スピッツアルバム研究9「フェイクファー」

こんにちは。

桃亀改めandです。

 

スピッツのアルバムを聞いて

感想や個人的な解釈をつらつら書いてく

シリーズやってます。

 

前回「インディゴ地平線」を聞いて

書いたものはこちらから。

https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2019/09/28/163003

 

今回は、8thアルバム

「フェイクファー」

聞いていきたいと思います。

 

「Crispy!」から

インディゴ地平線」まで、

約4年間、スピッツのプロデューサーを

担当していた笹路正徳さんから

離れる決断をし、

今作はほぼセルフプロデュースで

制作されました。

 

今作の

プロデューサーというよりも、

アレンジを担当したのは、

ロックバンド、カーネーション

棚谷祐一さん。

 

これまでのプロデュース(笹路さん)は

スピッツを引っ張るリーダー的な

やり方でしたが、

今作(棚谷さん)は、

メンバーと一緒に作っていく、

メンバーの意思を尊重するという

やり方で、

これまでと制作方法が異なり、

困惑したようです。

 

特に作詞作曲を担当する草野さんは、

笹路さんを頼っていた部分もあり、

楽曲づくりが

かなり難航したと言います。

 

そんな迷いの中で制作された

アルバムですが、

ジャケットは理想のものを作ろうと、

初めてジャケットに登場する女性を

メンバーによる面接で決定する

などしました。

 

その結果、

現在でもファンの間で

1、2を争うほどに

人気のアルバムジャケットとなりました。

 

その美しさや儚さは

もはや芸術品のようです。

 

そんなアルバムジャケットにも注目して

さっそく聞いていきます。

 

 

フェイクファー

1998年3月25日 release


f:id:peachdraw18:20191005075319j:image

 

収録曲

 

  1. エトランゼ
  2. センチメンタル
  3. 冷たい頬
  4. 運命の人
  5. 仲良し
  6. スーパーノヴァ
  7. ただ春を待つ
  8. 謝々!
  9. ウィリー
  10. スカーレット
  11. フェイクファー

 

 

1.エトランゼ

 

アルバムのオープニング曲として、

次曲への導入の役割を果たす曲。

 

静かに流れるようなメロディと

ほぼアカペラのような歌声が響くのが

特徴的です。

 

歌詞は、スピッツの楽曲の中で

(歌詞があるものとしては)

最短と言われています。

 

短い中にも

色んな事が想像できるような

言葉選びをしているところに、

スピッツ、草野さんの文才さを

感じます。

 

歌詞を見ていきます。

 

「目を閉じてすぐ浮かび上がる人

ウミガメの頃すれ違っただけの

慣れない街を泳ぐもう一度

闇も白い夜

 

以上です。最短なので。

 

「エトランゼ」とは

見知らぬ人 という意味。

 

歌詞を見てみると、

その見知らぬ人に視点を向けている

という情景が浮かんできます。

 

なんとなく、

アルバムジャケットのような

乳白色の世界をイメージし、

曖昧な思い出に浸っているような

気分にもなります。

 

昔一度すれ違っただけなのに

目を閉じたらすぐに浮かんでくる人。

 

もしかしたらその人は

自分にとって大切な人なのかもしれない。

 

ウミガメの頃

…深い事は考えていなくて

ただ広い海、

つまり自分が生きている世界を

漂っていた頃に

すれ違った人の事を思い出して、

それまでの世界の闇が

白くなっていくような

気がしているのです。

 

まさにこれから

新しい世界が静かに始まっていくような

微かな希望のようなものが

見えてくるように感じられます。

 

ちなみに、草野さんはどこかで

好きな動物はカメだと

言っていた気がします。

私もカメ飼ってて好きなので

なんだか嬉しいです。

カメはいいぞ。

 

 

2.センチメンタル

 

1曲目とは打って変わって

ロックチューンな曲調です。

 

ギターのイントロが鳴り響き、

重めのドラムが合わさる

まさにロック!を感じられます。

 

ロックチューンに乗せる詞は、

スピッツらしいといえばスピッツらしい、

繊細な恋心という感じです。

詞と音のギャップすら

何だか切なくなるような

曲になっています。

 

そんな詞を見ていきます。

 

「切ない気持ち 抱えて笑い出したのは

おとぎの国も桃色に染まる頃

震えていたよ まだセンチメンタルデイ

裸の夢が目覚めを邪魔する 今日もまた」

 

おとぎの国、は

よく言えば夢のある世界ではあるけれど、

ひねくれた考えをすると

結末が決まっている世界でもある、

と解釈しました。

 

そんな世界が桃色に染まる。

つまり恋に落ちて

その世界が色づいていく様子が窺えます。

 

だけど恋する世界で自分は

切ない気持ちを抱えて笑い出したり

震えたり、

どこか不安な気持ちを抱え

センチメンタルな日々を過ごしています。

 

そんな不安を考えないように

無理矢理眠ってみるけれど

夢でもやっぱり考えて、

妙にリアルな裸の夢

…現実みのある夢 を見てしまい、

目覚めの悪い朝を

今日もまた迎えている、という

情景になります。

 

恋する事による

幸せな感情と不安な感情が

入り乱れいる複雑な心情を

表現する音が

ギターの響きなのがまた

良い気がします。

 

「認めてくれた オドされて真に受けず

暗い地べたを眩しく月が照らす

君を知りたい そんなセンチメンタルデイ

忘れたふりの全てを捧げる春の華」

 

自分が恋をしている相手、君は

暗い地べたを這っているかのような

情けない自分を認めてくれて、

眩しい月のように

自分の世界に光を与えてくれた人。

 

そんな君の事を知りたいと願いつつ

自分にはまだ勇気がないと葛藤する

センチメンタルな日々が続きます。

 

幸せな気持ちも不安な気持ちも

一旦全て忘れたふりして

自分自身の全て、

華やかな春、恋心を

君に捧げたいと願っています。

 

願っているだけでまだ叶わない、

そんな切ない気持ちに

自分でも可笑しいなと笑い出してしまう、

恋は自分にとって

光を与えてくれるけど

それによっておかしくなってしまう

という妙な心情を

センチメンタルという一言で

まとめていると解釈しました。

 

 

3.冷たい頬

https://youtu.be/QzJ_QUc-ygk

 

18thシングル。

 

共々シングル発売の予定は

なかったけれど、

たぶんタイアップか何か

付いたのかな?で

アルバム発売の一週間前に

このアルバムの収録曲「謝々!」と

両A面シングルとして

リリースされました。

 

そんな急遽、という形なので

このシングルのジャケットと

アルバムのジャケットで

同じモデルさんを採用し、

連動したデザインになっていたりします。

 

イントロから印象的なアルペジオ

ギターフレーズが

切なく寂しいようで

繊細な優しさも感じます。

 

全体的に、

冷たい空気を持ちながらも

どこか優しさも感じられる音と

なっています。

 

詞もまた、寂しさや悲しさの中に

愛しさや優しさを感じられるものと

なっていると感じられます。

 

さっそく見ていきます。

 

「「あなたのことを深く愛せるかしら」

子供みたいな光で僕を染める

風に吹かれた君の冷たい頬に触れてみた

小さな午後

あきらめかけた楽しい架空の日々に

一度きりなら届きそうな気がしてた

誰も知らないとこへ流れるままに

じゃれていた猫のように

ふざけ過ぎて恋が幻でも構わないと

いつしか思っていた

壊れながら君を追いかけてく

近づいても遠くても知っていた

それが全てで何も無いこと

時のシャワーの中で」

 

歌い出しの、

恐らく彼女のセリフ

「あなたのことを深く愛せるかしら」が、

切ない響きながら

どこか色っぽくも感じます。

 

そんなセリフと共に向けられるのは

子供みたいな光。

純粋な気持ちを

表現しているものだと思われます。

 

そんな純粋な彼女の気持ちに

僕が染められていく、

夢中になっていく様子が窺えます。

 

風に吹かれた君の冷たい頬、は

秋冬の冷たい風に当たって

冷たくなった頬、というよりも、

亡くなって冷たくなった頬

というイメージを抱きました。

 

諦めかけた楽しい架空の日々、は

純粋に好き合う彼女と、

普通の恋愛をしたいと思っていたけれど、

おそらく

彼女は亡くなるレベルの

病気か何かがあって

普通にするはずの恋愛が

出来ないでいた日々を

過ごしていたのでしょう。

 

だから冒頭のセリフが出てきたとも

思われます。

愛してるけれど

それをうまく伝えられていないと

不安に思った彼女が、

生前にふと漏らした言葉だと

ここで読み取れます。

 

亡くなって冷たくなった

彼女の頬に触れた時に

その言葉を思い出している、という

なんとも切ない情景が浮かびます。

 

そんな叶わなかった日々に

一度きりなら

届きそうな気がしているのです。

 

それは、思い出した言葉によって

自分自身もまた

彼女を不安にさせていた事、

そして自分が彼女に愛されていた事を

感じたから。

 

架空の日々は

普通のカップルのように

じゃれてふざけて笑いあっているような

幸せな恋だったけれど、

それが幻だったとしても

二人が幸せなら構わないと

いつしか思うようになっていきます。

 

恋が幻でも構わないという気持ちで

幸せになっている

という心情は、

死にゆく彼女を受け入れられなくて

現実逃避している

ようにも感じられます。

 

そんな狂って壊れていきながらも、

幻想で幸せになっていく彼女を

追いかけていきます。

 

いくら追いかけても、

現実では亡くなってしまっていて、

そこに届くはずもない。

それは時間が経過して

だんだん気付いていく事実。

 

時間の経過を

時のシャワー、と表現しています。

 

 

「夢の粒もすぐに弾くような

逆上がりの世界を見ていた

壊れながら君を追いかけてく

近づいても遠くても知っていた

それが全てで何も無いこと

時のシャワーの中で」

 

幻想で幸せになっている、

そんな夢のような気持ちも

すぐに弾けて消えてしまうような

逆上がりの世界…現実を

夢からまだ醒めないで

ぼんやりと見ている状態です。

 

この夢も、

現実で時間が経過したら

消えてなくなってしまうと

分かっていながら、

今はまだ彼女の幻想を

追いかけていくのです。

 

「さよなら僕の可愛いシロクメクサと

手帖の隅で眠り続けるストーリー

風に吹かれた君の冷たい頬に触れてみた

小さな午後」

 

可愛いシロツメクサ、は

まさに彼女の事を表現していると

思われます。

 

シロツメクサといえば

葉はクローバーと呼ばれ、

白くて小さなふわふわした花を

咲かせる植物です。

 

つまり、小さくて儚いけれど

幸せを運んでくれる存在、という事が

読み取れます。

 

そんな君を、

君と幻想で過ごした恋の季節を、

時の経過で忘れないように

手帖の隅で眠らせておきます。

 

そして改めて、

亡くなって冷たくなった

彼女の頬に触れ、

現実を見ながらも

また今日も幻想の日々で

彼女と幸せに暮らそうと、

狂った幸せに浸ろうとするのです。

 

切ないながらにも幸せを感じて、

そして少しの恐怖も覚えるような心情を

冷たい空気の中にある

優しい陽の光のような暖かさもあるような

音で奏でています。

 

 

4.運命の人

https://youtu.be/AMWDAuPx26Q

 

17thシングル。

 

シングルバージョンは、

YouTubeにもあがっているMVや

シングル集でも聞ける、

音が高いバージョンですが、

キーが高すぎるという事で

アルバム用に半音下げて

撮り直されたバージョンが

アルバムには収録されています。

 

ライブで披露されるのは

だいたいアルバムバージョン。

最近は打ち込みを使用したりしていて

なかなかエモい雰囲気に

なっていますので、

是非ライブバージョンも

聞いてみてほしいです。

 

MVでは、メンバーは死体の役で

意味深な映像が続き、

なかなかゾッとしたりもするのですが、

(たぶん)生前の記憶みたいなところは

ただただメンバーがキャッキャしてて

可愛いので是非見てみてください。

(ヲタク目線)

 

さっそく曲を聞いていきます。

 

ポップなイントロと

続くメロディに

ワクワクするかと思いきや、

歌詞が終始不穏な感じがするのは

私だけでしょうか。

 

その、音と詞のギャップに

ゾッとするような、

不思議な感覚の中に感じる幸せを

体現したような曲になっています。

 

そんな詞をさっそく見ていきましょう。

 

「バスの揺れ方で人生の意味が解かった

日曜日

でもさ君は運命の人だから

強く手を握るよ

ここにいるのは優しいだけじゃなく

偉大な獣

愛はコンビニでも買えるけれど

もう少し探そうよ

変な下着に夢がはじけて

たたき合って笑うよ

余計なことはしすぎるほどいいよ

扉開けたら

走る遥かこの地球(ほし)の果てまで

悪あがきでも呼吸しながら

君を乗せて行く

アイニージュー

あえて無料(ただ)のユートピア

汚れた靴で通り過ぎるのさ

自力で見つけよう神様」

 

「バスの揺れ方で人生の意味が解かった

日曜日」

この歌い出しが、

分かりそうで分からない、

けれど何かを感じるという事で

ファンの間では

好きな歌詞として挙げられがち。

 

私は何となく、

自分の死を悟った瞬間

なのではないのかなと

感じました。

 

死の間際にようやく

自分の人生の意味を見出だす、気付いた

という状況が浮かびました。

 

それは、平日じゃなくて

少し気の抜けた日曜日であることも、

のんびりした中にふと

そういう事を感じてしまう、という

日常感が出ています。

 

そんな日に感じた人生の意味。

 

それは大したものではないかも

しれないけれど、

そんな人生の終わりも意識した時に

側にいる君は運命の人だと

強く思い、

その手を離さないように強く握ります。

 

スピッツの歌詞では、

性としての意識を持つ者=自分 は

獣だったり野生という言葉で

よく表現されます。

 

運命の人の手を強く握る時、

自分は、もしかしたら相手も、

優しい気持ちを抱きながらも

やっぱりしっかりとした獣である、と

感じているのです。

 

「愛はコンビニでも買えるけれど

もう少し探そうよ」も、

分かりそうで分からないと

人気の歌詞ですが、

獣の流れからすると、

コンビニなどでも買える

コンドームでも

愛ある性行為はできるけれど、

もう少し別の形で

愛を伝える行為は出来ないものか、と

考えているようにも感じられます。

 

愛を伝える事は性行為だけが

全てではないと

運命の人を前に思っているようです。

 

お互いの変な下着に

叩き合って笑うような関係に

夢が弾ける…幸せを感じているという

情景が浮かびます。

 

そういう、

愛を伝えるための性行為だけではなく、

一見すると余計なことのように

見える事でも、

あえてしすぎる方が

実は本当の愛が伝わるのでは、と考え、

実行しているようです。

 

そうした思いを抱いて、

自分の死を悟った時に

人生の意味が

実は大した事ではなかったとしても、

生きている今を君を乗せながら

全力で進み、

あえて楽に手に入るユートピア…楽園も

全力で進んで

汚れた靴で通り過ぎ、

運命の人、君と共に

自力で神様、新たな人生の意味を見出だそう

としていると感じられました。

 

 

「晴れて望み通り投げたボールが

向こう岸に届いた

いつももらいあくびした後で

涙目茜空

悲しい話は消えないけれど

もっと輝く明日!!

走る遥かこの地球(ほし)の果てまで

恥ずかしくてもまるでダメでも

かっこつけて行く

アイニージュー

いつかつまづいた時には

横にいるからふらつきながら

二人で見つけよう神様…

神様…このまま…君となら…」

 

些細な事に笑い合える

幸せな関係を感じつつも、

人生の意味を見出だしていく時、

同時に映る

死期のようなものを感じていました。

 

側にいる君は運命の人だから、

離れないように強く手を握っている。

つまり、

死ぬ時も一緒だと

言っているようなものでは

ないのでしょうか。

 

そんな想いが晴れて向こう岸に届いた。

ここでの向こう岸とは、

死を連想する三途の川の向こう、

生とは反対側のところ

というイメージになりました。

 

あくびで涙を誤魔化して

死という悲しい事実を消そうとするも

簡単には消えないけれど、

それでも運命の人がずっと隣にいる。

それだけでどんな事も

輝けると信じているようです。

 

恥ずかしいような事でも

運命の人の隣ではかっこつけて、

つまづいた時には

いつでも横にいるからと励ましながら、

共に死を迎えた二人で

新たな人生の意味である神様を

見つけようとします。

 

詞の世界観として、

全体的に死をイメージする

雰囲気ではありますが、

死を意識した時に

改めて生とも向き合う事ができる

という意味では、

すぐそこにある小さな幸せに

目を向けようとも思えるような

感じがします。

 

曲の終わりには

ドラムのリズムのみが残ります。

 

決して激しくはない

リズムのはずなのに、

その余韻がまたゾクッとさせます。

 

曲の雰囲気からMV、

さらには聴き終わりの余韻まで

どこか不穏な感情にさせられる

というのもまた

魅力的に感じられる曲です。

 

 

5.仲良し

 

個人的に切な可愛いスピ曲第1位。

タイトルから可愛い。

けど切ない。

 

暖かみと同時に

ちょっと残念そうな悲しさを

感じてしまう

アコースティックギターのイントロが

よりこの曲の世界観を

物語っているように

感じられます。

 

歌詞もまた、

悶えてしまうような

可愛らしい初恋のようで、

悩んでいる間に消えてしまうような

小さくて儚い気持ちが

ギュッと詰め込まれていて

めちゃくちゃ心がしんどいです

(尊さと切なさで)。

 

さっそく見ていきましょう。

 

「いつも仲良しでいいよね

って言われて

でもどこかブルーになってた

あれは恋だった

何度も口の中つぶやいてみた

かすかなイメージだけを

追い求めてた」

 

なんとなく、設定として

幼い頃の初恋の様子をイメージしました。

 

幼い頃から男女とか関係なく

仲良しでいたけれど、

自分は次第に違う意識を

持つようになっていた。

 

けれどそれは

相手には伝わっていなくて、

周りからも

「いつも仲良しでいいよね」とか

言われて、

嬉しいはずなのに

どこかブルーになっている。

その時にこの気持ちは恋である、と

意識するのです。

 

恋を意識して、

「仲良し」だけで終わらないように、

なんとか伝えようと

そのイメージを

口の中で呟いてみるけれど、

どうしたらいいのか分からなくて、

微かで曖昧なイメージだけを

追いかけて、

まだまだ進展のない日々を過ごします。

 

 

「時はこぼれていくよ

ちゃちな夢の世界も

すぐに広がっていくよ

君は色褪せぬまま」

 

そのまま進展もなくただ時だけがこぼれるように過ぎていく。

イメージだけがどんどん膨らみ、

夢の世界がすぐに広がっていくけれど、

それが現実にはならない

切なさが漂っています。

 

いつまでも君だけが色褪せないまま、

初恋を自分だけで抱き続けています。

 

 

「悪ふざけで飛べたのさ

気のせいだと悟らずにいられたなら」

 

幼い頃が過ぎて振り返ってみたら、

本当は単純な事でも

進展できたかもしれないのに、

いつしかその初恋は

気のせいだと悟るようになってしまい

自分で消してしまった事を

後悔しているようにも感じられます。

 

 

「サンダル履きの足指に見とれた

小さな花咲かせた

あれは恋だった」

 

サンダルを履いた足の指。

僅かな裸の部分に見とれるあたり

スピッツらしいフェチを感じられます。

 

恋もフェチも結局性的な意識なので

より具体的な恋心が表現されていると

感じられます。

 

当時は、

はっきりと好きという気持ちを

意識せず、ただなんとなく

いつも見てしまう部分であった

それを思い出し、

今ならそれも恋の象徴であると

思っているようです。

 

 

「雨上がりの切れ間から

差し込む陽の光たち

街を洗う」

 

初恋を思い出した時、

雨上りの雲の切れ間から差し込む

陽の光から

初恋の優しさと希望を見出だしているような、

そんな場面が浮かびました。

 

 

「いつも仲良しでいいよね

って言われて

でもどこかブルーになってた

あれは恋だった」

 

初恋の後悔を思い出して

切ない気持ちになりつつも

次の希望を想う、

そんな、可愛らしくも切なくて、

終わった頃には

優しい気持ちにもなれる曲です。

 

 

6.楓

https://youtu.be/YapsFDcGe_s

 

後に19thシングルとしても

リリースされる、

スピッツの中では割と

代表曲としても出てくる曲です。

 

なんか曲の感じから、

よく秋の曲として出されますが、

最初に収録されたこのアルバムは

春リリース、

そしてシングルとしては

「スピカ」と両A面で7/7、

夏にリリースされているという、

よくある

スピッツ謎現象な曲でもあります。

 

先述しましたが、

アルバム後にシングルとして

リリースされた際、

「スピカ」と両A面で

という形にしたところ、

現在でも両方の曲が人気で、

ファンの間でも

「楓派」と「スピカ派」に

分かれたりする、

なんか凄いシングルになりました。

ちなみに私は、強いて言えば

スピカ派です。

 

そんな

コアなファンからライトなファンまで、

今でも根強い人気を持つ

この曲も

さっそく聞いていきます。

 

イントロのピアノから

悲しさや寂しさが漂っています。

 

全体的にしっとりとしたバラード

という感じです。

 

というか、

世間一般のイメージもおそらく

スピッツのバラード曲といえばこれ、

という感じなのではないのでしょうか。

 

イントロからもう

ぐっと涙腺に響きそうなメロディは

ズルいです。

 

詞も別れをイメージするような

もの悲しい雰囲気を漂わせています。

さっそく見ていきます。

 

「忘れはしないよ

時が流れても

いたずらなやりとりや

心のトゲさえも

君が笑えばもう

小さく丸くなっていたこと

かわるがわるのぞいた穴から

何を見てたかなぁ?

一人きりじゃ叶えられない

夢もあったけれど

さよなら君の声を抱いて歩いていく

あぁ僕のままでどこまで届くだろう」

 

「いたずらなやりとりや心のトゲ」

には、普段の生活の中で起こりうる

理不尽だったり

ちょっとした衝突のようなものを

イメージしました。

 

そんなものも、

「君が笑えばもう小さく丸くなっていた」。

愛しく癒しとしての存在だった君を

表現しています。

 

ところで、スピッツにはよく

「トゲ」と「丸い」が登場します。

のちに発売されるアルバム「とげまる」や、

特に初期に意識された

「尖っているものには性、丸いものには死」

という考え方だったり。

 

スピッツの中では

「トゲ」の反対語として

「丸い」があるようです。

 

そんな、心のトゲが丸くなる、

イライラした気持ちも

君によって優しくなってく日々を、

「忘れはしないよ」と振り返っています。

 

「かわるがわるのぞいた穴」には

二人で過ごした季節をイメージしました。

 

そこから覗いたものは、

「一人きりじゃ叶えられない夢」。

二人でいる事が大きな事であったことが

窺えます。

 

けれど、そんな季節も過ぎ、

やがて二人は別れを迎えます。

 

一人きりじゃ叶えられない夢だったから、

君と別れても

その夢に向かって歩いていくには

君の声が必要である様子です。

 

君の声を糧にして、

これからも起こりうる理不尽や衝突といった

心のトゲを癒しながら、

君と叶えたかった夢に

「僕のままで」、今は一人の力で

どこまで届くだろうかと想っています。

 

切ない別れの中にも、

君を忘れないように、

君と別れてもなお心の中で共に歩いている

という前向きなような

やっぱりまだ引きずっているような

そんな心情を感じられます。

 

 

「探していたのさ

君と会う日まで

今じゃ懐しい言葉

ガラスの向こうには水玉の雲が

散らかっていたあの日まで

風が吹いて飛ばされそうな

軽いタマシイで

他人と同じような幸せを信じていたのに

これから傷ついたり

誰か傷つけても

あぁ僕のままでどこまで届くだろう」

 

 

君と出会う日まで

心のトゲは消えなくて、

それを癒す言葉を探していたけれど、

それは君が持っていた。

 

そんな出会いや、くれた言葉さえも

今では懐かしいものに。

 

「ガラスの向こうには

水玉の雲が散らばっていた」

という表現が、

繊細で寂しいような、

それでいて美しい心情を表しているようで

綺麗な詞だなと感じます。

 

私の解釈というかイメージでは、

雨の水滴でガラス窓が濡れていて、

それを通して

どんよりした空を眺めている、

という感じです。

 

水滴(悲しい気持ち)を残して

まだ晴れない思いでぼんやりしている、

というイメージが浮かびました。

 

「風が吹いて飛ばされそうな

軽いタマシイ」、

ただなんとなく、漠然とした想いで

「他人と同じような幸せを信じていた」。

 

後悔からまだ気持ちも晴れないまま、

水滴が時間のように流れていく描写が

イメージできます。

 

これから行く一人の道では、

また自分が傷ついたり

逆に自分が誰かを傷つける事も

あるかもしれない。

 

それでも君の声を抱きながら、

自分一人でどこまで、

「他人と同じような幸せ」に辿り着ける

だろうかと考えています。

 

 

「瞬きするほど長い季節が来て

呼び合う名前がこだまし始める

聴こえる?」

 

瞬きするほど=一瞬 と

長い季節。

正反対の言葉を並べる事で、

君と別れてから過ごした時間が、

遠い日のように思っていたのに

気がついたら月日が流れて

そこに来てしまった、というような

時間の感覚から、

じわじわ来る喪失感のようなものを

感じられます。

 

時間の経過により、

少しずつ君の記憶が薄れていく頃、

共に過ごしていた頃に呼びあった名前が

記憶の中でこだまし始めます。

 

やっぱり忘れられない存在だという事を

切ないながらにも自覚せざるを得ない。

だからこそ、

無理矢理忘れるのではなく

その日々も大事に抱いて、

他人と同じような幸せを夢見て

今日も歩いていくのです。

 

終始別れの切なさと、

それまでの日々を忘れずに次へ進む

澄んだ心が表現されていると

感じられる曲です。

 

この別れが、

単純にカップルの別れとして捉えるか、

死別と捉えるかで

また心情が変わってくるかもしれません。

 

そして、一回も出てこなかった「楓」、

なぜタイトルなのか推測してみると、

カエデのイメージが秋、

肌寒くなってきて冷たい空気、

そして別れの季節のイメージから、

曲全体の透明な冷たさ、繊細さと

マッチしているようにも感じられます。

 

また、緑色から紅く染まっていく様子も、

悲しい別れから

形を変えずに色が変化していく、

次へ進むという感じも

曲の世界観と合っているように感じます。

 

全体図を見ると、

歌詞に登場していなくても

「楓」というタイトルが

ピッタリなような気がするところが

さすがですね。

 

 

 

7.スーパーノヴァ

 

また前曲とは一転して

ハードなロック調の曲です。

 

バイクをテーマに

少し荒れてるような、

それでも根本は変わらず

弱気な感じを隠しつつも

頑張ってるという感じがしますが、

音はとにかく尖っている

という印象です。

 

歌詞の感じも、

これまでにはあまりなかったような

強い言葉を用いていたりします。

 

それは、

アルバム解説の際にも出てきた、

プロデューサー笹路さんとの別れを機に

自分からも何か変わろうとする、

その変化を表しているのではと

考えられます。

 

ある意味、

新しいステージへ一歩進もうとする、

その瞬間を

垣間見るような気さえします。

 

そんな、

少し変化したスピッツを感じながら

聞いていきます。

 

イントロからツインのエレキギター

鳴り響きます。

まるで稲妻が降り注ぐ夜のような

衝撃さえ感じられます。

 

そんな衝撃と勢いの中で放たれる詞も、

強がっているけれど

本当は繊細で弱虫、という感じが

漂っているところが、

またスピッツらしいです。

 

さっそく見ていきましょう。

 

「破り捨てた祈り

縫い合わせて破って

弾け飛ぶ光は涙のせいじゃなかった

稲妻のバイクで東京から地獄まで

膨らみもくぼみも迷わず駆け抜けた

愛すべきものはあのスーパーノヴァ

鋼鉄のハートも溶けそうな」

 

 

これまでのスピッツでは

登場してこなかった、

強い言葉が並びます。

 

静かなイメージの祈りを

破り捨てたり縫ってまた破ったり。

 

行動的な中に持ち合わせる静が

反骨精神を持ちながらも

上手く発散できてない

中学生のような不器用さを感じました。

 

曲の激しさや

荒れてみるけどやっぱり荒れきれない

歌詞など、

全体的に中学生くらいの反抗期

のようなものを感じられます。

 

日常で溜まった鬱憤、

モヤモヤした気持ちを、

夜になって人工的な光が弾け飛ぶ町で

自分の涙のせいだけじゃなく、

わざとらしく強い光で晴らしていく

そんな様子をイメージしました。

 

「稲妻のバイク」というのが

厨二感ある。

 

強い光がある町、東京を走り、

朝に向かう…朝が来れば

またいつもの荒れない日々が始まる

という意味で

地獄に向かうという表現なのでは

ないでしょうか。

 

膨らみとくぼみ、は

単純に女性の体をイメージしました。

 

中学生くらいでは

性の意識も目覚めてくる頃だと思うので、

リアルな経験なのか、

はたまた理想を突き詰めているのかは

定かではないですが、

女性の体を意識して

恥ずかしがるでもなく

「迷わず駆け抜けた」、

そこも普段の気弱な自分に対する

反抗なのではないかと感じました。

 

「愛すべきものはあのスーパーノヴァ

 

ところでスーパーノヴァとは

超新星 を意味します。

 

大質量の恒星が

寿命を終える時に起こる

大規模な爆発現象の事を

指す言葉です。

 

反抗的な行動こそが

普段の自分から爆発して

新しい自分が誕生している、

という心情と

リンクしたものだと考えられます。

 

普段の生活では鋼鉄のように硬く、

閉ざしていた心も溶けるほどに

熱い情熱を持っているようです。

 

夜の町で普段とは違う姿になる事で

日々のストレスを発散しているようにも

感じられました。

 

「オレンジ色の絵の具で

汚し合う朝まで

似てないようで似てる

二人は気付いてた

愛すべきものはあのスーパーノヴァ

ひとつ残らず燃やそうよ」

 

夜の町で荒れる様子の

具体的な形として、

やっぱり女性の体の存在がありました。

 

オレンジ色、は

温かみのある色というイメージなので、

愛情のようなものを持っていると

解釈しました。

 

その愛情を持って二人で朝まで汚しあう。

ここでの「汚す」は

つまり性行為を指すと思われます。

 

日々冴えない姿で過ごし、

夜の町では

女性と抱き合って汚していくという

ギャップ。

 

相手の女性は

夜の町を遊び歩いていて

たまたま出会っただけの

存在なのかもしれない。

 

普段の自分の姿とは

正反対かもしれないけれど、

夜の町で朝を迎えるまで汚しあう姿は、

本当はお互いに

普段は与えられない愛を求めての行為

なのかもしれないと考えると、

見た目は正反対でも

心は似ているかもしれないと

二人は夜を過ごしながら

気づいていきます。

 

夜に愛を求めて起こす大爆発、

二人で過ごす時間を

お互いの心を癒すために

愛すべき時間だと捉え、

一晩でこれまで溜めた

ストレスや普段言えない本音までを

全て燃やそうとします。

 

 

「どうでもいい季節に革命を夢見てた

公衆トイレの壁に古い言葉並べた」

 

どうでもいい季節、は

普段の生活の、

ただ呆然とぼんやり過ごしている

様子でしょう。

 

そこで秘かに夢見ていた「革命」。

それは、

普段愛される存在ではない自分が

誰かから愛されている行為、

つまり性行為をする事であったと

思われます。

 

だけどそれまでは、

夢見ていても

到底叶うはずがないとも内心思っていて、

漠然と抱いていた思いは

影にひっそりと建つ

公衆トイレの壁に並べていきます。

 

古い言葉、は

革命を起こした今の目線で

そこに並べた言葉、

つまり叶うはずがないと思っていた野望

の事を指しています。

 

そんな風に、

秘かに夢見ていた革命こそが

今起きている愛されるための性行為。

発散できる行為や

二人でいられる夜の時間を

愛し、大切にしようとしているのです。

 

そんな背景もあるので、

二人で過ごす夜は

鋼鉄のように硬い心も

溶けそうになるほど熱く

盛り上がるようです。

 

冴えない自分が革命を起こす、

そんな反骨精神と勢いを

持っている感じが

バリバリのロックサウンド

表現されている曲です。

 

 

 

8.ただ春を待つ

 

変拍子で構成された、

少し気の抜けたような曲。

 

ヘロヘロな感じは、

草野さん曰く

「渋滞に巻き込まれて

イライラしてるカップルの歌」を

表現したものらしく、

確かに何かくたびれているような、

でもひたすら続きや

その先にあるものを待ち続けているような

微かな希望を感じられる気がします。

 

さっそく聞いていきましょう。

 

変拍子で気の抜けたような

イントロの音やメロディの中に、

愛しさや優しさを感じられます。

 

のんびりした季節を

のんびりしながら待つ

そのゆるさが魅力的です。

 

歌詞を見ていきます。

 

「遠い明日に繋がってる心

こらえ切れず飛び起きるほどの

一度だけで終わるかもしれぬ

網をくぐり幼な子に戻る

ただ春を待つのは哀しくも楽しく

強がりでワガママな

あなたにも届いたなら」

 

 

ここで待つ「春」とは、

季節だけではなく

明るい未来、希望のようなものを

イメージしました。

 

遠い明日に繋がっている事でも

こらえ切れないイライラを感じたら、

一度幼な子、純粋な気持ちに帰りながら

強がりでワガママなあなたと共に

明るい未来、春を

ただひたすらに願い、

待とうとしています。

 

未来を待つのは、

終わりが見えない不安で

哀しくもなるけれど、

あなたと共にであればどこか楽しい。

 

先の分からない事をただひたすらに

大切な人と気長に待つという

穏やかな優しい気持ちになります。

 

 

「居場所求めさまよった生き物

足を踏まれビル風に流され

ただ春を待つのは哀しくも楽しく

見え隠れ夢の夢

あなたにも届いたなら」

 

明るい未来、春とは

自分の居場所がちゃんとある事。

 

足を踏まれても、

ビル風に吹かれて流されても、

ちゃんとここに存在していたいと願う

自分は小さな生き物であると

自覚しながら、

前を向いて春を待ち続けます。

 

夢の夢だと分かっていても、

見え隠れする気持ちを

大切な人に届けて、

共に歩んでいきたいという想いを持ち、

気長に春の訪れを待つのです。

 

 

「雪溶けの上で黄色い鈴の音が

密やかに鳴り響く」

 

雪溶けの上で

ついに春の予兆を感じる頃、

黄色い鈴の音が密やかに鳴り響き、

祝福の音と共に

ついに春を迎えようとします。

 

待ち続けた春を迎えて、

側にいる大切なあなたを見て、

持ち続けた心は

遠いと感じていた明日、春にも

ちゃんと繋がっていたと実感するのです。

 

誰かを想いながら

自分の居場所を求めて

見えない明日を待ち続ける、

くたびれながらもどこか可笑しくて

楽しみながら前を向いて

歩いていけるような曲でした。

 

ちなみに、この曲の仮タイトルは

「環八ラバーズ」。

たぶん意味はそんなにない。

 

しかし、後にスピッツの草野球チームの

チーム名として使用されてたりします。

完全なる趣味ですが。

 

曲自体も、草野さん自身は

かなり気に入っているようですが、

どうもファン人気はあまりなく…

 

聞いてみると、

少しボーっとしてしまうような

暖かな春を感じられる気がして

いいんですけどね。

 

 

9.謝々!!

 

18thシングルとして

「冷たい頬」と両A面シングルで

リリースされた曲。

 

両A面の2曲目は

実質A面扱いされないという

悲しい性…

よってMVも、

シングル集収録も

ないままになってしまっています。

 

なんでや…

同じ両A面で2曲目の「スピカ」は

MVあるのに…

 

ところでこの曲、

読み方は「シェイシェイ」で

中国語の「ありがとう」なのですが、

実際の中国語とは

書き方の表記も読み方も

少し違うそうで。

これはあくまで日本の曲として

お楽しみください。

 

ちょうどこの頃、

スピッツは結成から10年が経過し

(11年目)、

アルバムの発売日がデビュー日で

デビューから7年という事もあり、

そういう意味での

聞いてくれている人や

バンドを支えてくれる人、

さらにはメンバーに対しての

感謝の意味も

こもった曲なのではないのかな

と感じています。

実際のところはどうなんでしょうか。

 

そんなスピッツなりの感謝の歌を

聞いていきます。

 

イントロから

色んな楽器の音が鳴り響き

華やかに彩られています。

 

この盛大な感じが、

大袈裟だけど今日はあなたに

感謝を伝えたいと思います!感があって

微笑ましいです。

 

詞は、

このあとしばらく続く(スピカなど)

「ですます」口調の丁寧な言葉使いが

印象的です。

 

まるで手紙を読んでいるかのようにも

感じられる詞を、

さっそく見ていきましょう。

 

「終わることなど無いのだと

強く思い込んでれば

誰かのせいにしなくても

どうにかやっていけます

やり直しても良いのです

今度は一人ぼっちでも

記号化されたこの部屋から

ついに旅立っていくんです」

 

今進んでいる道の途中でつまづいて、

うまくいかない事があった時に、

人はつい

誰かのせいにしてしまいがちですが、

こんな事は

終わる事などない長い人生では

よくある事だからと思い込んでいれば、

つまづきの一つ一つを

誰かのせいにしないで

どうにか乗り越えていける、

という解釈をしました。

 

長い人生の道のりだから、

多少の失敗はやり直しても良いと

前向きな気持ちを持っています。

 

「記号化されたこの部屋」は

これまでいた、

自分の人生なのに

どこか他人に道のりを

決められていたような、

不自由な人生を指していると

思いました。

 

定められた道を歩めば

困難や苦労は少ないかもしれないし、

それなりに味方もいたかもしれないけれど、

全てを失って一人になったとしても

この決められた道を外れ、

自分の思い描く人生を

新たに歩み始めようとしています。

 

 

「いつでも優しい君に謝々!!

大人も子供もなく

涙でごまかしたり

意味もなく抱き合う僕ら

今ここにいる」

 

これまでの何もかもを捨てて

新たな道を歩み始める時、

側で優しく味方のままでいてくれる、

そんな君に感謝の気持ちを伝えます。

 

だけど素直に伝えるのは

ちょっと照れるから、

あえて日本語ではなく中国語にしてみたり、

涙で誤魔化したり

意味はないけど抱き合ってみたり。

 

そんな気持ちを持ちながら、

一人といいつつ味方でいてくれる

君と二人で今

自分の道の上にいるという事を

実感してします。

 

 

「生まれるためにあるのです

じかに触れるような

新しいひとつひとつへと

何もかも悲しい程に」

 

新しく進む道では、

これまでの事を思うと

悲しい方向に変わっていってしまう

事もあるかもしれないけれど、

そうしてひとつひとつ、

どんどん新しいものに

生まれ変わるためにこの人生はある、

という解釈をしました。

 

 

「あくまで優しい君に謝々!!

赤い土にも芽吹いた

大空に溶けそうになり

ほら全て切り離される

鳥より自由に

かなりありのまま君を見ている」

 

いつでも優しい君に感謝を伝えるけれど、

あくまで優しい君に、と強調。

 

赤い土、何かが芽生えてくるような

新鮮な土台に生まれたその感情で、

広く続く大空に、

自由にありのまま溶け込む鳥のように、

それ以上に何にも縛られない心を持ち

優しい君を見つめます。

 

君はいつでも優しく

自分を見ていてくれたけれど、

今度は自分が君を見ているから、という

感謝のお返し的な心情だと

感じました。

 

歌詞を見ていくと、

このアルバムでお別れした

プロデューサーの笹路さんに

宛てているのでは、

とも思えてきました。

 

笹路さんと離れ、

新たなスピッツとしての模索を

始めていく、という

これまでの感謝と

これからの新しい道を歩いていく感じが

力強く表現されていると

感じられます。

 

このあと、

大きな事件を控えているのですが、

この曲が出来た頃は

まだそんな事は知らないはずなのに、

なぜか今後のスピッツが歩む道のりを

もうすでに見据えていて、

これまで歩んできた道を

振り返って感謝しているようにも

感じられ、

なんだか不思議な感じもします。

 

スピッツなりの、

少しひねくれながらも

愛しい毎日に改めて感謝する、という

優しさや暖かさを感じられる曲です。

 

アウトロのコーラスが大袈裟な感じで

ちょっと可笑しくて微笑ましい。

 

 

 

10.ウィリー

 

リズミカルなドラム音が印象的な曲。

 

自由に踊り出したくなるような

陽気な印象のリズムとメロディが続きます。

 

「ウィリー」は

どういう意味かは定かではないですが、

なんとなく個人的には

おサルのジョージ的な

イメージでした。

うーん、、曲聞いた後だからかな…

 

そんなイメージを描いた詞を

見ていきましょう。

 

「サルが行くサルの中を

無茶してもタフなモーターで

だんだん止めたい気持ち

わき上がっても手に入れるまで

もう二度とここには戻らない」

 

スピッツは、

特に自分たちを含む

人間の事を

獣やサルなどに例えがち。

 

獣やサルに例えられた人間、自分は

純粋に、欲のまま生きているという

イメージ。

 

そんなサルな自分は、

今日もまた欲のままに日々を進みます。

 

欲の向くものを手に入れるまで、

多少無茶しても

タフなモーターを動かし、

もう止めたい…という気持ちが

沸き上がっても、

諦めずに進み続けます。

 

 

「ウィリー孤独な放浪者 いつかは

ウィリー届くはずさ」

 

ウィリー、サルの自分が

諦めずに手に入れたい欲のために

孤独の放浪者としてさまよっている、

その欲とは、

人間になることだと考えられます。

 

サルに例えられただけで、

見た目は人間なのですが、

中身は欲のままに

つまり純粋な子供のような状態なので、

そこから進化していきたいという

心情だと考えられます。

 

いつかは届くはずさと信じて、

一人で進化のために

進んでいきます。

 

 

「雨の日も同じスタイルで

カサも無く息は白いのに

電話もクルマも知らない

眠れないならいっそ朝まで

大きな夜と踊り明かそう」

 

雨が降っても、

中身が人間ではないサルの自分は

冷えて息が白くなっても

カサも差さずに

まっすぐ進んでいきます。

 

電話やクルマといった、

目指す人間たちが作り上げた

未知の文明はまだ知らず、

曖昧な気持ちのまま進む夜は眠れなくて、

いっそ朝まで踊り明かそうと

開き直ります。

 

ここでの朝まで踊り明かす、は

動物的に生まれながらに備わっている

性欲の表現だと思われます。

 

そういった

欲のままに過ごす姿を出す事で、

いかに欲を抑える人間とは違う

という事が分かります。

 

 

「甘く苦くそれは堕落じゃなく」

 

進む孤独の道では誘惑もあり

人間になってしまう事への

甘えや苦しみも感じながらも、

人間、大人を目指しながらも

周りにいるような

欲を抑えすぎて忘れてしまった大人には

ならないように、

自分の思い描く理想の大人になるべく、

進化していくのです。

 

間奏の直前に微かに

ギターの三輪テツヤさんの叫び声が

入っているようです。

そんな遊び心と野性的なところまで

曲に合っている気さえしてきます。

 

 

11.スカーレット

https://youtu.be/l1-D43s6D_A

 

15thシングルにして、

プロデューサー笹路正徳さんと組んだ

最後の曲。

 

とにかくMVがめちゃくちゃ可愛いので

見てくれ。(ヲタク目線)

 

メンバー同士が

牧場で撮影しあってるという裏話だけでも

めちゃくちゃ萌えてる

ヲタクがここに一人。

 

それはさておき、

スピッツバブル(絶頂に売れてる頃)は

相変わらず続いていて、

前作「インディゴ地平線」を携えた

ツアーを行っている最中に

ドラマ主題歌として依頼され

書いた曲になります。

 

当時はツアー中

という事もあり忙しく、

インディゴ地平線」から

♪初恋クレイジー

タイアップにしようとするも、

ドラマサイドから

どうしても新曲を、という事で

急遽作ったとされています。

 

そのため、

カップリングは初のライブ音源

(96年に披露された♪うめぼし)

を付けてのシングルリリースをしました。

 

そんな状況で制作しても、

本人的にはかなり気に入ったものに

なったそうです。

 

シングルだけで見ると、

ジャケットは赤一色、

A面スカーレット、B面うめぼし と

とにかく赤ずくめで

なかなか面白いです。

 

そんな赤な曲を

さっそく聞いていきます。

 

アルペジオの切なくも優しく

繊細なギターフレーズが

印象的なイントロは、

寒い冬の外によく合います。

 

続くドラムのリズムが

空気を変えながらも

暖かな世界観を保ったまま

歌に続きます。

 

「離さない このまま時が流れても

ひとつだけ小さな赤い灯を

守り続けていくよ

喜び悲しみ 心ゆがめても

寒がりな二人を暖めて

無邪気なままの熱で」

 

寒い冬に

好きな人の温もりと小さな赤い灯を重ねて

癒され、それを大切に想います。

 

寒がりな二人が寄り添い、

無邪気な、何の汚れもない

想い合うその熱で

寒い冬を過ごそうとする様子が

微笑ましいです。

 

冬の冷たさの中の

僅かな温もりがより愛しく感じられる

曲となっています。

 

 

「乱れ飛ぶ声にかき消されて

コーヒーの渦に溶けそうでも

ゆらめくカゲロウの向こうから

君が手を伸ばしたら

離さない 優しく抱きしめるだけで

何もかも忘れていられるよ

ほこりまみれの街で」

 

自分一人の世界は、

自分の声は

他人の声が乱れ飛んで届かなくて、

消された言葉は

コーヒーの渦に溶けそうになるような、

少し心も汚れてしまうような

「ほこりまみれの街」。

 

そんな世界で

僅かに揺らめく陽炎の向こうから

大切な君の手が伸びるのが見えたから、

その手を離さず引き寄せて、

優しく抱き締め

寒い街で冷えた心と体を温める事で、

一人の世界での

葛藤や悶々とした思いを

何もかも忘れていられると思うほど

癒されていきます。

 

ここの部分の歌詞だけでも、

一つのショートストーリーを見たような

感覚があります。

 

寒空の中一人、

届かない思いを抱きながら

人混みを歩いていると

目の前に陽炎が現れて

大切な君の手が見え、

それを引き寄せ抱き締め、癒されていく。

 

その背景には

元いたほこりまみれの汚れた街が

あるけれど

それでも二人の世界に浸っている…

みたいな。

 

起承転結と最後の余韻までが

この部分だけでも感じられる歌詞構成に

なっているのはさすがです。

 

 

「誰にも言えずに

夢見ていた

くずれ落ちそうな言葉さえ

ありのまますべてぶつけても

君は微笑むかなぁ…」

 

乱れ飛ぶ他人の声にかき消された

自分の声は、

誰にも言えなかった

夢のような崩れ落ちそうな言葉を

発していました。

 

だけど届かないから

ハッキリと言えないままになっていた

その言葉を、

二人の世界になって直接君に

ありのまま全てを届けても、

君は微笑んでくれるだろうかと考えます。

その心情は少し切ないです。

 

本当の気持ち全てを受けとっても、

変わらず温め合ってくれるだろうか

という不安もまた、

寒い冬の空気によるものだとも

感じられます。

 

温め合って優しいだけじゃない季節を

感じられますが、

それでもきっと君は

全て受け入れてくれるだろうという確信は、

二人の無邪気な熱で温まった心で

感じられているのだと思います。

 

切ないけれどやっぱり優しい、

冷たい空気の中で感じる温もりが、

通常よりも存在が大きく

より大切なものであると

感じさせられました。

 

このあとのギターのフレーズの

跳ねるようなリズムに合わせて

ぴょんぴょんしてるスピッツ

可愛すぎるのでMV見てください。

本当に。

 

冷たい空気に溶け込むような

優しい温もりを感じられる、

聞いて自分の心の灯かりも

赤く灯るような曲でした。

 

個人的に、

スピッツ聞き始めくらいの頃、

なぜかこの曲が三大ヒット曲

(ロビンソン、チェリー、空も飛べるはず

に次ぐヒット曲だと思ってました。

ちなみに三大ヒット曲に次ぐヒット曲は、

涙がキラリ☆です。

 

 

12.フェイクファー

 

アルバム最後の曲にして表題曲。

 

フェイクファーが恋しくなる

冷たい空気に溶けるような

優しいギターのイントロが印象的ですが、

ここでのギターフレーズは

意外と草野さんが弾いているそうです。

アルペジオ感あるので

てっきり三輪さんかと思ってました。

 

そういう意味でも、

表題曲で草野さんがギターを弾くという

これまで笹路さんプロデュースでは

行っていなかった事を

あえてやる感じから、

別れと新たな旅立ちの決意を

感じられる気がします。

 

そんな優しさと暖かさ、小さな決意を

感じられるメロディに

乗せられる詞は、

「フェイクファー」という単語から

連想してか、

「柔らかい嘘」「優しい嘘」

イメージさせます。

 

ところで、

今ってフェイクファーの事

「エコファー」って言うらしいですよ。

個人的には「フェイクファー」の方が

言葉の響き的に

可愛い感じもしてるのですが。。

 

それはさておき、

さっそく聞いていきます。

 

「柔らかな心を持った

はじめて君と出会った

少しだけで変わると思っていた

夢のような

唇をすり抜ける

くすぐったい言葉の

たとえ全てがウソであっても

それでいいと」

 

これまで持っていた、

人を信用していないような

寂しい硬い心が、

君と初めて出会った事でほぐれ、

柔らかな心を持ったといいます。

まさに、恋に落ちた瞬間を感じます。

 

君の唇からすり抜けてくる、

自分を惑わし、

恋心がくすぐられるような言葉の、

その全てが嘘であっても良いとまで

思うほど、

君の言葉に魅了されている事が

分かります。

 

 

「憧れだけ引きずって

でたらめに道歩いた

君の名前探し求めていた

たどり着いて

分かち合う物は何も無いけど

恋のよろこびにあふれてる」

 

そんな夢のような心地になる恋は、

自分だけ気持ちが盛り上がっていても相手に伝わっているとは限らなくて。

 

ただ一方的な憧れを引きずりながら、

デタラメに、不器用に

恋を進めていきます。

 

君を呼び止めるための言葉、

君の名前を探し求めて、

やっと辿り着く頃。

 

ベタな共通点とか

何か特別なものを分かちあえるわけでは

ないけれど、

やっと振り向いてくれた君との恋の

その喜びと幸福感だけは、

二人だけが今ここで共通して感じられている

と実感します。

 

 

「偽りの海に身体委ねて

恋のよろこびにあふれてる」

 

振り向いてくれた事さえも、

一瞬の気まぐれ、嘘でも夢でもいいから、

今だけは二人、

この恋に溺れていようという

夢見がちで

少し切ない気持ちにもなります。

 

 

「今から箱の外へ二人は箱の外へ

未来と別の世界 見つけた

そんな気がした」

 

「柔らかな心を持った

はじめて君と出会った」

 

そうして結ばれた二人は、

箱の外へと向かいます。

 

ここでの箱、とは

常識だったり普通の事の例えだと

解釈しました。

 

常識から二人外れて、

未来とは別の世界へと飛び立ちます。

 

一瞬心中とかよぎりましたが

止めときましょう。。

 

そんな事さえ出来てしまう気がすると

錯覚するほど、

恋に夢中になり、

この恋の事しか見えていない様子は

分かります。

 

気がするだけなので

実際は特に何もしてなさそうですが。

 

恋をして、

世界がいつもと違って見えて、

様々なものにも優しい気持ちに

なれているような、

不思議で暖かい感覚は、

フェイクファーのマフラーやコートの

くすぐったい柔らかさを

どこかイメージできる気がします。

 

 

【まとめ】

 

以上で8thアルバム

「フェイクファー」を

聞き終わりました。

 

これまで支えてきてくれた

プロデューサーなしでの制作

という事で、

これまでのスピッツとは

少し雰囲気が変わったかな、

という印象です。

 

個人的には、

それでも曲の多様性も感じられるし

歌詞の世界観も変わらず

「冴えない自分と好きな人」の

感じもあるのですが、

本人たちは出来に

あまり満足していないようです。

 

このアルバムを携えたライブツアーから、

現在もスピッツのライブを支える

サポートミュージシャンの

クジヒロコさんを迎えるなど、

ここからまた

次のステージへと進んでいくスピッツ

というものを

垣間見れるように思います。

 

個人的に、

「空の飛び方」、

「ハチミツ」「インディゴ地平線」、

そして「フェイクファー」で

ひとつの括りという解釈をしています。

 

「空の飛び方」で恋の自覚を持ち、

前に進みはじめて、

「ハチミツ」「インディゴ…」で

楽しく幸せに過ごし、

そして「フェイクファー」で別れを迎える、

という感じ。

 

そんな、

一つのステージの終わりと、

それと同時にまた新たに

変化していくような予感もする、

優しい暖かさを持つスピッツ

感じられるこのアルバムも

是非聞いてみてください。

 

以上、桃亀改めandでした。