ももたね漫画研究「ZOMBIE-LOAN」(後編)

こんにちは。桃亀です。

 

前回(https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2020/04/09/103002)に引き続き、

PEACH-PIT先生の漫画作品

ZOMBIE-LOAN」を

読んでいきたいと思います。

 

ここまでで、

「生と死」、「死と再生」を巡り、

仲間意識も芽生えて成長し、

強く生きるみちるやチカ、シト。

 

後編では、

その強さを持って

「ゾンビローン」とは何なのか、

そしてみちるの正体に迫っていきながら、

迎える未来を見ていきます。

 

 

9巻


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8巻までの、

ARRCとの闘いの最中に浮上した、

渡守、鼈甲への疑念を持って、

突如Zローンを抜ける決意をする

チカとシト。

 

そして、

記憶の底を辿って救ってくれたあとに

消えてしまったヨミを探すため、

コヨミの実家に向かうみちる。

 

それぞれ遠くに旅に出て、

新たな出会いと

それぞれの秘密に迫っていきます。

 

Zローンを抜けた

チカとシトが向かったのは、

シトの実家、徐福のある国、香港。

 

そこで元徐福の構成員で

現在は情報屋をしている男の元へと向かう。

 

シトが生きている理由、

そして香港へ戻った理由は、

唯一愛情を抱いた、

自分の母親を探すためであった。

 

シトの母親となった女性は、

千鶴という、日本の裕福な外商の娘で、

18世紀上海にて

徐福のトップ、老爺によって

拉致され、自害していた。

 

しかし、

老爺は死者を蘇らせる術を使い

千鶴を呼び起こし、

さらに千鶴から新たな屍を産ませようと

計画する。

そこで生まれたのがシト、

生まれた時からゾンビという存在であった。

 

マッマ………めっちゃ美人……

 

死者を蘇らせ、時を止める術

「尸解の法」を施し、

存在する老爺、千鶴、そしてシト。

 

永遠に続く生き地獄の中で、

唯一愛情を抱き、生きる糧としていたのが

母親の千鶴の存在であったが、

次第に法が解けて元の死体の姿となり

目覚めなくなってしまった千鶴を想い、

今度は取り戻す事を糧として

生きる決意をし、

渡守、鼈甲を訪ね、

Zローンと契約をして、現在に至る。

 

そんな過去を持つシトの話を聞いた

チカや、現地で合流したAローンの修司は、

シトに協力し、

徐福を壊すという目的を持ち、

「ゾンビ」という存在の

核心に迫っていくのです。

 

一方で、

コヨミの実家を訪ね、

ヨミを探しに来たみちる。

 

コヨミの実家は、

代々続く、死者を卸して祀る

「神降ろし」を行う

「四位ツ原」。

 

ヨミの正体は、

元々男児としてこの地に産まれたものの、

男児は許されないと死者にされた存在で、

巫女として育てられたコヨミによって

呼び起こされたものでした。

 

男児として産まれた者は

すぐさま死者とされ、

「ヤトノハコ」と呼ばれるものに

封印されてきましたが、

それが一体化したものが現在のヨミ。

 

封印された者が集う

黄泉の道へと続く大きな岩、

「境界岩」へ案内されたみちるは、

ヨミを取り戻すため、

岩の亀裂へと進んでいきます。

 

探し物のために進んでいく中で、

封印された男児たちの声を聞き、

本当は本来あるべき姿で、

元の場所へ帰りたがっていた魂を悟り、

あえて逃げずに向き合う姿は、

これまでのみちるでは想像できなかった、

それだけ生に対して強くなったと

垣間見えるシーンでもありました。

 

その一方で。

コヨミは家の遣いによって眠りにつき、

徐福の構成員、紅棍に

引き渡されてしまう。

 

それぞれ目的が異なり、

違う場所へと旅立ったはずなのに、

結局全てが繋がっていく。

 

それは、

真の目的「ゾンビ、屍として生きる者」の

正体に迫ったからだと感じられます。

 

それぞれの想いを辿りながら、

ゾンビとしての存在、

そして今の自分の立場を再確認する

巻となっています。

 

 

10巻


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実は

PEACH-PIT先生の作品の中では

これが初の二桁巻。

ひとつの漫画作品のシリーズで

単行本が二桁いったのは

これと「しゅごキャラ!」くらい

なんですね、実は。

 

ほら、「ローゼンメイデン」はさ、

トータルだと長いけど

それぞれのシリーズとしては10巻前後で

終わってるから…

 

それはさておき。

 

シトの過去の話を聞き、

愛する者のために

生に異様に執着する自分と比較するチカ。

 

そこに、

シトを奪おうとする徐福の構成員、紅棍が

襲撃してして、

3人は徐福に捕らわれてしまいます。

捕らわれる際にとどめを刺したのは、

かつてAローンに所属していた

兎子だった。

 

一方で、ヤトノハコに封印された魂に

向き合い、

かつてシトから預かっていた櫛を

投げつけた事で

櫛の狭間からシトの過去を見ていたみちる。

 

その狭間でみちるはヨミと再会しますが、

狭間の中でさらに綻びを見つけ、触れると、

みちる自身が心の底に沈めていた

幼い頃の記憶が流れてきます。

 

自分は父親と母親から

たくさんの愛情を受けて育ってきた、と

思っていたけれど、

自分は「普通の子」ではないと

知ってしまった時、

自分の両親の首に死の予兆である

黒い輪を見つけてしまうのでした。

 

そうした記憶を呼び起こしてしまい、

自我を失ったみちるは、

無意識のまま暴走し、

時空を歪ませ始めてしまいます。

 

ヨミがみちるの中に憑依し、

捻れを止めた事でなんとか抑えますが、

流され辿り着いたのは、

ARRCや渡守ら「彼岸人」が集う

生と死の狭間の世界、彼岸だった。

 

そこで出会った彼岸人、純露によって、

運命が刻まれた輪廻、

アカシックレコードを通り、

ARRCの本部へと乗り込んでしまうみちる。

そこにいたのは、

ARRCの千才だけでなく、

死神となった芝、

そして実はARRCのボスである薄荷だった。

 

薄荷はみちるに、

植え付けるように

みちるの正体を

伝え始めるのでした。

 

みちるは「普通の子」ではなく、

この世の全ての運命を司る

アカシックレコードに刻まれていない存在、

「シンギュラリティ」だと

薄荷から伝えられ、

みちるは自分を失いかける。

 

けれど、コヨミの危機を知らされると、

仲間を助けるためと自分を取り戻し、

元の世界へ戻る決意が出来たのは、

これまでで培ってきた、

誰かを想う強い「生命力」が

備わっていたからだと改めて感じられます。

 

トラウマを乗り越えて、

今の自分を見失わない強い気持ちが、

しっかり備わっている描写でした。

 

一方、徐福に捕らわれたチカ、修司は

シトとは別室に隔離され、

修司がゾンビローン、Aローンに加入した

経緯を話していた。

そして別の場所では、

兎子が紅棍に、全との過去、

そして自分が徐福に戻った訳を

話しています。

 

チカたちが隔離から脱出する際に、

シトの身柄が上海に送られた事を知り、

チカと修司は兎子に連れられ、

シトの元へと急ぐ。

 

シトの身は、

体が老いた老爺の新たな器として使用され、

さらにコヨミの持つ

「死者の舌」を以て

完全な姿になる計画のために

上海に送られていた。

 

シトが身を奪われる最後に見たのは、

自分が長年探していた、

自分の母親が、確実に死んでいるという

事実だった。

 

そのひとつの確実な絶望に涙するシトが、

あまりにも美しく映ります。

 

紅棍によって上海に送られたコヨミから

舌だけを奪い、

ついに完全な姿で存在する老爺に

迫ったチカたちは、

徐福の董奉によって

絶体絶命のピンチに迫られてしまいます。

 

自分と、

美しい姿を保つ千鶴が

完全な形になるために

全てを犠牲にする事を容易く思う徐福の

その残酷さは、

逆に「完全」を

美しく現しているとも思えてしまうほどに

絶大な存在感を放っているのです。

 

「死」の残酷さと「再生」の強さを

美しい形で心の奥底を

傷つけるように刻まれていくような

感覚になる巻です。

 

 

11巻


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上海で合流した、チカたちとみちる。

 

みちるによって

董奉の陣を突破したチカたちは、

それぞれの敵へと立ち向かっていく。

 

兎子は、全と育ての親を殺した董奉へ、

チカと修司は、シトの身体を奪った老爺へ。

 

修司は、彼岸人に捕らわれ、

操られている全を見つけ、

全を取り戻すために自分を犠牲にする。

 

チカは、

老爺も知らないシトの本当の姿、

右手を自分と共有している事から

老爺に、お前は不完全だと言いながら

反撃を開始。

 

そこに、

彼岸から立ち去る際にみちるに付けた矢を

頼りに追いかけた千才が合流。

仲間をみちるに倒された恨みから、

みちるの仲間たち、

チカや兎子、修司たちを

殺していくと宣言。

 

しかし、みちるも黙ってはいない。

自らまた時空を歪ませ、

チカにシトの身体を持つ老爺を倒させ、

また無駄に運が強い修司は懸けに勝ち、

自分も生き残りながら

全を取り戻す事に成功する。

 

自我を取り戻したシトの前に現れたのは、

かつて愛した女性、自分の母親である千鶴。

 

けれど、

やはり元々存在していないはずの千鶴は

簡単に消えてしまいます。

そこで、コヨミの死体に憑依したヨミは、

シトに本当の事を教えていきます。

 

冥府の川、

生死を分ける流れの中で見つけた

2つの魂。

ヨミに運べるのはひとつだけ。

 

そこに漂っていたのは、

身体を奪われたシトの魂、

そして舌を奪われたコヨミの魂だった。

 

コヨミの魂は、シトを愛していて、

シトを救うために

自分を犠牲にしたのだった。

 

コヨミはシトを守るため、

自ら死に向かい、

そしてシトや皆を救っていたのです。

 

戦いが終わった後、

Zローンの鼈甲や由詩が駆けつけ、

全員がZローンと契約する事で

生き返るのでした。

 

そして、

己の欲望のためだけに

代々の一族を巻き込んだ張本人、老爺を

董奉自らが潰した事で

徐福を追放され、

董奉自らもまた一人、

死を迎えるのであった。

 

ずっと側近として近い存在であった董奉に、

シトは、

チカらから刺激された

「自分の命、存在意義」を持って、

最後に、全ての関係を無視した、

最初で最後の心からのやりとりをします。

 

「生死のサイクルから外れた俺でも、

せめて憶えていることで

命を繋げるのならば」

 

と、

なくなる命をひとつの形として残す事で、

生命を繋げていくシトもまた、

Zローンのメンバーたちと共に、

生を諦めたゾンビから

自分の意思を持つ強い存在となっていた事が

分かります。

 

そして上海から全員が帰国、

Aローンのメンバーも加わった

新生Zローンとして、

日常を取り戻していきます。

 

ついでに核心を抜いた状態になった

ミニ千才さんも

ちゃっかりお持ち帰りするところも。。

 

しかし、平和な日常は、

やはり長くは続きません。

 

ゾンビという世界の矛盾が増えすぎた事で、

彼岸人が問題視し、

強制的に削除する計画を企て、

実行しだしていたのです。

 

その、最優先消去対象となったのが、

運命に刻まれていない、

存在するはずのない「シンギュラリティ」、

みちるだった。

 

同時に消されるはずだった

チカとシトは葬儀屋に助けられ、

さらに霜月さんの理事長室に招かれ、

消去を回避するが、

ARRCやZローン内部から

情報が漏れてしまっているのではないか

という疑惑が生まれて…

 

ゾンビローンの核心、

そしてみちるを救うための

最終章が始まりました。

 

チカもシトも、そしてみちるも

まがい者ながらにも信念を持って

生きていくと決意した最中に起きた、

消去。

 

消えた者を追いながら、

再び自分達に、そしてみちるに

「生きる」事を問い掛けながら

探しにいくのです。

 

 

12巻


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「運命の矛盾」と見なされ、

「消去」されてしまった

Zローンの仲間たち。

 

実際に指摘されて、

「生きる」と決意したものの、

やはり現実では

自分は矛盾した存在なのである

という自覚と葛藤しながら、

それでも、

 

「自分がこの世にいなくてもいいと

自分勝手に決めるな」

 

これまでに培った

「生」に対する強い信念を思い出し、

Zローンメンバーはじめ、

みちるを救うために

彼岸人の集団「七人委員会」に

立ち向かっていきます。

 

しかしすぐに

死神の芝、

さらに七人委員会の彼岸人に追われ、

消去された空間に流されていく。

 

一方で、先に消去されたみちると

巻き添えになったARRCの千才は

彼岸の廃棄データが

一時的に置かれる場所に、

データとして配置されていた。

 

そして同じく彼岸人によって消された

チカやシト、

そして巻き添えになった芝は、

なぜかゲームのバグとして

小梅がプレイするゲームの中に

入り込んでしまう。

 

ゲームのバグとしてではあるものの、

まだ自分の意思や行動ができる状態である

チカやシトは、

同じくデータ化されたZローンの仲間たちを

救うため、

ゲームクリアに向けて

(ゲーム内の)ゾンビ狩りを行う事に。

 

そうして無事、

みちるたちが配置された

廃棄データの一時置き場に辿り着いた

チカとシト。

自動清掃ツールによって

消されかけてたみちるを

間一髪で救いだします。

 

思わずトラックに乗り込んで、

そのまま焼却炉へと飛び込んでいく

一同、そして後に合流したヨミとざらめ。

 

その先では、

チカとシトを鼈甲が拾い、

芝とみちるは海の底に漂いながら

七人委員会に追われていた。

 

チカやシトはそこで、

みちるの違和感、正体を知り、

みちるが「核心」であると

悟っていくのです。

 

みちるの正体、

そしてデータ化されたままの

Zローンの仲間たちを追って、

物語は終わりへと向かっていきます。

 

 

13巻


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最終巻です。

 

なんか分厚い単行本。

カラーページ多めの大ボリューム。

 

それぞれ七人委員会の甘露に追われ、

合流するも

みちるは再びデータとなり消えてしまう。

 

そこに、ずっと行方をくらましていた

由詩が、検閲官として現れる。

 

由詩は、ゾンビでもあるものの、

「シンギュラリティ」である

みちるのみを監視する

検閲官としての顔も持っていたのです。

 

「シンギュラリティ」とは、

世界全てを飲み込んでしまう

ブラックホールのようなもので、

みちるはその「発生源」として

彼岸人、七人委員会からは

恐れられている対象だった。

 

それも、偶然そうなった訳ではなく、

人為的に作られた

「エリザ計画」の生き残り、

「エリザベトの仔」である事から

想定外の積み重ねとして

選出された存在だったのです。

 

その、人工的に作られた存在は

何らかのバグが生じて、

15歳までに突発的な自殺で

なくなるべきはずのものだったのに、

偶然3人のみ

生き残ってしまっていました。

 

それがみちると芝、

そしてAローンの修司でした。

 

そんな修司は、

彼岸人によってAローン組

まとめて消されかけてたところで、

ARRCのネリに助けられて

現在、ヨミとざらめ、そして霜月さんと

合流していました。

 

「エリザ計画」によって

作られた存在である みちるたちは、

アカシックレコード」を壊して

世界の生死を滅茶苦茶にするために

生まれた者、いわば実験体であった。

 

それでもみちるを救うのかと

問われたチカとシトは、

1巻で確めた、

みちるの「生きたい」という想いを

思い出し、

みちるのいない世界など

考えられないと悟り、

改めてみちるを救出すると誓うのでした。

 

そしてみちるもまた、

作られた存在である以上、

何の欲も持たない、

ただ存在しているだけの

無色透明な存在なのだと諭されるものの、

これまでを振り返り、

本当にそうだったのかと

疑念を抱きながら眠りにつきます。

 

しかし、

実はチカやシトと過ごす内に芽生えた

感情を叫んでいた事を思い出し、

またも「予想外」の反応を起こすのが

「シンギュラリティ」。

 

異常発生させたみちるを想い、

上へ駆け上がっていくチカ、シト。

 

その最中には

「エリザベトの仔」である芝を

優先的に狩られたりなどして、

仲間が徐々に減っていく。

 

残酷な現実は芝を襲い、

何者にもなれなかったが

チカとつるんでいる時だけが輝いていたと

悟る芝。

 

最後に死神から抜いた核心を

自ら外し、命尽きるまで、

自分の存在を発揮し、

そしてチカの元へは

もういけないと消えていくシーンは、

これまでの芝との別れの中で

一番切ないものだと感じました。

 

そしてついに親玉、薄荷の元へ辿り着く。

 

薄荷からこの世の仕組みを聞かされて

攻撃されるチカやシトは、

みちるを操り破滅するために扱う薄荷に、

「生きてやる」とその強さを以て

立ち向かっていきます。

 

そしてネリの能力で生命の糸を繋ぎ、

世界を動かすシステムの中枢にある

歯車を止めるために辿り着いた

修司とヨミ。

 

消えるかもしれないという覚悟をもって

運命の歯車を止めるため、

自分の命の糸を犠牲にして…

 

「運命は変えられない」

 

思い込みをぶち壊すほどの、

それ以上の強い生命力や絶対的な信頼が

運命を変えていく、という

大きな振動を起こしながら

物語は最終回を迎えます。

 

歯車が止まり、

アカシックレコード、運命の輪廻 が

止まった事で、

扉が開く=世界の終了、

そして同時に始まる「再生」が

危惧される状況に。

 

彼岸人の意義に逆らい続けて

壮大な自殺劇を繰り広げる薄荷に、

死者の世界へと誘われもなお、

「死が救済ではない」事を知った

シトはそれを拒む。

 

それと同時に、

チカたちはみちるに

本当の気持ちを問いかける。

 

「そこが嫌なら飛び出して来い」

 

かつて言われた言葉で目覚めた時、

運命の歯車は逆回転を始めるのでした。

 

そしてついに薄荷を捕らえたチカは、

死を望んだ薄荷に対して、

あえて殺しはせず、けれど

自分の罪を抱えながら、

運命に抗って生きろと伝えます。

 

そして世界は逆再生、

つまり今までの記憶が全てリセットされ、

物語の始まりへと戻っていくのでした。

 

 

「逆回転」の最中で

死後の世界に漂うみちるに対し、

死神のざらめは

みちるが存在しているその意義を

説きながら、

2つの選択肢を与える。

 

このまま運命の輪廻に紛れ込み

そのまま死を迎えるか。

 

みちるのみ記憶をそのままに

何もかもがリセットされた世界で生きるか。

 

後者はチカやシトなど、

これまで関わった全ての人が

みちるを知らない状態に

戻ってしまうため、

そのままの人間関係を保ちたいと願うなら、

それはある意味

生き地獄となってしまうと忠告するも、

やはりみちるが選ぶのは…

 

一度死んだ時に選んだ「生」を

またひとり全うし、

自分だけが忘れないでいたら

また繋がる事が出来るかもしれない

という僅かな希望を持って、

千才の核心を借りながら

生きる決意をしたみちる。

 

記憶の消去は完全でなく、

つじつまの合わない記憶は

彼らの中で小さな違和感として残るものの、

みちるを知らない状態で、

関わる事のない、

ある意味元通りの世界で

今日も生きていくのです。

 

唯一誰にも曲げる事の出来ない記憶として、

死の間際に蘇る「走馬灯」。

 

もしかしたら、

死の間際にはみちるの事を

思い出してくれるかもしれないからと

千才が慰める頃、

とある通学バスが

事故を起こしたという

臨時ニュースが目に飛び込んでくる。

その事故での死亡者は…

 

もしかしたらまた、

運命を共にするかもしれない、という

予感を感じさせつつも、

希望に満ち溢れすぎず、

でも絶望的にもなりすぎず、

最後まで「生と死」が

近くに感じられる締めとなり、

物語は終わり、また始まっていくのでした。

 

 

【まとめ】

 

以上で「ZOMBIE-LOAN」全13巻を

読み終わりました。

 

後半は自分の感想というよりも

ほぼ物語を追ってるだけになってしまって

申し訳ないです。

 

けれどこの物語は、

変に解釈するよりも

ありのままに受け止めることで、

自分の世界を振り返った時に

自分が選ぶのは「生と死」のどちらなのか、

それを考えられると思いました。

 

簡単に

「生きてればいい事ある」だとか

「死ぬのは良くない」なんて

言えない時代だからこそ、

自らの意思で「生きたい」と

思えるような、

そんな魂の物語が

この作品だと感じられます。

 

愛する人を守るため、

自分が生まれてきた意味を示すため。

 

目的や動機は

人それぞれでもいいけれど、

ただひとつ、確実なものを定めて

それのために自分は生きるんだ、という

強い気持ちを持ち続ける事が

大切であると、

この物語から読み取れると思います。

 

けれど、

やっぱりずっと強い気持ちを

持ち続けて生きている人というのは

現実的には少なくて、

目的を見失った時には

死を思う人もいるかもしれません。

私はしょっちゅうです。

 

これは私の持論なんですけど、

生きる目的を見失ってしまった時は、

そのハードルを少し下げてみて、

「これさえ達成したら

もういつ死んでもそんなに後悔しないかな」

というレベルにしてみて、

あとはそんなに気負わず生きていたら

いいんじゃないでしょうか。

 

テキトーに生きてたらシトに怒られそう

だけど。。

 

また、そんな感じで

死がよぎった時に

この物語を振り返ってみると、

もしかしたら自分の中の

生きる目的が見つかるかもしれません。

 

今、世界では大変な状況になっていて、

この現状も人々の生死も、

存在が始まった頃から

運命によって決まっているもの

なのかもしれないと思いつつも、

運命だからと諦めず、

運命に抗っていくつもりで、

今を全力で生きていこうという

現代社会へのメッセージにもなるかも

しれないこの物語。

 

外出自粛となった今こそ

読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

以上、桃亀でした。