スピッツアルバム研究6「空の飛び方」

こんにちは。

桃亀改めandです。

 

スピッツのアルバムを聞いて、

個人的な解釈も含めた感想文を

つらつら書いています。

 

前回「Crispy!」を聞いて

書いたものはこちらから。

https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2019/08/26/153643

 

 

さて、

今回は5thアルバム「空の飛び方」

聞いていこうと思います。

 

 

前作「Crispy!」では、

プロデューサーに

笹路正徳さんを招き入れ、

とにかく「売れ線」の曲を

たくさん作りましたが、

リリース当時はあえなく撃沈。

 

さすがにやりすぎた、という事で

もう少しシンプルな音作りを目指します。

 

というか、正直

前作のようなノリノリ売れ線で

いざ売れてしまっても、

元々キャラじゃないので

その方向性でずっとやってくのは

無理があるとメンバーも思ったようで、

だったら別にそんな

大ヒットしなくても、

まぁせいぜい

チャートインすればいっかな~

くらいの気持ちになったようです。

 

気持ちが楽になり、

音もシンプルかつ

洗練されたものとなりました。

 

また、今回から

CDジャケットのデザイナーも

木村豊さんという方に変更し、

以降現在も多く続く

「女性とアイテム」というテーマを

確立させ、

スピッツのアートワークの

特徴の1つとなりました。

 

そんなシンプル・イズ・ベストな

アルバム、

さっそく聞いていきましょう。

 

空の飛び方

1994年9月21日release


f:id:peachdraw18:20190827081126j:image

 

収録曲

  1. たまご
  2. スパイダー
  3. 空も飛べるはず
  4. 迷子の兵隊
  5. 恋は夕暮れ
  6. 不死身のビーナス
  7. ラズベリー
  8. ヘチマの花
  9. ビーフェイス
  10. 青い車
  11. サンシャイン

 

 

1.たまご

 

シンプルなバンドスタイルに戻り、

音が洗練されたと実感させる

オープニング。

 

そして歌詞の世界観も

なんというか…「おかえり」という感じ。

摩訶不思議の中に

性や死が含まれたものに

なりました。

 

「からめた小指で誰も知らない約束」

「たまごの中にはいつか生まれ出すヒヨコ」

「君と僕のおかしな秘密」

 

ここでは性的な意味だと感じました。

 

指切りをからめた小指っていうだけで

なんでこんな色気出るんですかね。

 

ここでの「ヒヨコ」は

いつか生まれてくるであろう新たな命、

つまり二人の間の子供。

つまり「たまご」は性行為そのもの、

またはその後に出来たもの

という解釈になります。

 

「バナナ浮かぶ夜は涙こらえて」

「下手なピンボールだって味方につけた」

 

ここはもうガッツリ下ネタ的な

解釈でいきます。

 

「バナナ浮かぶ」は、

男性器の興奮状態(オブラートに包んだ)

の事を比喩してます。

 

ピンボール」はなんか…

よくわからないけど

なんかエロさを感じるのは

私だけでしょうか。。

 

とにかく歌詞の単語ひとつひとつが

隠語に思えて仕方のない

隠れエロソングです。(究極)

 

「君はこの場所でボロぎれみたいな

僕を抱きよせた」

も、

きっとボロボロで薄くなった

性行為後みたいなイメージに

なるかと思いますが、

私はこの一文

やけにキュンとしたんですよねぇ……

 

「はじめて感じた宇宙・タマシイの事実」は

性行為によって

たまご=受精 を実感した、

という感じでしょうか。

やはりここでも

生命の誕生は宇宙の神秘という考え方が

あるようです。

(「惑星のかけら」でも感じられましたが)

 

テンポも心地の良いロックな音で

誤魔化されてますが、

実はなかなかいろいろ想像膨らむ曲です。

 

最後の「君と僕のよくある…」も

最後に結論として答え言わないで

フェードアウト系のも意味深で

たまらないですね。

 

2.スパイダー

https://youtu.be/mf-RrGndfC8

 

後に10thシングルとしても

リリースされる曲。

 

現在でも多くのファンを持つ曲ですね。

 

PVが全体的にビビッドなピンク(紫寄り)

な雰囲気で妖しさと色気を感じます。

あの、服装はね、

当時そういう着方が流行ってた

みたいなんで…ね、うん。

 

曲を聞いていきましょう。

 

こちらもアップテンポで

イントロからワクワクします。

 

アルバム制作時、

先述の♪たまごと同時に作ってきて

♪たまご が(テンポ的に)「中くらい」、

こちらの♪スパイダー が「速い曲」

というイメージがあったようです。

 

ただ実際は♪たまご の方が

速いみたいですが。

 

歌詞は

キュンともするしゾッともする、

なんとも不思議なスピッツワールドが

炸裂しています。

 

「可愛い君が好きなもの

ちょっと老いぼれてるピアノ」

「さびしい僕は地下室の

すみっこでうずくまるスパイダー」

 

韻を踏みながらも

君と僕の対比になっているのが

素晴らしいなと感じます。

 

可愛い君は、

老いぼれてる…古くから使われている

ピアノが好きという、

なんとなくお上品なイメージの女性。

 

一方で僕は、

ひとり寂しく地下室のすみっこ

(暗くて狭いところ)で

うずくまっている

スパイダー…蜘蛛 のような存在。

お上品な女性とは

だいぶかけ離れたイメージです。

 

そんなお上品な君の

「洗いたてのブラウス」は

暗くて寂しい僕によって

「筋書き通りに汚されていく」。

 

汚されていくだけではなく、

「筋書き通りに」汚されていくという

この一文で急に怖さを増すのが

言葉って凄いなと思わせるのですが。

 

後の「もっと遠くまで君を奪って逃げる」

からか、

誘拐を歌っているという説が

濃厚そうですが、

私的には誘拐は誘拐でも、

計画性のある、

それでいて性的な目的もある

誘拐なのかなと感じました。

 

「可愛い君」に出会って、

そういう気持ちが

芽生えてしまったものの、

明らかに環境が違い

普通には近づけないので、

無理矢理誘拐という形で

自身の目的を果たそうとする、

という感じでしょうか。

 

「可愛い君をつかまえた」方法として、

「とっておきの嘘ふりまいて」。

 

言葉巧みに誘い、君を捕まえたといいます。

 

「さびしい僕に火をつけて しらんぷり

ハート型のライター」

 

寂しさのあまりに

自分の中にあるハート…心 に

「可愛い君」という火をつけて

燃え上がるまま、

振り返りもせずに、知らんぷりして

行動に移してしまった様子が窺えます。

 

「こがね色の坂道で加速したら

二度と戻れないから」

 

自分の思う幸せだと信じて

気持ちのままに加速していったら、

この火はより燃え上がってしまい

元の状態に戻ることが

出来なくなるという、

脅迫じみた告白のような、

決意のようなものを感じ、

ここでもまた

キュンとするような、

だけどゾッとするような

妙な気持ちになります。

 

サビはほぼ

「だからもっと遠くまで君を奪って逃げる」

「ラララ千の夜を飛び越えて走り続ける」

です。

 

その中で、

最後にひとつだけ変化する一文が、

 

「力尽きたときはそのときで

笑い飛ばしてよ」。

 

ここに

やけに幸せそうなカップ

というイメージを抱きました。

 

もしかしたら

「僕」の妄想の中での一言かもしれないし、

もしかしたら

誘拐されて戸惑う「君」に対して、

冗談半分で緊張を緩和させるために

言ってみた一言かもしれませんね。

 

これからどうするのかと問われ、

 

まぁ、力尽きたその時は

僕を笑い飛ばしてくれればいいよ

 

みたいな、軽い感じで答えつつも、

あくまで一方的に

「可愛い君」と

ずっと一緒にいたい という

強い気持ちが伝わってきて、

逆になんだか切ないような気もします。

 

そんな曲ですが、

ライブでは両腕をサビのタイミングで

左右に振る、

通称「ワイパー」のフリで

大変盛り上がる曲でもあります。

 

個人的に、CD音源版のリズムより、

ライブでの、

ラストの半音上がるサビで

若干テンポが早くなるのが

堪らなく好きなんですよ。(伝われ)

 

とにかく、割とライブでは定番で

盛り上がる曲なので要チェックです。

 

 

3.空も飛べるはず

https://youtu.be/h-kQw4JqCHE

 

皆さんおまたせしました。

 

スピッツ3大ヒット曲の一曲です。

 

この曲で説明すると

だいたい理解してくれるので

説明がとても楽と

私の中でも評判ですが。

 

実は元々

有名なドラマ「白線流し」ではない

違うドラマのタイアップの依頼で

書いた曲でしたが、

結局採用されず、

リリース当時はそれほど

ヒットしてなかったんですね。

採用しなかったドラマ

絶対そのあと後悔してそう…

何かは知らないけど。。

 

しかし、リリースから2年後の1996年に

フジテレビ系ドラマ「白線流し」の

主題歌として起用されると、

スピッツ史上初のオリコン1位、

そして見事ミリオンセラーとなりました。

 

今やドラマのイメージから

卒業ソングの定番、

また最近では合唱曲としても

有名になったようですが、

実はリリースも4月で、

歌詞も入学式をイメージしてたり

するんです。

 

そんないろんなズレから

思わぬ大ヒットとなったこの曲も

聞いていきましょう。

 

アルバムのコンセプトともなる、

ポップ路線を残しつつも

シンプルな音が

究極に表現されていると感じられる、

ギターの三輪テツヤさんの

アルペジオが印象的な、

落ち着いたイントロ。

 

歌詞は

先述の♪スパイダー 同様、

よくよく見るとゾッとする、みたいな

スピッツワールドが広がっています。

 

「幼い微熱を下げられないまま

神様の影を恐れて」

「隠したナイフが似合わない僕を

おどけた歌でなぐさめた」

 

全体的に病っ気というか

「死」が透いて見えるような雰囲気を

醸し出していますが。

 

「色褪せながらひび割れながら

輝くすべを求めて」

 

幼い微熱を下げられないのは、

君が割と死が近い病気をしてるから、

というのが私の中の解釈です。

見舞う僕は、

いっそ自分が殺してあげた方が

楽になるんではと

似合わないナイフを持ち込みますが、

おどけた歌で逆に慰められてしまいます。

 

そんな

少し悲しいけれど、

それでも一緒にいられる時間は愛しく、

二人の日々は色褪せたりひび割れながらも

輝く術を求めていたのです。

 

「君と出会った奇跡がこの胸にあふれてる」

「きっと今は自由に空も飛べるはず

 

超有名なこのフレーズ、

実はデモ音源の時点では少し違ったんです。

 

「めざめ」と題された

空も飛べるはず の原型となった曲では

「君と出会った痛みがこの胸にあふれてる」

だったんですね。

 

ぶっちゃけ

「奇跡」より「痛み」の方が

サイコ感というか、

逆に君に対する心情を

表現していたのでは、

とも思いますが、

この曲に関しては「奇跡」なんで

そっちに沿っていきます。

 

病と闘いながらも、

輝く未来を夢見ていましたが、

「きっと今は自由に空も飛べるはず

おそらく亡くなってしまったのでしょう。

 

そんな君を、

高くて青く澄んだ空に向かって、

今は何の不自由もなく

苦しみからも解き放たれて

自由に飛んでいけるだろうと

想っているのです。

 

「夢を濡らした涙が海原へ流れたら

ずっとそばで笑っていてほしい」

 

天に召された君が

生前叶えられなかった

僕との夢を想って流した涙が、

この世界での海原まで

流れてきたら、

その時は僕の心の中で

ずっと寄り添って笑っていてほしいと

願います。

 

いつか治ると励ましていたものの、

本人も自覚するほど死に近かった状態で

「見え透いた嘘」であった言葉は、

「満月の夜に破いた」。

 

君の「はかなく揺れる髪のにおいで」、

僕は「深い眠りから覚めて」、

君の死を受け入れていく、という様子が

描かれていると感じられました。

 

「ゴミできらめく世界が僕たちを拒んでも」

も、元の「めざめ」では

「やがて着替えた季節が僕たちを包んだら」

と、

真逆の爽やかな感じだったり

したんですが。

 

一般的な目線が、

大切な人を亡くした人、

可哀想な人として

妙な遠慮をしてくる世間を

きらめくゴミに例え、

そんな人たちにとっては

大切な人の死を

簡単に受け入れている僕らは

そこから拒まれる存在だったとしても、

君だけは

僕の心の中でいつまでも

笑って味方でいてほしいと

ここでは願います。

 

PVも廃病院での撮影、

出てくる人も看護師だったり

メンバーの衣装も白で統一されたりと

世界観は本当に死を意識するものと

なっています。

 

余談ですが、

PVの中で、ラストにメンバー4人が

横並びになるシーンがあるのですが、

その奥の廃病院の窓付近で

白い影が一瞬動いているのが映っていて、

見た人の中では心霊映像としても

噂されていますが、果たして…

 

PVも含めて実はゾッとする曲ですが、

現在でもスピッツの代表曲として

いろんなところで

起用されたり流れたりするのは

やっぱり嬉しいですね。

 

 

4.迷子の兵隊

 

全体的にエフェクトがかかったような、

それでもどこか明るい音が印象的。

 

前向きな冒険物語のような雰囲気ですが、

舞台は暗闇だったりする、

ちょっと変わった曲。

 

「迷子の兵隊」は

「黒い旗」を「いばらの中で」振り、

「砂金のようなうずを蹴散らしながら」、

「サソリのような言葉を秘めて」

「闇を切り裂く稲妻」と

なろうとしています。

 

暗闇を冒険する兵隊は、

いろんな感情を持ちつつも

この暗闇を照らして変える稲妻となるべく

今日も旅を続けています。

 

それは、現実に例えると

理不尽な事の積み重ねな暗い日々も、

いろいろ思ったり流されたりしながらも

どうにか自分が

この嫌な暗闇を変えられる稲妻に

なれないか、

みたいな感じですかね。

 

「撃ち落とせる雲に同情しては」

「当たりのないクジを引き続け」る、

つまらないけれど

なんとなく流されてしまいがちな

ありふれた日々の中でも、

「しがみつく鳥」

=自分の中のわずかなプライドのようなもの

を探して、

今日も終わりなき旅を続けていくのです。

 

「流れるひとしずく」は「かき消され」、

「逃げ込むのはいつも細胞の中」。

世の理不尽を抱え込み、

自分を責める時もありますが、

「内気な笑顔もはがれて」いき、

やがて「痩せた火の玉」となります。

 

そんな痩せっぽちな火の玉は、

それでもわずかな光となるよう、

黒い旗=決意 を奮い立たせ、

暗闇の中でわずかなプライドを探しながら

理不尽な世界を変えるために

終わりなき旅をしています。

 

ここでの「迷子の兵隊」とは、

理不尽に流されてしまいがちだけど

実はちゃんと自分の意思は持ってて、

でも現状を変えられない人の事を

指しているのだと感じられました。

 

 

5.恋は夕暮れ

 

オーケストラ、とまではいかないものの、

トランペットなんかも挟んで

雄大で美しく、でも少し切ない

夕暮れ時の様子を音で表現しています。

 

夕暮れ時のような

美しくて少し切ない恋とは

一体どういうものなのでしょうか。

 

は」…

「昨日よりも美しい夕暮れ」

「届かない悲しいテレパシー」

「咲き急ぐ桜」

「焼きついて離れない瞳」

 

恋すると、

相手が昨日よりも美しく見えて、

でもこの思いはなかなか届かず、

華やかな気持ちだけが咲き急ぎ、

瞳がずっと心に焼き付いてしまいます。

 

まさに

片想いのモヤモヤウズウズした感じが

よくもまぁ

こんだけ例えとして出てくるなと

思いますが。

 

「喋々になる 君のいたずらで」と

あるように、

片想いの相手にはどうやら

少し茶化されていて、

自分の恋心には

気付いてもらえていないようです。

 

「ただ朱く かたちなき夢を

染めていくような夕暮れ」

 

恋=夕暮れ なので

ここでの恋とはつまり、

「かたちなき夢」

=叶うことのない片想い だけど、

君を見るたびに

ただ夕暮れのように

朱く染まっていってしまう

という描写になります。

 

なんか甘酸っぱいような切ないような。

 

さらに「は」、

「迷わずに飲む不幸の薬」

「ささやかな悪魔への祈り」

と例えられるように、

心にも体にも毒である、

異常な状態とも取れます。

 

頭の中で「こだまする君の囁き」もまた、

僕をただ

朱く染めていくものになってしまいます。

 

そんな恋に

「武器を捨てて僕はここにいる」と

降参状態。

 

「くすぐる風に運ばれるまま

ながめた夕暮れ」

 

よく分からない気持ちのまま、

ただ君によって

心がくすぐったくて切なくなるまま、

今日も自分の恋心のように

朱く美しく染まっている夕暮れを

一人眺めているのです。

 

恋とは何なのか、

片想いのときめきと切なさを

美しくも切なくて、でも壮大な音で

思い出させてくれるような曲です。

 

 

6.不死身のビーナス

 

少し前までは

ライブの定番曲として演奏されていた曲。

 

歌詞の「ネズミの街」を

ライブの開催地に変更して歌ってくれる

というサービス精神も

感じられる曲なので

結構人気は高いと思うんですが、

後々にも盛り上がって

かつ変更できそうな地名が入った曲とか

出来ちゃったんで、

最近は少ないかもしれません。

 

仮タイトルは「無敵のビーナス」。

あんまり変わってませんが、

とにかく強そうなタイトルの

「不死身のビーナス」、

聞いていきましょう。

 

音もはじめから

尖ったバリバリのロックサウンドで、

気分を一気に盛り上げます。

 

「雨降り朝までもう絶対泣かないで」

「知らないどこかへ行っちゃうその前に」

「二人で取り出そう 恥ずかしい物語を」

「ひたすら背中たたかれてバカな幸せ」

 

好き合っているカップルが一晩を過ごし、

それぞれの

恥ずかしい物語なんかも持ち合わせて、

二人はバカみたいだけど幸せな日々を

送っているようです。

 

「最低の君を忘れない」

 

スピッツ

基本的にひねくれてるんで、

最低とかバカとかは

たぶん誉め言葉です。

それくらいフランクにというか、

相性が良かったみたいな

相手にしか

たぶんここまで言わないと思います。

皮肉も込めての

「最低の(最高の)君」。

 

君から貰った「おもちゃの指輪も

外さない」。

不器用だけど幸せだった、

そんなカップルを想像できます。

 

そんな最低で最高な

「不死身のビーナス」は

「いつでも傷だらけ」だったのです。

 

最低の君こと不死身のビーナスとは

「疲れた目と目でいっぱい混ぜ合って」、

「矢印通りに本気で抱き合っ」たりもした。

 

そんな君と

「さよなら」します。

 

この話を踏まえると、

冒頭の、

知らないどこかへ行ってしまう

雨降りの朝まで

もう絶対泣かないで、というのは

朝を迎えてお別れする、

最後の一晩であったと読み取れます。

 

そんな最後の一晩も含めた

幸せな日々は

「生ぬるい缶ビール」と

共に飲み干し、

あくびが終わる勢いで、

次のドアを蹴飛ばします。

 

「悲しい噂」もあったけれど、

それでも自分にとっては

「最低で最高な君」だから、

そんな噂は信じず、

今日も風まかせで前を向いて

それぞれ歩いていきます。

 

別れてからも割と良好な関係なのは

いいですね。

別れた途端に元恋人の悪口言うヤツとか

マジで何なんですかね(謎の逆ギレ)。

 

中盤の、

「最低の君を忘れない

おもちゃの指輪も外さない

不死身のビーナス いつでも傷だらけ」の

フレーズで、演奏が止まり

ボーカルのみになるところは

本当に鳥肌が立ちます。

本当に。

 

「ネズミの街」=灰色がかった街並を

「さびしい目で遠くを見てた」

「不死身のビーナス」は、

明日も風まかせに過ごしていきます。

 

寂しげで、

でもバカみたいに幸せな日々を

一緒に過ごした

「不死身のビーナス」は、

「最低の君」として

ずっと忘れない存在として

あり続けるのです。

 

少し切ないお別れも、

バリバリロックに乗せる事で

ふっきれたように見せつつも、

どこかでずっと

記憶に留めておきたいという

気持ちが、なんかいい意味で

ありのままの状態で伝わります。

 

 

7.ラズベリー

 

各アルバムに一曲はある迷曲シリーズ。

 

歌詞がねぇ、

全体的に変態チックなんですよね。

まぁここまで見てみたら

毎回やんけとも思いますが、

この曲は割と

ストレートな変態という感じ。

 

女性に対する妄想というか、

理想が詰め込まれてる変態ソング、

聞いていきましょうか…。

 

テンポの良いギターフレーズが

印象的なイントロから始まるこの曲の

歌い出しは、

「泥まみれの汗まみれの短いスカートが

未開の地平まで僕を戻す」。

 

泥や汗で汚された

君の短いスカートを見て、

僕は「未開の地平」…未体験(性的な)

まで戻されていくような感覚になります。

つまり興奮してるって事ですかね。

 

「あきらめてた歓びがもう目の前 急いでよ」

「駆けだしたピンクは魔女の印」

 

そんな汚れた短いスカートを武器に、

興奮してる僕に

挑発というか

誘っているような君。

 

僕ももしかしたら、

そんな君と

そういう関係になれるかもしれないと

「歓び」を前に、

「魔女の印」を追いかけます。

 

ピンクとか魔女という単語も

なんか色気を感じるものなんですよねぇ…

 

「チュチュ 君の愛を僕は追いかけるんだ」

「どんなに傷ついてもいいから」

「もっと切り刻んで もっと弄んで

この世の果ての花火」

 

出ました、ドM発言。

 

挑発に乗り、

君からの愛を求めて

追いかける僕は、

どんなに君に傷ついてもいいから、

もっと僕を弄んでと願います。

 

そしてこの世の最後には

君と結ばれて花火を打ち上げるのです。

 

そんな君の愛が全て、な僕は

周りから

「おかしいよと言われてもいい」から、

「ただ君のヌードを

ちゃんと見るまでは僕は死ねない」と

公言します。

 

そんな歪んだような変態的愛に対して、

実は自分自身も

「しょいこんでる間違いなら

うすうす気づいてる」。

 

ただ、

どんなに周りからも君からも

バカにされてもいいから、

ただひとつ、

君からの愛だけを求めて

「でこぼこのゲームが今始まる」。

 

僅かな隙間の「五円玉の向こうから」、

「こっちへおいでと」誘ってくる誘惑に

僕は今日も向かっていくのです。

 

「君の前で僕はこぼれそうさ

ずっとワクの外へ すぐにも」

 

たとえ世間から外れている愛情で、

君の前でさえ

ワクからこぼれた存在になっても、

僕は君を「もっと覗きこんで 」、

君に「もっと潜りこんで」、

その様子はまるで

「ねじれた味のラズベリー」だと

表現します。

 

どんなに嫌われても、

僕だけは君の愛に

甘酸っぱい気持ちになっているのです。

 

ラズベリー」とはつまり、

童貞的な考えの愛情を

意味しているんだと感じられました。

 

後の「チェリー」にも通ずるような

憧れも含めた愛を

変態的に表現しています。

 

 

8.ヘチマの花

 

…えーっと、

基本的にスピッツの曲で

これは好きじゃないな…というのは

ないんですが、

なぜかこの曲だけは

個人的にはあんまり…

なんですよね…。

 

ジャズっぽいゆったりしたメロディは

いいと思うんですよ。

 

うーん…

強いて言うなら、

ほぼ全編で

女性のコーラスが入るんですが、

コーラスというより

もうデュエットくらいの

声量なんで、

むしろボーカルの草野さんの声が

負けちゃってるんじゃくらいに

感じてしまうんですよね…

 

個人的には

スピッツの曲はやっぱり

スピッツメインで聞きたい

というのはあるので、

ちょっと女声が強すぎると

あんまり受け付けないのかなと

個人的に分析してみたり。

 

…とりあえず歌詞見てみましょう。

 

「二人の夢 ヘチマの花 見つめるだけで

悲しいことなど 忘れそうになる」

 

ヘチマの花といえば、

小さくて黄色い花ですね。

 

そんなヘチマの花を「二人の夢」と喩え、

二人で同じ夢を見ている時間だけは、

嫌な事や悲しい事も忘れられるという

大切な時間のようです。

 

そんな「恥じらうようにたたずむ」

ヘチマの花…二人の夢を

「咲かせる日まで さよなら言わない

何があっても」と

誓います。

 

悲しい事があっても、

その「さびしい涙目に映るのは」、

二人の夢である「あたたかな愛の花」。

 

二人の夢とは、

ただ二人で築き上げる愛

そのものだったのです。

 

その夢を叶えるため、

「いつの時も二人で」、

「深くミルク色に煙る 街を 裸足で歩いて」

いきます。

 

「飛べない鳥だと気付かされても」、

「やましい呟きの最後にも」、

二人が目指しているのは

「あたたかな愛の花」、

二人だけの確かな愛なのです。

 

そんな芯の通った深い愛を

求めてる歌詞は

とてもいいんですけどねぇ…

 

あんまり好きじゃないからか、

解説がいつになく雑で申し訳ないです。。

 

 

9.ベビーフェイス

 

丁寧なギターフレーズから、

ドラムのリズムが入ると

ポップな曲調になります。

 

「ベビーフェイス」…子供の顔、

まぁ童顔的な意味でしょうか。

 

そのベビーフェイスにいきなり

「Bye Bye ベビーフェイス」です。

 

英語使うの珍しい。。

…いやそうではなく。

 

「涙をふいて生まれ変わるよ」

今日から明日へ

かすかな炎を絶やさないでいて」

 

この時点で、

もしかしたら

このタイトルのベビーフェイスは

ここにいない人の事なのではと

想像します。

 

「華やかなパレードが遠くなる日には

ありのままの世界に包まれているだろう」

 

華やかで幸せな日々は過去の話で、

日に日に遠ざかっていく頃には、

ありのままの、

本当の世界が広がっているといいます。

 

ありのままの世界とは、

おそらく華やかではないけれど

普段の生活の中の事を

いっているのではと思います。

 

そんな世界も

「こわがらないで 歩き出せそっと」と

呼び掛けます。

 

「星になったあいつも空から見てる」。

 

星になったあいつとは、

タイトルのベビーフェイスなのでしょう。

空から見てる、星になった

というフレーズから、

ビーフェイスのあいつは

亡くなっている人だという事が

想像できます。

 

「隠し事のすべてに声を与えたら

ざらついた優しさに気づくはずだよ」

 

ビーフェイスのあいつは、

きっと優しい人だったのでしょう。

故に

周りを傷つけないための隠し事があったと

思われます。

 

そんな隠し事にも優しさが溢れていて、

「真昼の夢」のように

儚いものだったのでしょう。

それを壊さないように、

星になったベビーフェイスのあいつも

見守っているから、

「かすかな炎」…僅かな希望 を

絶やさないように、

前を向いて歩いていこうと誓います。

 

「愚かになれもっと」

 

スピッツの歌詞には

よく「愚か」という単語やフレーズが

出てきますが、

どれも前向きな言葉として

使われている事が多いように感じます。

 

ここでは、

疑いもせず、まっすぐ正直になれ

という意味が込められていると

感じられました。

 

大切な人がいなくなっても、

その人が残してくれた優しさと

僅かな希望を信じて、

今日も生きていこう、という

強い気持ちが

この曲に込められているのです。

 

 

10.青い車

https://youtu.be/5K8ZuLYG0yo

 

8thシングル。

 

空も飛べるはず」と

同時期にレコーディングされた曲です。

 

本来、

もっとゆったりしたリズムに

なる予定が、

レコーディング当日、

草野さんが遅刻し、

メンバーが勝手にこのリズムで

先に収録してしまったので、

そのままになった

というエピソードがあります。

しかし、

いざこれになってみたら、

こちらの方が

満足するものだったようで

なんというか良かったです。

 

爽やかそうなメロディとタイトルが

マッチしていると思わせるイントロに

騙されそうですが、

歌詞を見るとこれもまた

よくよく見るとゾッとするような

まさにスピッツワールド全開。

 

「冷えた僕の手が君の首筋に

噛みついて弾けた朝」

 

歌い出しから、

想像しただけで

えっこれ…殺してる…??となります。

 

「冷えた僕の手」というのが、

また感情を一言で表しているなと

思うんですが、

冷えた=冷静に、感情などなく、みたいな。

 

そんな冷静な感情な手が

君の首筋に噛みついた。

そして弾けた。

 

朝というのがまた爽やかな印象を

持たせますが、

むしろ君の首筋に噛みついた、

君を殺した事による

爽快感みたいなものを

感じられます。

 

一文でこんな恐怖な歌詞ありますか??

 

「永遠に続くような掟に飽きたら

シャツを着替えて出かけよう」

 

永遠に続くような掟、は

恋人…首筋に噛みつかれた「君」との

約束事みたいなものでしょうか。

 

そんなのが永遠に続くと思うと

「僕」は飽きてしまい、

君に手をかけてしまうんですね。

 

「シャツを着替えて」は、

一瞬、よくミステリー系のドラマとか

見てると

証拠隠蔽のために着替える

とかは聞くので

最初はそういうイメージでしたが、

今はなんとなく、

これまでの掟に従っていた自分が

変わるために

着ていたものを替える、

という意味合いがあるのかな

と思っています。

 

「君の青い車で海に行こう

おいてきた何かを見に行こう

もう何も恐れないよ」

 

タイトルの「青い車」は

自分のではなく君のだったんですね。

なぜ自分のではないのでしょうか。

 

冒頭で君を殺していました。

死んだ君を乗せて、

君の車で海に向かいます。

 

きっと君の車を通じた思い出なんかも

あるかと思いますが、

そんな思い出も一緒に

断ち切ろうとしているのではないのかなと

思います。

 

おいてきた何か、は

一緒に海に行っていた頃の

楽しかった思い出とか記憶みたいな

ものでしょうか。

 

「そして輪廻の果てへ飛び降りよう

終わりなき夢に落ちて行こう

今変わっていくよ」

 

君と、君との思い出を乗せた青い車

輪廻の果てへ飛び降りていきます。

輪廻の果て、は まさに

死の世界ですね。

車ごと、なんなら自分もそのまま

海に向かって飛び降りてしまう。

 

終わりなき夢…

永遠に君といられる という夢が

一緒に死ぬ事で永遠のものになります。

 

すると先程の

「永遠に続くような掟」は、

よくある恋人同士は

こういう事をするよね、みたいな

世間的な常識みたいなもの

だったのでしょうか。

 

そんなものに飽きてしまう、

というのは、

そんな常識的な付き合い方では

満足しなくて、

もっと狂った方向で

君と一緒になりたいと

思っていたのでしょう。

 

君を殺して自分も死に、

君と永遠の愛を誓う。

心中という形で。

 

 

「生きるということは

木々も水も火も同じことだと気づいたよ」

 

これまで描かれた死とは対称的に、

今度は生について描かれていきます。

 

生きることが、

木々や水や火と同じこと。

それほどに自然な形で息をしている

という事に気がついたとあります。

 

「愛で汚されたちゃちな飾りほど

美しく見える光」

 

ただのちゃちな飾りものでも

愛というものが入ってしまったら

特別な宝物のように感じてしまう。

好きな人から貰ったものなら、

お金をかけていなくても

愛情がこもっていたら嬉しいものです。

 

そんな物も思い出のひとつとして、

君と、思い出の詰まった車で

心中していきます。

 

「つまらない宝物を眺めよう

偽物のかけらにキスしよう」

 

高価ではない、ただ愛がこもった

ちゃちなものを宝物とし、

物と共にくれた君自身も

これからも愛していくという意味も込めて

キスをします。

 

「潮のにおいがしみこんだ

真夏の風を吸い込めば

心の落書きも踊り出すかもね」

 

潮のにおいがしみこんだ真夏の風、は

まさに海に辿り着いた時に感じた

風でしょう。

急に爽やかさ出してきます。

 

そんな風を吸い込んだら、

心の落書き…邪心のようなものも

踊り出すほどに純粋になれる

という事でしょうか。

 

心中した先には

純粋な気持ちで

君と永遠にいられる世界があった

という結末です。

 

結果として、

僕自身はハッピーエンド

みたいな雰囲気

出してきてますが、

僕以外は誰も幸せになってませんよね。。

 

そんな狂った愛情を、

爽やかなバンドサウンドで届ける、

初期を彷彿とさせる曲です。

 

ちなみに、

これと「空も飛べるはず」では

プロデューサー、笹路さんの都合が合わず

別の方のプロデュースなのですが、

ミックス(音を調節する)で

外国の方に頼んだら

コレジャナイ感が出てしまい、

メンバー全員で話し合って断る決断をした

というエピソートがあります。

そこで改めて

メンバーとの信頼感や結束感が深まったと

振り返っているので、

まさにこの曲がなかったら

今も続くスピッツはなかった、と言っても

過言ではないというくらい

実は重要な曲だったりします。

 

 

 

12.サンシャイン

 

壮大な空を飛ぶ方法を謳った今作の

締め括りとなる曲は、

サンシャイン…日光と言いながらも

どこか夕暮れをイメージさせる

イントロでした。

 

美しくも少し切ない、

そんな柔らかな感情を感じられる

曲に乗った歌詞もまた

柔らかくて優しく、そして

儚さも感じるものです。

 

「困らせたのは君のこと

なぜかまぶしく思えてさ」

 

今まで意識してなかったものの、

なぜかまぶしく思えてしまい、

僕を困らせる存在に。

片想いの恋が始まった瞬間を描いています。

 

「すりガラスの窓をあけた時に

よみがえる埃の粒たちを

動かずに見ていたい」

 

すりガラスの窓…

視界がぼやけている状態でも、

目を覚ました時には

よみがえる埃の粒たち…

そんな君に恋した思い出を

ここでまた見たいと願います。

 

「サンシャイン 白い道はどこまでも続くよ」

「サンシャイン 寒い都会に降りても

変わらず夏の花のままでいて」

 

サンシャインとは、

まさに僕を困らせた、

まぶしく思えた君の事でしょう。

 

白い道、寒い都会は

温もりのない、寂しささえ感じる街と

冬のようになった心情を重ねていると

感じました。

 

そんな状態になってしまっても、

まぶしい君は

僕の中で夏の花のままでいてほしいと

思います。

 

思い出の中で今なお輝く君は

一体どこにいるのでしょうか。

 

「こげた臭いに包まれた

大きなバスで君は行く」

 

なんとなくこの一文で

火葬をイメージしました。

 

「焦げた臭いに包まれた」は

火葬されている様子、

「大きなバス」は

棺のイメージです。

 

どうやら、

恋したサンシャインのような君は

亡くなってしまったようです。

 

「許された季節が終わる前に

散らばる思い出をはじめから

残らず組み立てたい」

 

君をまだ弔って

悲しみに包まれている

この期間に、

生前の君との思い出を

また一から集めていって

自分の中で組み立てていきたいと

願います。

 

「サンシャイン めぐる風によろけても

変わらず夏の花のままでいて」

 

この先、

君のいなくなった世界で

生きていく僕が、

何かに迷ったり

つまづいてしまっても、

君だけは変わらず

僕の思い出の中で

眩しく輝く存在でいてほしい

という思いが込められます。

 

君を忘れられないけれど、

悲しみと共に生きていく目的にも

なっているようです。

 

切なさと共に

優しさを感じられる世界観を

より引き立てるかのような、

間奏のドラムが

とても良きです。

 

 

《まとめ》

 

以上で

5thアルバム「空の飛び方」を

聞き終わりました。

 

バンドサウンド

シンプルかつ洗練されたものに

なったことにより、

初期の

性や死の世界観を追求していても、

どこか爽やかで優しい雰囲気を

感じられました。

 

初期からのスピッツ好きさんにも

爽やかで優しいという、

世間一般のスピッツイメージが

好きという方にも

オススメできる一枚です。

 

今作では

初めてリリース時に

チャートイン(14位)した

という事もあり、

努力が実を結んだと

メンバーたちも喜び、

気に入っている作品になりました。

 

絶好調な今作に

皆が満足している状態です。

 

爆発的に売れなくても

これくらいの状態が

ずっと続けばいいな、

なんて呑気な事さえ思っていますが、

次回思わぬ方向に…!?

 

 

以上、

桃亀改めandでした。