまた

可愛いです。

 

「心のプロペラまわす

バカげた秘密の場所へ

約束だよね二人きり」

 

「優しくなれない時も優しくされない時も

隠れた空は青いだろう今のまま」

 

興奮して舞い上がっている様子を

心のプロペラを回す と表現します。

 

「バカげた秘密の場所」も

他人から見たらバカげてるなと

思うくらい甘い関係を

君と二人で築き上げたい、という

理想のようなものだと

思われます。

 

自分が相手に優しくなれなかったり、

逆に自分が相手に優しくされない時も、

曇っているように見えても

雲に隠れた空は

今のまま晴天が続いています。

 

たまには少し

思い通りになれない時もあるけど、

変わらず君の事が好きだ、という

気持ちを表現しています。

 

「泣き虫になる 嘘つきになる 星に願っても

例えば僕が戻れないほどに壊れていても」

 

恋をする事で

それまでなかった感情が生まれています。

 

些細な事が気掛りになって

泣き虫にもなるし、

君に見てもらいたくて

嘘つきにもなる。

そしてガラでもないと思いながらも

結ばれますようにと

星に願ったりします。

 

これまでの自分に

もう戻れないほどに

君に恋をしてしまって、

自分自身が壊れていたとしても、

君と二人で

幸せで愚かな関係を築きたいと

願うのです。

 

切ないようで幸せな

初恋のときめきが

切なくて可愛いメロディに乗せて

キュンと心に響きます。

 

 

3.インディゴ地平線

https://youtu.be/cdMEZkGW2PA

 

アルバムの表題曲です。

 

全作「ハチミツ」は

全体的に可愛らしくてファンタジックな

雰囲気だったので、

その対称として今作では、

しっかりと足で地面に立って

まっすぐ地平線を見ている、という

コンセプトにしたようです。

 

静かな決意のようなものが

ゆったりとしていながらも

しっかりとしたバンドの音で

表現されています。

 

歌詞を見ていきます。

 

「君と地平線まで遠い記憶の場所へ」

「溜め息の後のインディゴ・ブルーの果て」

 

地に足を着けて、まっすぐ立つ

そんなイメージがある曲。

 

「地平線」は

決意のようなものという解釈です。

 

そんな決意に辿り着くまで、

君と少しばかり

遠い記憶の場所へと行きます。

そして、溜め息の後には

インディゴ・ブルー、

藍色の果てが

やってくる。

 

藍色は、なんとなく

悲しみとかそういう感情を

イメージする色なので、

ここでの遠い記憶とは

君といた時間の記憶で、

今はいない君を想って

溜め息をついた後に

悲しみが押し寄せてる、という

描写になります。

 

「つまずくふりしてそっと背中に触れた

切ない心を噛んで飲み込むにがみ」

 

つまずくふりして背中に触れた、

それだけでこっちはなんか切ないです。

 

そういう偶然というか

自然に触れあえるような

関係ではない、

つまりは僕の片想いだったのかな、と

予想します。

 

叶わないまま

今はいない君との記憶を思い出しては

心が切なくなり、

そんな切ない心を噛んで飲み込むと

ひたすら苦みが続きます。

 

「逆風に向かい手を広げて

壊れてみよう僕達は希望のクズだから」

 

受け入れなければならない現実を

逆風とし、

悲しい現実を手を広げて受け止めたら

きっとこれまでの自分達は

壊れてしまうかもしれないけれど、

これでも僕達は

「希望のクズ」だから

いっそ全て受け止めて壊れてみようと

なき君にも呼び掛けます。

 

希望のクズ、は

可能性や未来があるけれど

いつでも壊れたりなくせたりも

出来てしまうような繊細な存在、

みたいなイメージです。

 

希望の粒、とか光とかなら

もっと明るい未来がある人の

ようにもなりますが、

あえてクズなのは、

遠い記憶にまだしがみついてるような

自分の愚かさを認めつつも、

その愚かな状態で

幸せになれるような自分に対する

情けなさみたいなものも

含まれていると感じました。

 

そんな情けない気持ちを引きずりつつも

少しずつ現実を受け入れ、

しっかり今

地に足を着けて立って歩いていく、

という決意が感じられます。

 

「歪みを消された病んだ地獄の街を

切れそうなロープでやっと逃げ出す夜明け」

 

歪み、は

君がいる記憶の中で感じられた

苦みや少しの幸福感の事だと思われます。

しかし、次第に

記憶というのは薄れていくものです。

 

記憶を消されてしまった街は

まさに病んだ地獄のようで、

そんな地獄のような現実から、

切れそうなロープで

夜明けに逃げ出します。

 

切れそうなロープ、が

綱渡りのような

危うい感じを放ってます。

 

「寂しく長い道をそれて

時を止めよう骨だけの翼眠らせて」

 

寂しく長い道、は

君のいない地獄のような、

だけどこれからも一人続いていく

長い人生を指していると感じられます。

 

そんな道をそれて、

切れそうなロープで夜明けに逃げ出したと

あるところから、

君を追って

君のいる死の世界へ

向かった、という解釈になります。

 

そしてまた

君と会えた時には、

もう二度とはぐれないように

この時を止めて、

骨だけになった翼を眠らせてしまおうと

誓います。

 

骨だけの翼、は

飛び立てる僅かな力も

削られてボロボロになった状態、の

イメージです。

 

地獄のような残りの人生に疲れて

心身が削られている状態で、

僅かな力を振り絞って君に会えたら、

その僅かな力も役割を終え、

永遠に眠っていよう、という

切ない描写になります。

 

「凍りつきそうでも泡にされようとも

君に見せたいのさあのブルー」

 

君のいない街、が

寒く冷たく感じて、

そんな中で凍りつきそうになっても、

泡にされようとも、

君にただ、

この決意をするに至った際に見た

寂しい感情を君にも見せるために

君の元へと向かっています。

 

「君と地平線まで遠い記憶の場所へ

溜め息の後のインディゴ・ブルーの果て」

 

「逆風に向かい手を広げて

壊れてみよう僕達は希望のクズだから」

 

「凍りつきそうでも泡にされようとも

君に見せたいのさあのブルー」

 

ここでの

「インディゴブルーの地平線」は

君を失って、寂しく切ない世界に

なってしまった街から抜け出して、

もう一度君と会い、

永遠になる、という決意を

表現しているものだと、

ここまで聞いてきて感じられました。

 

「少し苦しいのは少し苦しいのは

なぜか嬉しいのはあのブルー」

 

君を想っての決意は、

少し苦しいけれど、なぜか嬉しい。

 

スピッツの恋愛観特有の、

切なく悲しい結末でも、

二人だけの間ではハッピーエンド、みたいな

まさに二人だけの幸せを

手に入れて嬉しくなった、

という締め方です。

 

MVでも

メンバーは冬をイメージする厚着、

さらにアルバムジャケットは

青く澄みきった空の下、

バイクでどこかに

行ってしまいそうな女性という、

この曲にマッチしたような

冷たさや寂しさ、

そして新たなところへ出発するという

決意が感じられるものになっています。

 

アルバムを通じて、

これまでとは違う、新たなところへ

しっかり自分の足で歩いていくという

バンドとしての決意も

表現したかったのかな、と

感じられました。

 

 

4.渚

https://youtu.be/B7T4NNNWeHg

 

14枚目のシングル曲。

 

リリース時にはグリコ「ポッキー」の

CMソングに起用され、

さらに2016年頃、この曲が

SUBARUフォレスター」のCMソングに

起用され、

スピッツが再注目を集めました。

 

さらに2017年には

音楽著作権管理会社が主催する

「NexTone Award」第一回に

最高賞であるGoldMedal賞を

受賞しました。

(この音楽著作権管理会社が管理する

楽曲の中で一番使用されたとして受賞)

 

そんな輝かしい記録もあるこの曲ですが、

制作時はかなり大変だったようで、

先述のギターの三輪テツヤさんが

原因不明のスランプに陥ってしまい

ギターが弾けなくなってしまった

事などにより、

当初は前年に♪涙がキラリ☆

発売したように 7/7、七夕に

シングルとしてのリリースを

予定していましたが間に合わず、

結局9月に発売するなどしていたようです。

 

この曲では、三輪さんを

サポートするため、

これまでライブでは

ギターを演奏していたものの

レコーディングではあまり弾いてこなかった

ボーカルの草野さんが

ギターも担当しています。

 

曲そのものは

結構昔からアイディアがあったようで、

そこでの苦労は

あまりなかったようです。

 

歌詞も、

草野さんが通っていた

武蔵野美術大学

生物学を教えていた方が、

は、陸海空のどれでもなく、

しかしその全てが関係しているエリア」

語っていた事が

ヒントとなっているそうです。

 

渚=神秘的なところ、

というイメージが

先行してあるといいます。

 

前置きが長くなりましたが、

そういう事も踏まえて聞いていきましょう。

 

クレジットはありませんが、

シングルバージョンと

アルバムバージョンでは

若干音が異なるようです。

 

シングルバージョンでは

シーケンス(打ち込み)の音が

カットされてるのが、

アルバムバージョンでは

シーケンスの音のイントロで始まったり。

 

そんな音の違いにも注目しつつ

聞いてみると、

なんだかアジアの真夏を

イメージするような、

美しく神秘的な雰囲気を漂わせながらも

民族的な、湿度も感じるような

そんな不思議なメロディが続きます。

 

神秘的な渚の歌詞を見ていきます。

 

「ささやく冗談でいつも

つながりを信じていた

砂漠が遠く見えそうな時も」

 

渚という神秘的なところと

君と些細な繋がりで

ずっと一緒にいられると信じている

その儚さが重なります。

 

ささやく冗談、というのが

なんかくすぐったいような

可愛らしさも感じます。

 

恋が枯れてしまいそうで

砂漠が遠くに見えそうになっても、

そんな些細な繋がりを信じて

二人の恋は続きます。

 

「ぼやけた六等星だけど

思い込みの恋に落ちた

初めてプライドの柵を越えて」

 

ぼやけた六等星、は

自分自身の事を指していると感じました。

 

六等星はだいぶ小さくて

一等星よりは映えない存在の光

ではあるものの、

そんな冴えない自分でも

君に優しくされて

思い込みの恋に落ちます。

 

これまで固いプライドがあり、

なかなか素直に恋と

認められなかったけれど

君に対しては

プライドなんていう柵は飛び越えて、

素直に恋をしている、

という様子でしょうか。

 

「風のような歌届けたいよ

野生の残り抱いて素足で走れば」

 

風のような歌、は

ごく自然な告白、みたいなイメージです。

 

ふと吹いてくるような、

そんな自然さで君に気持ちを届けられたらと

考えています。

 

野生の残り、はそのまま

自分の中にある野性的な部分、

ここでは性的な部分でしょうか。

自分も本能のままに

ありのままの自分で

自分の気持ちを持って君に向かって

走っていきます。

 

「柔らかい日々が波の音に染まる

幻よ醒めないで」

 

柔らかい日々、

そんな君といられる日々は

柔らかく優しく、幸せな時間であると

考え、

そんな優しい日々は

神秘的な渚の波の音によって

染まっていきます。

 

つまりこの恋は

自分にとって神秘的なもののまま

その雰囲気を閉じ込めている、という

イメージになります。

 

神秘的な恋のまま、

その幻が醒めないように願っています。

 

この恋自体が、

実際に叶っているものではなく、

自分の中でどんどんイメージが膨らんで

勝手に神秘的なものにしてしまっている、

という様子です。

 

「ねじ曲げた思い出も

捨てられず生きてきた

ギリギリ妄想だけで君と」

 

君との恋を

自分の中でどんどん神秘的なものに

変換して、

君との思い出も膨張したまま捨てられず、

ギリギリのところを妄想だけで

君と生きています。

 

「水になってずっと流れるよ

行きついたその場所が最期だとしても」

 

風のような歌同様、

君に自然な形で感じてもらえるような

ものとして、

自然に流れる水になります。

 

水は穏やかで綺麗ではある一方で

生命には絶対必要なものでもある

不思議な存在というイメージが

私の中ではあるので、

もしかしたら、自然に流れつつも

君にとって絶対的に必要な存在になりたいと

願っての水なのではないのかな

とも思います。

 

「柔らかい日々が波の音に染まる

幻よ醒めないで」

「渚は二人の夢を混ぜ合わせる

揺れながら輝いて」

 

神秘的な恋のまま醒めないで、

神秘的な渚にて

そんな二人の夢を混ぜ合わせます。

 

自分の夢は

この幻のような儚い恋が続く事ですが、

君の夢は果たして…

 

そんな心の揺めきも

押し寄せる波と一緒に輝いています。

 

神秘的な渚という場所と

儚い恋の掛け合わせに、

渚にある湿っぽいけど爽やかな空気感や

常に心情と共に揺れて輝く波、

そしてそんな曖昧なところに

立っているという実感が、

まさに先述した

陸海空全てに関連している渚を

表現しています。

 

常々私は

スピッツ水の表現が天才的なバンドと

言ってますが

これは最高クラス。

 

そしてもう一つの説、

スピッツの漢字一文字タイトル曲は神曲 説。

(楓、桃 など…マジで神曲。。)

 

その両方の要素を持ち合わせていて

歌詞も音も確かに渚そのものを

見事に表現したこの曲は、

自他ともに認める名曲です。

 

スピッツのシングル曲としては

初のオリコン初登場一位に輝き、

本人たちもとても気に入っているようです。

 

 

5.ハヤテ

 

この曲は個人的に思い入れがあります。

 

会いたい人になかなか会えないし、

当時やってたバイトはキツいし…で

ナイーブになってた頃、

朝に聞いて

ひと泣きして一日を始める

っていうのをやってた、という。

 

涙活するには個人的にオススメな曲です←

 

イントロから全体のメロディ通して、

ギターのメロディが

美しくも可愛くて

ちょっと切ない感じなんですよね。

 

イントロからメロディの

歌が始まる前から既に

なんか胸が締め付けられるような

音をしてます。

 

そして歌詞も、

片想いの相手に会えない、みたいな

これまた切ない描写が多くあって、

メロディでも泣けて

歌詞でもキュンとしながら泣けてくる。

(個人的な感想)

 

さっそく見ていきましょう。

 

「気まぐれ 君はキュートなハヤテ」

「倒れそうな身体を駆け抜けた」

 

気まぐれな君を

「キュートなハヤテ」と表現します。

 

可愛い疾風…

気まぐれに、

こちらに意識があるように見せかけて

すぐにその気持ちが

そっぽを向いてしまうような君に

愛しさを感じているようです。

 

そんな一瞬の風のような君は

ボロボロになって倒れそうな

自分の身体を駆け抜けます。

 

精神的にダメになりかけたところに

ふいに君がやってきて

君に恋をしたことで

また生きていけると思ったようです。

 

「言葉はやがて恋の邪魔をして

それぞれカギを100個もつけた」

 

ふいにつく、

恋心を隠したいが故の

小さな意地や嘘によって、

その言葉たちが恋の邪魔をします。

 

なかなか素直になれないようです。

 

その数々の言葉によって、

開けるかもしれない君の心に辿り着かず、

目の前の扉を閉ざすように

それぞれに鍵を掛けてしまいます。

 

「でも会いたい気持ちだけが

膨らんで割れそうさ

間違ってもいいよ」

 

目の前の扉を閉ざされて、

せっかく生きる糧になっていた君は

また消えてしまい、

ただただ会いたいという気持ちが

どんどん膨らみ、

割れて溢れていきそうになります。

 

このもどかしくも切ない片想いの感じが

分かりすぎて泣けます。

 

この気持ちが間違いだったとしても、

今はただ君に会いたいという

その気持ちが溢れそうになって

切なくなっている、という

胸を締め付けられる日々を

過ごしています。

 

「なんとなく君の声が聞こえて

はりきってハートを全部並べて」

 

君に会えなくて

寂しく切ない日々を過ごしていると、

ふいに君の声を思い出します。

 

その声にまた、

鍵を掛けて閉ざしたはずの心を

少し開いて、

君がどれを取ってもいいように

はりきって並べます。

 

片想い特有の、

相手に気に入ってもらえるように

ちょっとワクワクしながら

気持ちを整える様子が

微笑ましいです。

 

「かっこよく鳴りひびいた口笛

振り向くところで目が覚めた」

 

君に届けたい気持ちを

口笛に乗せてかっこよく鳴り響かせて、

ようやく

疾風のようにすぐに去ってしまう君が

こちらに振り向いてくれた…

というところで目が覚めてしまいます。

 

全て夢だったというオチを

幸せ高まったところに持ってくるのが

より切ないです。

 

「ただ微笑むキューピッドの

ことばっかり考えて

飛び込めたらなぁ」

 

気持ちをかっこいい音で届けて

君が振り向いてくれる、

それは夢だったけれど、

いつか振り向いて微笑んでくれる

キューピッドのような君に、

勢いよく飛び込んでいけたらなぁと

また考える日々が続いていきます。

 

「晴れそうで曇り毎日小雨

もう二度と壊せない気がしてた」

 

「晴れそうで曇り毎日小雨」の

響きの良さと

叶わない片想いの心情が表現されている

このフレーズが何か好きです。

 

ただ「会いたい」という気持ちが

溢れて壊れてしまい、

鍵をしっかり掛けた心が

壊れるなんて思っていなかったのに、

気まぐれにやって来た君によって

崩れていったという

苦しい恋心を、

どんよりしていて

少し湿っぽいような、

小雨がパラパラ降る曇り空の下で

煩っています。

 

「でも会いたい気持ちだけが

膨らんで割れそうさ間違ってもいいよ」

 

「気まぐれ君はキュートなハヤテ」

 

そんな切ない恋心を募らせている

自分をよそに、

今日も君はキュートに

一瞬通りすぎる風のように

気まぐれにやってきては、

心を揺さぶっていくのです。

 

 

言葉の響きひとつひとつに

感情があるような、

君を想って胸がキュンとなりながらも

会えない寂しさや切なさを

こんなにも表現してくるか、と思うと

それでまた泣けます。

片想いの時期に聞いたら

たぶん皆泣くし共感する。はず。

 

片想いの時期の、

胸が常にちょっと苦しいような気持ちを

思い出すはず。

 

みずみずしい爽やかな空気感と

片想いの切なさが見事にマッチしています。

 

 

6.ナナへの気持ち

 

定期的にある人名ダイレクトタイトル。

 

曲の始まりの

「笑いすぎ?ふふふ」

という女性の声や、

感想に早送りでなんか言ってる声が

登場しますが、

これがナナのイメージなのでしょうか。

 

実はこの声、

FM福岡でDJをしていた方の声なんです。

そしてこの方は

後にスピッツのベース、田村明浩さんの

奥さんになる方です。

 

今のところ、

プライベートの情報をオープンにしてるの

田村さんだけですが、

なんと共演作まであるんですね。

 

たまたまなのか

意図したものかは

定かではないですが、

そんなとっておきの裏話もある

この曲も聞いていきます。

 

 

「誰からも好かれて片方じゃ避けられて

前触れなく叫んで

ヘンなとこでもらい泣き

たまに少しクールで

元気ないときゃ眠いだけ

大事なこと忘れていった」

 

自分が見ているナナという女性像を

歌っています。

 

誰からも好かれるような、

明るい女の子のようですが、

一方で一部からは避けられる存在。

 

今でいう陽キャなタイプですね。

確かに友達は多いですが、

人付き合いが苦手な

私みたいな隠キャからは

避けられるタイプかもしれません。

 

前触れなく叫んで

ヘンなとこでもらい泣きするくらい、

感情が豊かで元気な様子。

たまに元気ないな~と思ったら

ただ眠いだけ。

 

そんな、

元気で明るく自由なナナを見て、

自分は何か大事な事を忘れていく感覚を

覚えます。

 

「ガラス玉のピアスキラキラ光らせて

お茶濁す言葉で周りを困らせて

日にやけた強い腕 根元だけ黒い髪

幸せの形を変えた」

 

モチーフの大きい、ガラス玉の

ピアスを常に光らせていて、

'96年当時だったら

ギャルの象徴だった日焼けをした腕に、

染めて根元だけが地毛で黒いという髪。

 

周りを気にせず自由気ままな発言で

時々周りを困らせるような、

陽キャでギャルなナナは、

スピッツの描く男性像

…片想いで悶々とする消極的な男子

とは普通だったら合わなそうですが、

このナナが

自分の幸せの形を変えていくのです。

 

「だからナナ 君だけが

ナナここにいる

ナナ夢がある野望もある

たぶんずっと」

 

周りを気にせず自由気ままな彼女は、

変わらずここにいてくれる。

そのズレてるような安定感に

恋をして、

ナナに届けたい夢や野望を持ちながら

たぶんずっと、

自分も同じ場所にいるのです。

 

「街路沿いのロイホ

夜明けまで話し込み

何も出来ずホームで見送られる時の

憎たらしい笑顔

よくわからぬ手ぶり

君と生きていくことを決めた」

 

ロイホ、は

福岡を拠点としたレストラン、

ロイヤルホストの事です。

ロイホ行ったらとりあえず

この曲聴きます。

もはやロイホのテーマソング←

 

今は深夜の営業はしてないみたいですが、

当時は深夜まで営業していたので、

そこへナナと行き、夜明けまで彼女を口説くように話し込みます。

 

が、結局何も出来ず、別れの時間がやってきます。

 

電車に乗って帰ろうとする自分を

ホームから見送る時に

ナナが見せた

おちゃらけたよく分からない手振りと、

こちらの気持ちなんか

分かってなさそうな憎たらしい笑顔で、

自分の恋心に確信を持ち、

あぁ、この人と生きていくんだ

と感じます。

 

一見すると

タイプが違って合わなそうなのに

なぜか運命を感じてしまい、

けれど相手は気づいていない、という

ありふれている切ない恋心が、

想像つきやすい彼女像と場所を出す事で

よりリアルに感じられます。

 

間奏の早送りの言葉は

草野さんと女性の会話なのですが、

よくよく聞いてみると、

何かの映画の話をしているようです。

じっくり聞いてみたら割と何言ってるかは

分かりますよ。。

(あえてネタバレしないスタイル)

 

 

7.虹を越えて

 

ギターの、

メロディラインのイントロは、

暗い雨の夜が明けて

晴れ渡った朝に照らされる虹のような

そんなワクワク感や晴れていく様子を

感じられます。

 

「モノクロすすけた工場で

こっそり強く抱き合って

最後の雨がやむ頃に

本気で君を連れ出した」

 

モノクロすすけた工場、という舞台が

隠れている、秘密さを感じさせます。

 

そこでこっそり強く抱き合う二人。

秘密の恋をしている二人は、

この雨がやむ頃に

本気の気持ちで君を連れ出し、

駆け落ちする決心をします。

 

「虹の向こうへ 風に砕けて

色になっていく 虹を越えて

虹を…」

 

ここでの虹とは

幸せの象徴的な解釈です。

 

そこに向かって二人はこっそり

本気で駆け落ちして、

その幸せの向こう、越えた先では

二人の世界は

色がついた華やかなものになっている、

という

幸せな想像をしていると感じました。

 

冒頭の、

二人がこっそり愛し合っていた場所が

モノクロで、

二人で駆け落ちした先には

鮮やかな色がつく、

という世界の対比も

状況とリンクしています。

 

 

「漫画のあいつと遊ぶ日も

蚕の繭で寝る夜も

遠い目の子供のように

みんなあらすじ書き換えた」

 

漫画のあいつ、は想像上のもので

つまり二人が駆け落ちするまでに

想像していた日々を

表現しているものだと解釈しました。

 

そしてそんな妄想を抱えながら、

蚕の繭に引きこもり

眠る日々もあったと

あります。

 

そんな日々や妄想も、

遠い目の子供のように

ぼんやりと、でも純粋な思いで、

それまで思い描いていた

未来のあらすじを、

駆け落ちする事で

全て書き換えて

新しい幸せを掴もうとしています。

 

「虹の向こうへ ツメの先から

解き放っていく 虹を越えて

虹を…」

 

ツメの先、

自分の全身隅々から解き放たれる

幸福感や愛情で、

設定された幸せを飛び越えていきそうな

そんな気持ちになっていると

感じられます。

 

「すぐ届きそうな熱よりも

わずかな自由で飛ぶよ 虹を越えて」

 

すぐ届きそうな

簡単な言葉でこの熱を伝えるよりも、

隠れた恋から解放されて

少し自由になった今、

二人でどこにだって行けると思う事で

目に見える幸せを飛び越えたい、という

苦しみから解放されて

幸せになった様子が

窺えます。

 

「何もかも風に砕けて

色になっていく 虹を越えて」

 

これまでの不自由な恋は

一旦全部風に砕けて

新しい世界で二人きりになれたら、

二人の世界は鮮やかに色づき

目に見える幸せだって越えられるという、

これまた

周りは幸せになってないかもだけど

とにかく自分達だけは最高に幸せ、

という曲でした。

 

暗く冷たい雨の夜を越えた先は

青く澄み渡った空に

綺麗な虹がかかる、という

心情とリンクした空の変化も

音から感じられます。

 

 

8.バニーガール

 

13枚目のシングル、「チェリー」の

カップリング(B面)曲。

 

個人的に、

シングルとしては

この組み合わせが最強だと思ってます。

異論は認める。

 

「ハチミツ」でヒットし、

初めての全国ツアーで

忙しくなった最中に生み出された

「チェリー」は

なかなかに難産だったようですが、

一方でカップリングであるこの曲は

割とあっさり

できてしまったようです。

 

その勢いの良さも反映されてる

この曲も

さっそく聞いていきましょう。

 

アップテンポなバンドサウンドの中にも

美しくもちょっと冷たさも感じるような

キダーのメロディがたまらないです。

 

サビ前にソロになるベース、ドラム含め、

ボーカルの澄み切った伸びやかな声と

バンドの音それぞれが魅力的で

何気にバンドとしての力も

存分に発揮されてます。

 

歌詞は、

ノリに乗ってるな~と感じるくらい

アイドルみあるんですが、

全体像としてはやっぱり

どこか冴えない感じで、

そこはやっぱりスピッツだなぁと

感じます。

 

「寒そうなバニーガール風が吹いた

意地悪されて震えていた」

 

バニーガール は

あまり親しい間柄では

しないような格好なので、

ここから、

このバニーガールは

憧れているけど手に届かない存在であると

解釈できます。

 

そんなバニーガールに風が吹いた。

風とは、後の意地悪と繋がって

いろんな人から嫌らしい目で見られたり

体を触られたりして、

仕事で着ているから断れなくて

我慢して震えている、という様子を

想像しました。

 

バニーガールという

手の届かない存在の

弱い部分を見て、

恋に落ちてしまったという

場面です。

 

「恋は恋は何故かわがままに

光のシャワーを闇に向けた」

 

恋とはそんな

些細な事から始まるもの。

 

だけどその恋は、

光のシャワーとなり、

これまで自分がいた闇を照らしていきます。

 

「俺もまたここで続けられそうさ

そんな気がした曇りの日」

 

憧れの人に手が届きそうにないし、

普段の日々は闇の中だし、

生き甲斐なんてなかったけれど、

弱いバニーガールに恋をした事で

彼女のために生きることを

続けていけそうだ、と

曇り空の下に思います。

 

晴れ渡った日よりも

曇りの日なのは、

確信はないような、

ただなんとなくそんな気がしたという

曖昧な考えな事を

表現していると感じられます。

 

サビ前のソロはベースです。

 

「only youの合図で回り始める

君と落ちてく

ゴミ袋で受け止めて」

 

「only you」の一言で

女性は落ちます。

 

ただ君だけ。

君一人の存在によって

自分の世界は回り始めて

恋という名の深い深い底へと

落ちていきます。

 

恋によって

ボロボロのゴミのような存在に

なってしまう自分を、

ゴミ袋で受け止めてほしいと

自虐を込めて君に願います。

 

スピッツで描かれる恋は、

恋をした自分は愚かで

ダメな存在になる、というものが

多いように感じます。

 

「夢見たあとで夢に溶けた

灯りを消して一人泣いた」

 

君を想う夜、夢を見るように

妄想を繰り広げ、

その夢に溶けていきます。

 

ところがそれは

妄想でしかなくて、

残るのは寂しさだけ。

 

夜の暗さや静けさも相まって

悲しさや虚しさが

一人の自分を襲います。

その空気に、部屋の灯りを消して

一人涙します。

 

「「いいなぁいいなぁ」と人をうらやんで

青いカプセルを噛み砕いた」

 

自分にも、他人のように

積極的にアピールできる力や

勇気があったなら。

 

そう人を羨んでは、

自分は青臭さが残る

悶々とした気持ちを抱えたまま一人、

憎い自分の性格を

カプセルに閉じ込めて

噛み砕いています。

 

青いカプセルというのが

なんか中二病感あって

冴えない感じがよく表現されているなと

思います。

 

「名も知らぬ君に気に入られようと

底の無い谷を飛び越え」

 

憧れで、手に届かない存在の

バニーガールの君とは

お互いの名前すら知らない関係では

あるけれど

やっぱり気に入ってもらいたくて

意識してもらいたくて、

そのためには

底の無い谷を飛び越える勢いで

何でもできる、と強がります。

 

サビ前のソロはドラムです。

 

「only you世界中が口を歪める

君に消される

砂嵐にさらわれて」

 

君ただ一人の存在に恋をして

正常な意識を持った自分は

消されていき、

世界中が口を歪めるような

違和感へと変わっていきます。

 

衝動的な恋心が

加速していく様子が、

風に舞う砂嵐にさらわれるという描写で

表現されているように感じられます。

 

間奏でも、ギターのメロディから

ドラムのリズム、重く響くベースと

楽器それぞれの技術が

魅力的に発揮されているので

注目です。

 

「俺もまたここで続けられそうさ

そんな気がした曇りの日」

 

最後のサビ前は、全ての音が止まります。

 

「only you世界中が口を歪める

君に消される

only youの合図で回り始める君と落ちてく

ゴミ袋で受け止めて」

 

全ての音が止まって、

すっと一呼吸の後の

「only you」の一言が

グサッと刺さります。

 

ライブではここで

草野さんが指差してくるところが

究極の盛り上がりポイントです。

あざとくて好き。これは落ちる。

 

演奏ではそれぞれの技術が光り、

メロディや決めの「only you」では

アイドルっぽい魅力があるのに、

全体を見ると

やっぱりどこか冴えなくて

恋する君を想って悶々とする

消極的な男を描いている、という

スピッツというバンドの曲としては

これ以上ないのではと思うほど

スピッツを表現していると感じられました。

 

 

9.ほうき星

 

この曲は、

ベースの田村明浩さんが

作曲したものになります。

 

それを象徴するかのような、

低くて重いベースの響きから

イントロが始まります。

 

そしてその音やリズムからも

暗くて無重力な宇宙というものを

想像できるように、

歌詞をつけたら

宇宙をイメージするものに

なったようです。

 

「錆びついた扉がはじめて開くよ

僕らはほうき星 汚れた秋空」

 

錆びついてしまいこんでいた重い扉を

初めて開く頃、

僕らはほうき星、流星となって

澄んではいない秋空に浮かびます。

 

「ゆらゆらさまよう魂を巻き込む

祈りを受けとめて 流れに逆らって」

 

成仏しきれてなく

ゆらゆらとさまよう魂たちも巻き込んで、

僕らは星になったとあります。

 

なんとなく察してはいましたが、

星になる=死 の

世界のようです。

 

魂たちには

生きている世界からの祈りなどは

届かないけれど、

その流れに逆らうように、

祈りを受け止めます。

 

「今 彗星 はかない闇の心に

そっと火をつける

弾丸桃缶みんな抱えて

宙を駆け下りる」

 

韻を踏んでいて言葉選びが楽しいです。

 

澄んではいない秋の夜空に

浮かんだ僕らは

ほうき星という彗星になり、

消えかけそうな儚くて闇を抱えた心に

そっと、あかりを灯すように火をつけます。

 

これは、死の世界にいる僕らからの

生の世界に残された人々、

悲しみに暮れていたり

闇を抱えている人々に対しての、

祈り返しみたいなものだと解釈しました。

 

弾丸のような衝動さと

桃缶のような甘さをみんな抱えて、

祈りを込めて

この広い宙を駆け下りていくのです。

 

「つながって遊べばどこかで切れそうだ

静かに近づいて涙を乾かした」

 

祈りが届いて嬉しくなっても、

どこかではこの繋がりが

切れてしまうかもしれない。

それでも、

そっと静かに近づいて、

生きている人の涙を乾かしていきます。

 

死の世界からの見た生前の世界が

悲しみに溢れていて、

それを少しでも和らげようと

祈ったりそっと見守るような描写が

切ないです。

 

「今 彗星 はかない闇の心にそっと火をつける

哀愁 街中 すぐにはがれて何度甦る」

 

哀愁のある街中に見えても、

僕らの祈りが届いて

悲しみを徐々に忘れていく。

すぐに悲しみは剥がれていき、

何度だって甦るのです。

 

心の闇もいつかは晴れるよ、

僕がいなくても

また明るい街は戻ってくるんだ

という

励ましと安心を与えているように

感じられました。

 

Aメロ(サビ前)では

声の音が上下するように続いて

ゆらゆら浮かんでいるように感じられ、

サビでは宙を駆ける彗星のような

勢いと

励ますような力強さが感じられます。

 

田村さん作曲の音と、

草野さん作詞の音とリンクした詞が

見事に合っているようです。

 

 

9.マフラーマン

 

よくあるヒーロー像を

想像して聞いてみますが、

そのヒーローが闘う理由が

好きな人に対する愛のため

だったとしたら。。みたいな

パラレルワールド的に

聞けるのではないのかな、と思います。

 

ヒーローが颯爽と登場するように

そのメロディにも

颯爽とした勢いを感じられます。

 

「赤いマフラーが風を受けて

燃えるほどにスピード上げてく」

 

ヒーローの象徴である赤いマフラーが

風を受けてなびくほどに

心が燃えて、

スピードを上げていきます。

 

仮面ライダー的なイメージです。

 

「肌をさすような光浴びて

ずっと僕は走り続ける」

 

注目されるように

肌を刺すような強い光を浴びて、

戦いの場へと走り続けます。

 

「マフラーマン いつも君を探す

ハイパーな愛に賭ける」

 

戦い続けるのは、君を探すため。

 

愛の力に賭けて、

君の心がこちらに向いてくれるように

なるため、

悪と戦い、正当なヒーローとして

ただ君に讃えられたいという思いで

走り続けているのです。

 

「泣き疲れていやな思い出も

みんなまとめてすり潰してく」

 

君を想って戦うけれど、

君のいない心に

一人、泣き疲れて

けれど君を想う事で

嫌な思い出も涙とともに

まとめて磨り潰していく、

そんな日々を過ごしています。

 

「軽い判断で放つブラスターが

健全な悪を吹き飛ばしてく」

 

君を守るため、

君に注目してもらうためだったら、

軽率に必殺技を使ってでも

悪を倒していきます。

 

正統派のヒーローとしては

軽率に必殺技使うのはどうかと思いますが…

 

それほど、

戦うのは悪を倒すためではなく

ただ君の心を振り向かせるためだけという

ある意味自己満な理由ではあるものの、

とにかく君に見てもらいたいという

強い想いがあるようです。

 

「マフラーマン エスパーが君を襲う

スポンサーの後悔を超えて」

 

ところが、

こんなに君を想って戦ってきた

マフラーマンこと自分の前に

敵であるエスパーが現れ、

君を襲っていきます。

 

最後の最後にヒロインを囮に取られ

絶体絶命のピンチ!みたいな

ハラハラ感があります。

 

スポンサーは

ヒーロー番組を作っている

スポンサーという

リアルなイメージですが。

 

本来求めていた答えとは

違う方法でエスパーを倒して

君の心を無理矢理にでも

自分に向かせる展開に、

自分を起用したスポンサーの後悔が

見えるけれど、

それすらも超えてしまうような幸せが

ただ一人、

自分だけには訪れています。

 

自分だけが

ハッピーエンド的な展開は

スピッツあるあるです。

 

「流された毒さえも甘い味がする

安上がりな幸でも今なら死ねる」

 

エスパーを

スポンサーが後悔するほどの方法で倒し、

君を手に入れる事が出来た

マフラーマンは

幸せの絶頂にいて、

こんな簡単に手に入れられるような

安上がりの幸せでも、

エスパーを倒した際に流れた毒さえも

甘く感じるほど、

とにかく幸せで、

今なら死ねるとさえ感じてしまいます。

 

気持ちは分かります←

 

「マフラーマン太陽もいつか消える

グルーヴィーにエンジンをふかす」

 

だけどその幸せもいつかは消えてしまう。

 

安上がりな愛ほど、

簡単に手に入れられるけれど

失うのも早いものです。

 

「マフラーマンいつも君を探す

ハイパーな愛に賭ける」

 

だからこの幸せが永遠に続くように、

君の心が完全にこちらに向くまで、

今日もマフラーマンとして

愛の力を糧に走り続けていきます。

 

ヒーロー像としては

カッコいい存在のはずなのに

やっぱり、好きな人に

なかなか振り向いてもらえないような

冴えない感じが残っています。

 

 

10.夕陽が笑う、君も笑う

 

珍しく文章的な

少し長めのタイトルです。

「夕陽が笑う」だけでも

惹かれそうなタイトルですが、

「君も笑う」も必要なんだろうなと

思います。

 

その歌詞を見ていきます。

 

「ここにいる抱き合いたいここにいる

やたら無邪気な演技で泣けちゃうくらい」

 

好きな人が今まさに

泣けるほどやたら無邪気な演技で

目の前にいます。

 

今すぐに抱き合いたいという

衝動に駆られるほどに

愛しい存在のようです。

 

「求める胸が痛い求める

君はいつも疲れて不機嫌なのに」

 

君をいつも求めてる自分と、

いつも疲れてて不機嫌で

その要求に応えてくれない君。

そんな日々に胸を痛めています。

 

男性側はいつも欲求不満だけど、

女性は何かと疲れると

乗り気にはならないみたいな、

男女間の差が

妙にリアルに表現されています。

 

「夕陽が笑う君も笑うから明日を見る」

 

ところが今日は「夕陽が笑う」。

そして「君も笑う」。

 

今日はどうやらご機嫌で、

ようやく乗り気になってくれたようです。

やっと繋がれるという喜びを

表現するように

夕陽が微笑むように優しく包み、

それに照らされた君も

優しい笑みを

僕に見せてくれています。

 

「甘いしずく 舌で受け止めて

つないでいこう」

 

君と繋がって垂れた雫(意味深)も

甘く感じて、

それを全て舌で受け止めていきます。

 

ようやく繋がれたこの幸せが

ずっと続くように、

心も繋いでいこうと誓うのです。

 

「怖がる愛されたい怖がる

ヘアピンカーブじゃいつも傷ついてばかり」

 

常に愛されたいという欲求を抱えて、

愛が足りなくなってく日々を怖れています。

 

君の愛が足りなくて、

君のヘアピンを持ってみても、

いつも傷ついてばかり。

 

「さまよう何もないさまよう

中途半端な過去も大切だけど」

 

どうにか君に振り向いてもらおうと

さまよってみても

結局何もなかった。

 

中途半端になってしまった

過去の恋を思い出すけれど、

それよりも今は

とにかく君だけを意識して

誘う事を

続けていきます。

 

「夕陽が笑う君も笑うから明日を見る」

 

「勝手に決めたリズムに合わせて

歩いていこう」

 

そしてようやく念願叶って君と繋がれた日。

 

幸せに満ちて、

明日も輝いているように見えて、

この先も何年も

二人だけのリズムで

共に歩いていこうと誓い合います。

実質的なプロポーズのような。

 

 

ここまでボカして解釈してきましたが、

ざっくり言うと

彼女がノリ気にならなくて

レス(性行為の)だったカップルが

久々に出来て幸せに満ちてる、

みたいなイメージです。

 

11.チェリー

https://youtu.be/Eze6-eHmtJg

 

スピッツ三大ヒット曲の1曲。

 

未だにカラオケ等で

定番ソングとして人気で、

空も飛べるはず」同様、

幅広い世代に

今なお愛されている名曲です。

 

実は、リリース時から現在まで

ドラマや映画、バラエティやCMなどの

タイアップには

一度もついた事がありません。

 

それなのに

発売されて160万枚以上の大ヒット、

そして現在でも愛される曲としてあるのは、

以前から続くスピッツバブル

スピッツが爆発的に売れていた時期)

が関係してくると考えられます。

 

とにかく何を出しても

話題になって売れるという状態で、

耳にしたら記憶に残るような

キャッチーさあるメロディと、

相変わらず美しくて可愛さもある

歌声の曲があったら

そりゃ売れるだろと、と思います。

 

が、

本人たちは「ロビンソン」同様、

地味な曲だから売れないだろうと

思っていたというのが、

不思議なようで

ひねくれてるなと感じますが。

 

とにかく売れまくって大忙しな状態で

撮影された、有名すぎるこのMVは

あまりにも時間が取れなくて

一発撮りで済ましたりしてますが、

そんな忙しさの中で

浮かれずに地に足をつけて

前を向いている様子も見える

曲です。

 

「君を忘れない

曲がりくねった道を行く

産まれたての太陽と

夢を渡る黄色い砂」

 

陣内智則にいじられてる部分。

(カラオケのネタで)

 

一言目で「君を忘れない」とある事から

既にその君はこの場にはいない、

思い出の人であることが分かります。

 

君との思い出を胸に、

これからも続く

長い人生をしっかり歩いていってる

様子です。

 

人生は曲がりくねった道の連続で

そんな自分を照らすのは

産まれたてで眩しい太陽と

足に纏いつつも

風に舞ったらなぜか綺麗に見えてしまう

黄色い砂。

 

君がいない世界で続く人生が

寂しくないように、

また新しい人生を始める自分を

励ますように

続く長い道のりを

彩っているようにも感じられます。

 

「二度と戻れない

くすぐり合って転げた日

きっと想像した以上に騒がしい未来が

僕を待ってる」

 

君とふざけあって、

くすぐりあって転げて

笑いあっていたような

楽しい思い出は

もう二度とやってこないけど、

それでもきっと

彩られたこの長い道のりを行けば、

想像した以上に騒がしい未来が

待っているはず、

という期待を持って、

君を忘れずにまた一人

人生を歩んでいきます。

 

「「愛してる」の響きだけで

強くなれる気がしたよ」

 

超有名なフレーズ。

 

なんか陽キャカップルが

カラオケで歌いあって

キャッキャするのに

使われがち(ド偏見)ですが、

スピッツは基本的に

こっち(陰キャ)寄りだと

信じてます。

 

現に、

「気がした」だけで

実際には強くなったという

確信は持ってません。

 

君のいない世界で一人歩いていく自分に、

君が残してくれた「愛してる」という言葉の響きを思い出す事で

少しだけ前を向いていけると

思っています。

 

まぁ、実際に言われてなくても

それが糧になって

前向きになってるという点では

陽キャに使われても

違和感はないんですがね…

 

「ささやかな喜びを

つぶれるほど抱きしめて」

 

君といたこれまでで積み重ねた

些細な事で喜んで幸せだった時間を

つぶれるほどに強く抱き締めて、

その幸せを忘れないように持ちながら

一人、新たな人生を歩んでいく様子が

窺えます。

 

「こぼれそうな思い

汚れた手で書き上げた

あの手紙はすぐにでも

捨てて欲しいと言ったのに」

 

君といた時間を少しだけ思い出して、

君という人は、

好きな気持ちが溢れて

こぼれそうになった僕が

汚れた手で拙く書いた

不恰好なラブレターも

すぐに捨てて欲しいと言っても

大事に取って置いてくれるような

素敵な人だったようです。

 

手紙を送った自分としては、

少し照れ臭い感じもします。

そのもどかしさも含め、

純粋に幸せだった事が窺えます。

 

「少しだけ眠い

冷たい水でこじあけて

今せかされるように飛ばされるように

通り過ぎてく」

 

そんな幸せだった日々を夢に見て、

目覚めた頃には夢が醒めて

一人の朝がやってきます。

 

まだ少しだけ夢にいたいという

気持ちからか、

眠気が残る自分に、

渇を入れるように冷たい水で顔を洗い、

眠い目をこじ開けて、

また今日も

一人の人生を歩んでいこうと誓いながら

一日を始めていきます。

 

「「愛してる」の響きだけで

強くなれる気がしたよ

いつかまたこの場所で

君とめぐり会いたい」

 

長い一人の人生が終わり、

生まれ変わっても

また同じところで出会いたいと願うほど、

運命でありたい、

自分にとっては

もう君は運命の人であったと

確信するほど、

君に救われながら

人生を歩んでいると

解釈しています。

 

「どんなに歩いてもたどりつけない

心の雪でぬれた頬」

 

この長い道のりを

どんなに歩いていっても、

君に降り続いている雪…悲しみなど で

濡れた頬には辿り着けなくて、

拭うことはできない。

 

「悪魔のふりして切り裂いた歌を

春の風に舞う花びらに変えて」

 

けれど、これまで続いた嫌な歌を

悪魔のふりして切り裂いて、

切り裂いた悪を

春風に舞う花びらに

変えていきます。

 

君の心が少しでも晴れますように、と

自分を悪者にしてでも

前向きに綺麗に励ましている、

その健気さと、

春らしい華やかさが感じられます。

 

「君を忘れない

曲がりくねった道を行く

きっと想像した以上に騒がしい未来が

僕を待ってる」

 

「「愛してる」の響きだけで

強くなれる気がしたよ

ささやかな喜びを

つぶれるほど抱きしめて」

 

いなくなってしまっても、

「愛してる」のメッセージが

込められた日々を思い出して

一人でも前を向いて

生きていける気にさせてくる、

そんな偉大な君の事を

忘れないようにして、

またやってくる運命を待ちながらも、

案外やっていけると心持ち、

長い人生を歩いていきます。

 

「ズルしても真面目にも

生きていける気がしたよ

いつかまたこの場所で

君とめぐり会いたい」

 

ズルしても真面目にも、は

結果的にそう見られてしまうような、

自分的には情けない

みたいな感情の表現だと

解釈しました。

 

他人から見たら情けないような、

決して人に誇れるような生き方では

ないかもしれないけれど、

それでもなんとか生きていける気さえ

今はしているのです。

 

だけどまた、いつか生まれ変わったら、

また君とここで巡り会いたいと

春風に吹かれ、暖かな日差しの中、

新たな人生を歩んでいくという

決心のようなものを感じました。

 

「チェリー」というタイトルは、

「ロビンソン」同様、

そのタイトルや関連する言葉は

出てきませんが、

全体的に 春らしい暖かさを感じ、

さくらの雰囲気も感じられ、

チェリー=さくらんぼ=さくらの実

みたいな感じで考えたら、

春はやってきているけど

さくらの花が満開になるという

華やかなイメージよりも

実でキュッとなって、

ちょっと内向的なイメージになるのが

またスピッツらしいなと感じられます。

 

本人たちは

冗談か本気かは分かりませんが、

「僕たちチェリーボーイズって事で…笑」

と言ってますが(笑)。

 

《まとめ》

 

以上で

7thアルバム「インディゴ地平線」を

聞き終わりました。

 

これまではどこか夢見がちな

ファンタジックで不思議な世界が

続いていましたが、

今作では、

割とリアルに想像できるような、

まさに地平線をまっすぐ見て

地に足をつけて歩いているような

雰囲気になっていると

感じられました。

 

前作「ハチミツ」の

クオリティが高すぎて

逆にプレッシャーとなり、

今作はあまり納得のいかないものに

なったようですが。

 

それでもスピッツが本来描きたい、

性と死、それぞれの感情が

表現されつつも

爆発的に売れても浮かれずに

次へ進もうとする姿勢が表現されていて、

スピッツがめちゃくちゃ売れて忙しい

このタイミングで出たものとして

ベストな形だと

個人的には感じられます。

 

新しい曲を出すたびに、

そんなに売れたいとは

思っていなかったのに

話題になってまた売れてしまう、

そんな状況に皆が疲れきってしまい

スピッツの方向性もますます

混乱していきます。

 

このアルバムも、

スピッツが好きな方も

あまり知らない方も

楽しめるとは思います。

 

ハチミツよりは甘すぎず、

ちょうどいい感じに

心のスキマを埋めてくれるような

アルバムです。

 

なんとなく、秋の澄んだ空気に

馴染む気がする。

 

以上、

桃亀改めandでした。