スピッツアルバム研究2「名前をつけてやる」

こんにちは。桃亀改めandです。

 

メジャーデビュー記念日という事で、

スピッツのアルバムを聞いて

個人的な解釈を書き起こしてみよう!

って事をやってます。

 

前回スピッツを聞いて書いたものは

こちらから。

https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2019/03/25/100001

 

今回は、

2ndアルバム「名前をつけてやる」

を聞いていきたいと思います。

 

1stアルバム「スピッツ」をリリースし

メジャーデビューしたスピッツは、

それから僅か8ヶ月後の1991年11月25日

2ndアルバム「名前をつけてやる」

をリリースしました。

 

それではさっそく聞いていきましょう。

 

名前をつけてやる
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収録曲

  1. ウサギのバイク
  2. 日曜日
  3. 名前をつけてやる
  4. 鈴虫を飼う
  5. ミーコとギター
  6. プール
  7. 胸に咲いた黄色い花
  8. 待ちあわせ
  9. あわ
  10. 恋のうた
  11. 魔女旅に出る

 

1.ウサギのバイク

2ndアルバムは個人的に

めちゃくちゃ好きなんですよ。

いや、他のももちろん好きなんですが、

いわゆる名盤と呼ばれるものは

1曲目で掴まれるものがあると感じます。

その代表例がこの曲。

 

ギターの三輪テツヤさんの特徴的なプレイ、

アルペジオの美しいイントロから始まり、

1番はなんと歌詞なし。

〈ラララ…〉や〈TuTuTu…〉といった

スキャットのみで歌っています。

その声もまた美しい。

スピッツのバンドとしての実力も

垣間見える1曲です。

 

2番から始まる歌詞でも、

「優しいあの娘」と二人、

「今にも壊れそうな ウサギのバイク」で

「喜びにあふれながら」駆け抜けていく

その様子は、

1stアルバムの頃から変わらず

二人だけの世界で幸せになっている

ようです。

 

「脈拍のおかしなリズム」

と歌われているように、

ドラムのリズムも

なんだか軽快で

よりわくわくするような

世界観を生み出しているように

感じます。

 

ちなみに、

モデルになったかは知りませんが

自動車会社のスバルが

1945年頃製造販売した

ラビットスクーター

というものがあり、

これが「ウサギのバイク」だとしたら

なんだかとっても可愛らしい描写に

なるなと思いました。

 

2.日曜日

1曲目の「ウサギのバイク」からの流れが

めちゃくちゃ好きです。

ギターのイントロからうわーっと

テンションが上がります。

 

曲調はまさにロック

「日曜日」なんて

お休みでのんびりする

またはどこかに遊びに行く

みたいなイメージがあるこの単語を

ロックにしちゃうスピッツさすが。

 

歌詞は、一見

二人でお出かけしようよ

みたいな優しい雰囲気です。

 

それではここで、

前回もあげた言葉を思い出してみましょう。

 

「曲のテーマはセックスか死」

 

1stで散々ひねくれたスピッツの事です。

たぶんこれも何らかに

当てはまると思います。

 

この曲は、

人によってどっちにも取れると思いますが、

私はどちらかと言うと

の方なんじゃないのかな、

と思いました。

 

二人は「戦車」に乗っています。

絶対とは言いませんが、

私の中では

戦車=戦争=死

のイメージがどうしてもあります。

 

そんな戦車に乗って二人は

「幻の森へ行く」。

そして

「このまま淡い記憶の花」

を探しているのです。

 

「幻の森」というのがまぁ、

死の舞台なのか

はたまた死後の世界(天国)なのかは

分かりませんが、

二人一緒に夢を見るように

幸せな状態で

一緒に死んでいき、

死後の世界でもなお

甘い記憶の中で二人はいる

といったイメージでした。

 

甘い蜜を吸っている「蜂」のように

「淡い記憶の花」は

きっと、二人の楽しい記憶の事を

指しているのでは、と感じました。

 

中盤で、女性の笑い声が

挟まっています。

その笑い声というのが、

微笑みというよりも

大袈裟な笑い声という感じで

なんだか不気味さを醸し出しています。

 

「レモンの香る湖に飛び込んだ君の背中」

だったり、

「骨の足で駆けおりて」いる描写は

まさに幻の森=死の世界へ

向かっているような感じがしました。

 

スピッツが描く死は

ただ悲しかったり残酷

というよりも

少し夢見がちで

幸せなイメージがあります。

 

3.名前をつけてやる

このアルバムの表題曲です。

 

このアルバムのタイトルに

ジャケットは猫の写真という事で、

最初のイメージは、

夏目漱石我輩は猫であるでした。

 

有名ですが、出だしは

我輩は猫である名前はまだない。

 

そう、名前がないんです。

だからそんな猫に

名前をつけてやる と呼び掛けている

という事だと思っていました。

 

ところが、表題曲のイメージは

少し違って、

自分の中のモヤモヤした感情、

言葉では言い表せない気持ちに

俺が勝手に名前をつけてやる!

というイキがった少年

という感じ。

 

「似た者同士が出会い」、

最初は友達感覚で遊んでいた子が

いたのでしょう。

ところが次第に、

友達以上の感覚が湧いてきてしまった。

 

思春期の男の子には

これがどんな感情なのかよく分からない。

だけど夜になると悶々としてしまう。

無意識に身体も「むき出しのでっぱり」

になる。

(意味合いはあえて割愛しますが…)

 

この感情を表す明確な名前が見つからない。

だから本気で考えて、オリジナルの

名前をつけてやる」事にしたのです。

 

そのうちに相手の

「ふくらんだシャツのボタンを

ひきちぎるスキ」なんかも

探し始めるほど、

その感情は

1人の男の感覚になっているようですが。

 

全体的に

思春期の男の子の性の目覚め

みたいなものを感じました。

 

4.鈴虫を飼う

この曲の作曲はギターの三輪テツヤさんが

担当しています。

やっぱりなんか、ちょっともの静かで

上品な音。

 

「天使から10個預かって」の天使 とは

きっと好きな子の事で、

その子は自分に鈴虫を10匹預けて

どこかへ行ってしまったのでしょう。

 

君のいない景色は、

窓の外も色がなくなってしまった。

「もう一度会いたいな」と

ぼんやり考える夜には

預かった鈴虫が寂しく鳴きます。

 

寂しい日々は続き、

いつもの乗り換えの駅でさえ

好きな子の事を思い出したり。

 

ちなみに、

ここでの「乗り換えする駅」は

マサムネさんが学生の頃よく利用していた

国分寺駅

がモデルになっているそうです。

 

しかし、

人間というものは

何に対しても

月日が経つ事で

慣れていくものなんです。

 

「慣らされていく日々に

だらしなく笑う俺もいて」、

それでも

「ゆめうつつ」な「鈴虫の夜」は

続いていくのです。

 

テツヤさんが作曲した

上品な音と相まって

より寂しい夜の様子を

演出しているように感じます。

 

合間に鳴り響く

ギターのシャララという音は

まるで鈴虫が

美しく鳴いているようにも

聞こえました。

 

5.ミーコとギター

まず、「ミーコ」とは

一体誰の事でしょう。

 

ここでの「ミーコ」は

架空の女の子の名前だそうですが、

好きな子の事を指していると

仮定します。

 

自分の目線で

ミーコの話をしているようですが、

自分とミーコが結ばれている

という関係ではないようです。

 

「ミーコの彼はミーコの彼じゃない」、

「誰も知らない」

「いつかは二人で幸せになりたかった」。

ミーコの彼は誰で、

誰と幸せになりたかったのでしょうか。

 

後に

「パパとミーコ」と出てくる事から

おそらく

ミーコは自分の父親

好きになってしまったのでは

ないでしょうか。

 

血が繋がっているのかは

分かりませんが、

親子という関係。

いくら好きという気持ちが大きくても、

恋人の関係になる事はできません。

 

そんなミーコは

叶うはずのない恋心を

音楽に昇華していきます。

 

そして、そんなミーコの

「恋のうた」を聞いている

という状況なのでしょう。

 

本当は自分の事を好きになってくれたら

ミーコを幸せにできるのになぁ、なんて

考えながら。

 

それでもミーコの気持ちは

変わらないようです。

 

「憧れるだけで憧れになれなかった」。

登場人物全員が片想いの

幸せになれない

切ない恋愛模様

描かれていると感じました。

 

それでもミーコは

今日も使い古した

「手垢まみれのギター」を持って、

ミーコのありのままの気持ち、

「裸の世界」を

歌い続けているのです。

 

実際、ギターのリズムや歪みが

とても気持ちがいい曲です。

 

6.プール

涼しげなイントロから始まり、

夏の気だるげな様子が

これから始まるという

予感がします。

 

「君に会えた 夏蜘蛛になった」

夏の日に好きな人に会えて

自分の世界が輝き出した

というようなイメージでした。

 

些細な事でも嬉しくて、

「くるくるにからまってふざけた」り

して仲良くイチャついたりします。

 

「独りを忘れた」、

二人でいる幸せには

大きなバタ足(つまづきのイメージ)や

白い花(何か不吉なイメージ)が

あったりもします。

スピッツの世界は

何か

そう簡単には幸せに

なれないような気がしてきて

いますが、私だけでしょうか。

 

中盤には

これまでのリズムとは少し変わって

声だけが漂っているような

部分があります。

まるで、夢を見るように

水中に漂っているよう

と感じました。

 

もしかしたら、

これまでの幸せな様子は

全て夢の中での

出来事だったのかも、とも

考えさせられます。

 

この曲も含めですが、

スピッツをテーマにした曲は

もれなく名曲

というジンクスがあるとかないとか。

 

スピッツは本当に

の表現が素晴らしいんです。

それは、

透明感のあるボーカルや

美しく鳴り響くアルペジオなどが

溶けるように馴染んでいくからだと

感じています。

そこに、

低めで激しい低音や

状況に合った

的確なリズムがまた絶妙に

マッチして

より、世界観を深く

心地の良いものにしているのが

スピッツである

と思います。

 

水が連想される曲では

特にスピッツの奏でる

にも

注目してみてください。

 

7.胸に咲いた黄色い花

月の光が差し込む部屋で、

昨日までは「一人遊び」をするくらい

心が「砂漠」になるほど乾ききっていた

僕。

 

そんな砂漠の心に花が咲く

出来事がありました。

 

僕の心に宿った

黄色い花、

つまり君へ恋をした、という事でしょう。

 

先程出てきた「一人遊び」とは

おそらく自慰行為の事

だったんだと思います。

 

ところが君に恋をした事で、

君の鉄の扉(意味深)をこじ開けたら

僕自身も何か変わるかもという

期待を持ちました。

今まで一人でしてきた事を

正式に二人でする事ができた、

もしくはできる状況になった

という事です。

 

ところが、

「もう消えないでね」

「明日になればこの幻も終わる」

と続くように、

もしかしたら正式な恋人というよりも

セフレとかデリヘルとか

とにかく一夜限りの関係であるのかなとも

読み取れます。

「時の淀み 行く手を知り」とあるように

こういった関係でいられるのにも

制限時間があるように感じられます。

 

それでも「乾いて枯れかかった僕の胸」に

咲いた、一輪の花であることには

変わりません。

その僅かな幸せを

存分に味わっている

という風にも感じられます。

 

ちなみに、この曲は

初期のアルバム曲でありながら

とある地方の音楽番組で

ライブで披露された事もあり、

当時はよくスピッツ

黄色い花が贈られたんだとか。

 

スピッツの音楽の路線が

だいぶ定まってきたような

アコースティックで

ポップなメロディである事も

特徴です。

 

8.待ち合わせ

しっかりロックな曲調です。

 

「待ち合わせ」とか

楽しみな事とかワクワクする事を

連想させる単語でも

スピッツにかかれば

ガッツリロックになります。

 

しかも、いきなり

「だけど君は来ない 待ち合わせの星へ

約束した場所へ」

とあります。

 

おそらく君とはもう

お別れしてしまったのでしょう。

しかも、

ちゃんとした言葉もなく、

という感じでしょうか。

 

まだ淡い期待を抱いて

いつもの待ち合わせの場所で

一人、君を待ち続けるも

いつまでもやって来ない、という

状況です。

 

最後のキスをされた頬に

そっと触れたりしてみます。

その描写もなんだか切ない。

 

待っている間に

だんだんと

やっぱり別れてしまったんだと

改めて感じ、

地面に涙を落とし

にじんでいく様を

ただひたすら

じっと見ています。

 

その涙には

きっと、二人の楽しかった

思い出とかも重ねていて、

それがこぼれ落ちていき

地面ににじんでいった、とも取れます。

 

そんな切ない待ち合わせを

スピッツは尖った音で奏でています。

気持ちとは裏腹に

ひねくれているような

表現をする

スピッツ、良きです。

 

9.あわ

各アルバムに1曲はある迷曲。

歌詞がいろいろ物議を醸してます。

 

この曲や、次の恋のうた は

インディーズ時代に制作され、

それまではパンクロックを目指していた

スピッツ

方向性を変えるべく

謡曲のテイストを

ロックに持ち込もうとしていた時期の

ものになります。

 

この曲は

謡曲というよりは

ジャズのテイストに

なっています。

 

曲の感じは、

シャボン玉が漂うような

なんだかふわふわしているという

印象です。

 

物議を醸してる歌詞を見てみましょう。

 

以前、マサムネさんは

丸いものには死、尖っているものにはエロを

イメージすると言っていました。

 

という事は

あわ(シャボン玉)=丸い=死 

を描いたものになるのでしょうか。

 

一番物議を醸してる

「でっかいお尻が大好きだ」

というフレーズが

なんだか妊婦を表してそう。

 

と、いう事は、

「あわになって溶け出した」のは、

妊婦が身籠っている

お腹の中の赤ちゃん

という事でしょうか。

何かしらの原因で

死産となってしまった、みたいな。

 

しかし、自分は

実は「こっそりみんな聞いちゃったよ」

とあるように

原因を知っていたようです。

 

「本当はさかさまだってさ」

逆子だったとか?

必ずではないですが、

逆子だと

そのまま死産となってしまう危険性が

あるようです。

 

妊婦、自分の妻は

「しっかりなんてできない」僕、

つまり

父親になる自覚がイマイチ湧いていない

僕に、

逆子であった事を

言えなかったのではないでしょうか。

まぁ僕は

結局全部聞いていて

知っていたようですけど。

 

そういう事もあり、

優しさから

全てを語ってくれない妻に対して

優しすぎるのもやっぱり

やだなと感じている、

というところでしょうか。

 

産まれた赤ちゃんが

入る予定だったゆりかごも

「わざとがっかりしたふり」を

しているように

揺れています。

 

死産となって

あわのように消えていった

小さな命を

ただぼんやりと想う、

そんな雨の朝の様子が

描かれているように

感じられました。

 

10.恋のうた

先述の通り、

インディーズ時代に制作され、

現在のスピッツの方向性が

定まった、

まさに

ターニングポイントとなった1曲。

 

元々パンクロックを目指していて

そういった曲ばかりをやってきて

いたため、

はじめの頃はリズムなどに

メンバー皆困惑していたようです。

 

歌詞は、

全てのフレーズが

恋をしている人に響くような

まさに恋のうた と

なっています。

響くというよりは

あ~その気持ち分かる~という

共感、でしょうか。

 

片想いの相手は

自分の中でどんどん

大きな存在となっていく。

「きのうよりもあしたよりも

今のきみが恋しい」と思える。

 

「君と出会えたことを僕

ずっと大事にしたいから」

「僕がこの世に生まれて来たわけに

したいから」

そんなに想われていたら惚れますね

ええ。

 

君を想うだけで

「ミルク色の細い道」のような

進みにくい道だって

「ふり返ることなく」歩いていける。

それだけ君の存在が

僕を強くしている、という

感じが分かります。

 

11.魔女旅に出る

3rdシングルとしてリリースされた曲。

 

最近は、

将棋の藤井聡太さんが

この曲が好きだと公言していた事で

注目を集めたりしています。

 

この曲で初めて

プロのアレンジャー(プロデューサー)を

付ける事になります。

そこで、初めてバンド以外の楽器も

外部から導入する事にも挑戦し、

これに手応えを感じて

プロデューサー、長谷川智樹さんと

ミニアルバム

「オーロラになれなかった人のために」

を制作する事になります。

 

外部の楽器を導入する事により

オーケストラのような

壮大な世界観と

なっています。

 

タイトルの通り、

旅に出る、旅立ちの歌

という感じですね。

 

マサムネさんは、

普通に女と書くよりも

魔女 とか“魔”とつく方が

魅力を感じる と

発言しています。

 

つまり、魔女とは

自分の好きな人、彼女だったり

するのではないでしょうか。

 

そんな彼女が旅立つ。

僕はそんな彼女を想い、一人祈る。

彼女の手を離して

旅立ってしまったら

旅立ちの歌を歌ってやると言っています。

 

彼女の前では強がっていますが、

内心寂しいのではないでしょうか。

ツンデレですかね。

 

「ガラスの星が消えても」と

出てくるあたり、

彼女はただ遠くへ旅立った訳ではなく、

きっと亡くなってしまい

天国へ旅立った

という事ではないのかな、と

感じました。

 

君に送る言葉は

「泣かないで、行かなくちゃ」。

悲しんでいるのは

亡くなった彼女の方だったのです。

 

そんな彼女を安心させるように

歌に乗せて

僕は一人、あなたを祈っているから。

「いつでもここにいるからね」

というメッセージを送っています。

 

<まとめ>

2ndアルバム「名前をつけてやる」

聞き終わりました。

 

全体として、

スピッツの音楽の方向性が

定まってきたのが

このあたりかな、という感じです。

 

1stアルバムと合わせたら、

だいたいスピッツ

こういう音楽を

やっていきますよ、というものが

分かるのではないでしょうか。

 

性としての恋、

いつかは消えてしまう儚い命

などを一人で少し強がりながら

歌っていく、

そんな感じが多く見受けられます。

 

これらの、まだ名前のない感情たちに、

これからも

名前をつけてやる

という意味も込めて、

このアルバムのタイトルに

しているのではと

勝手に想像しています。

 

ぜひ1stアルバムと共に

聞いてみてはいかがでしょうか。

 

たぶん1stよりは聞きやすいかと…

 

以上、桃亀改めandでした。