スピッツアルバム研究3「オーロラになれなかった人のために」

こんにちは。桃亀改めandです。

 

メジャーデビュー記念日という事で、

スピッツのアルバムを聞いて

個人的な解釈を交えて書いています。

前回「名前をつけてやる」

聞いて書いたものはこちらから。

https://peachdraw18.hatenablog.com/entry/2019/03/26/101002

 

今回はフルアルバムではなく、

ミニアルバムとして

リリースされた

「オーロラになれなかった人のために」

(以下オーロラ)

を聞いていきたいと思います。

 

前作「名前をつけてやる」にも

収録されている

3rdシングル魔女旅に出る

初めてプロのアレンジャーを付けた結果、

新しい発見などもあり楽しさを感じた

スピッツ

「オーロラ」は、フルアルバムの前に

コンセプトを決めたミニアルバム

試してみよう、という企画だったようです。

 

その時のアレンジャー、長谷川智樹さん

プロデューサーとなり、

スピッツの普段のバンドスタイルではなく

外部のミュージシャンがレコーディングに

参加するという、

スピッツのアルバムの中では

かなり特殊な感じになっています。

 

このアルバムのテーマは

ロックオペラ

確かにオーケストラのようなアレンジが

されていて音はかなり壮大だな、

という印象です。

 

それでは1曲ずつ聞いてみましょう。

 

オーロラになれなかった人のために

1992/04/25 release
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収録曲

  1. 魔法
  2. 田舎の生活
  3. ナイフ
  4. 海ねこ

 

1.魔法

まるでシャララ…と

魔法にかかったかのような

音と

夢の国に来たような

ファンファーレのようにに

壮大なイントロです。

 

さっそくオーケストラのアレンジを

ふんだんに盛り込んだ

メロディは、

このアルバムの世界観へ

聞いている人を

一気に引き込んでいきます。

 

歌詞は、

まだまだ初期のテーマ

「性と死」

を頭に置いた時に

それに沿って考えた結果、

これはどちらとも取れるのではと

思いました。

 

まずの意味として捉えるならば。

 

「サビついた自由と偽物の明日」

というフレーズは、

今まで君に会えなくて

自分の自由=好きな人と一緒にいる事 が

奪われた事により

心がサビついている様子と、

やっと「あの河」を越えて

「君と二人きり」になれたが、

それが明日も続くと考える

愚かな様が「偽物」である、

という事でしょうか。

 

「もう離さない、君がすべて」だと

誓いあいます。

 

ここでの「風」とは

世間だとか周りの反応

みたいなものでしょうか。

「風は冷たい」という事は

周りはあまり賛成していなく

反応が冷たいものだった

という事だと思います。

 

「胸の谷間」というフレーズを

そのまま取れば、

フェチズムというかエロを感じますが、

君を抱き締めた時に見えた胸の谷間に

安心を覚え、

そこから溢れてくるものは

きっと

自分のこれまでの

果てしない闇を切り裂いてくれる

魔法」である

と信じているのです。

 

一方で、の意味で捉えるならば。

 

「サビついた自由」に

嫌気が差して、

「明日」を夢見て死の世界へ向かう。

けれどそれは本当のものではなく

「偽物の明日」。

 

「あの河」というのは

三途の川、のようなイメージです。

 

そんな「あの河」を越えたら、

死の世界でようやく

君と出会えたのです。

 

これまでのサビついた自由から

解放され、本当の自由の喜びを

教えてくれるような君が、

僕の心の闇を切り裂いてくれた

魔法」使いのようだ

と信じて、

そんな君を

「もう離さない」と誓う、

そんなイメージです。

 

両方のパターンでそれぞれ

考えてみましたが、

どちらかといえば

前者のとしての意味の方が

しっくりくるかもしれません。

 

まぁ、どちらの解釈でも

それぞれ想像できるので、

人によって様々な解釈ができる

曲のつくりになっているところは

さすがです。

 

2.田舎の生活

他のアルバムでは、

特定で1曲、これが好き!というものは

そんなにありませんが、

このアルバムに至っては

ダントツでこの曲が

一番好きだと感じました。

 

星空が

寂しくも満天に輝いているかのような

美しいイントロが特徴的です。

 

そのタイトルの通り、

Aメロ部分では、1番2番共に

田舎での

のどかな生活の模様が

描かれています。

 

おそらく、夫婦とその子供の家族で

田舎に暮らしている、という

想定だと思います。

 

1番では

のどかな田舎の情景、

2番では

そんな中で

平和に暮らしている家族

という構成になっています。

 

ところが。

 

サビの部分では、

そんな田舎から旅立っていく

様子が描かれます。

 

「言葉にまみれたネガの街」は

イメージとしては、

東京都心というか

とにかく都会。

 

自分は

都会へ旅立つために

列車に乗り込み、

「窓の外」=列車の窓の外、ホームで

君が見送っている、

そんなシーンが思い浮かびました。

「窓の外の君に さよなら言わなくちゃ」。

そんな事を考えている最中です。

 

田舎で暮らしていた

幸せな日々は

「あの日の たわごと」として

「銀の箱」に詰めて、

ネガの街=都会 へ

向かいます。

 

「銀の箱」とは

例えば、田舎に残った君が

最後に手渡してくれたお弁当とか

そんな感じでしょうか。

 

「いつの日にか君と また会えたらいいな」

と言うくらいなんで

しばらく田舎に戻る事はなさそうです。

 

ただ、人によっては

「終わることのない輪廻の上」という

フレーズから、

自分が田舎で共に暮らしていた家族を

殺してしまい、

彼らの遺品を持って

都会に一人旅立っている、と解釈したり、

君と家族になっていたら、

将来的にこんな生活ができていたのかな

と考えながら列車に揺られている、

と解釈したものもあるようです。

 

基本的にカバー曲は

あまり好きになれませんが、

スピッツの楽曲をカバーしたアルバム

「一期一会」に収録されている、

LOST IN TIMEによる

カバーも とても好きです。

そちらもぜひ聞いてみてください。

 

3.ナイフ

まるで眠るように

心地の良いメロディが

イントロとして流れてきます。

 

が、タイトルからし

なんだか物騒…

 

こちらも、

ともとも解釈できるのでは

ないでしょうか。

 

の解釈としては、

「ナイフ」は

男性器の事を指していると

仮定します。

 

小さくて無知な君のバースデーに

それをプレゼントすると言っています。

それはつまり、

君の誕生日に性行為をしよう

という事になるのでしょう。

 

それまで、ナイフ=自分の性器 を

君に握りしめてもらっている、

という想像を

毎日毎日浮かべながら過ごしている。

それは、

君を浮かべて自慰行為をしている

という事になります。

 

「サバンナ」は

性行為をする場所=ベッド 

という感じでしょうか。

 

特に初体験では

血も出るし痛みも伴うと聞きます。

「血まみれの夢」とは

そういった様子なのかなと思います。

 

「蜜柑色の満月が膨らむ」という

フレーズは

満を持して迎えた夜、というものが

浮かびました。

「サルから人へ枝分かれ」のように

性行為によって

新たな命が誕生する瞬間

という意味合いもあるような気もします。

 

一方で、の解釈としては、

「ナイフ」はそのままで、

無知な君のバースデーにナイフを贈り、

自分を殺してもらおうとしている

という感じですかね。

 

君はまだ小さくて無知で呑気だから、

誕生日に

「ハンティングナイフのごついやつ」を

贈られたところで、

その意味はまだ分からないだろうから、

そんな君に

自分を殺してくれと言ったら

どんな絶望的な反応をしてくれるのだろう

と想像して

贈る予定のナイフを見ている

という感じが

思い浮かびました。

 

「血まみれの夢」というのは

君の手によって

自分が死んでいく時の事を

想像したものでしょう。

 

「蜜柑色の満月が膨らむ午後6時」は

その決行の時刻を表しているのでしょうか。

 

そんな妄想を繰り広げ、

君の誕生日に

自分を殺してもらうための

凶器を渡すから

待っててね、というメッセージを

送るのです。

 

そう考えると

またどちらの解釈でもいけそうですが、

以前マサムネさんは

「丸いものには死、

尖ったものにはエロを感じる」

語っている事から、

ナイフ=尖ったもの なので、

どちらかと言えば

前者のとしての解釈の方が

説としては濃厚そうです。

 

どちらにしろ狂気を感じる

解釈になってしまいました…

 

余談ですが、

「20号」の歌詞が

歌詞カードでは絵文字のようなマークに

なっていてなんだか可愛いです。

ぜひ歌詞カードと共に

楽しんでみてください。

 

4.海ねこ

このアルバムの中では珍しく

ポップなテンポだな、という印象です。

 

海ねこ、とは

海の方で見られる鳥の種類です。

 

しかし、歌詞の中で

海ねこや、鳥を連想させるフレーズは

これといって出てこないのが気になります。

 

歌詞は、

「宝物」=想い人 と想定し、

その「宝物のありかはわかってたのに」

なかなか会えずにいた二人が

ようやく会えて

せめて今日は二人で楽しもうよ

といった感じがイメージできました。

 

「明日になれば僕らもこの世界も

消え失せているのかもしれないね」と

ある事から、

二人が出会えているのは

夢の中の話なのかもしれないと

思いました。

 

日付が変わり朝を迎え、

目覚める頃には夢から覚めてしまい

またいつものように

一人取り残されている、

みたいな。

 

想い人にはもう

夢の中でしか会えない。

という事は

現実世界には

もう存在しないのでしょうか。

 

そうすると、

「寂しそうに流れていくわた雲」が

その人を指していて、

それを追いかけている自分自身が、

空を渡る海ねこ

であるという事になります。

 

夢で会えても、

また覚めたらいなくなってしまう。

「はじめからこうなるとわかってたのに」、

僅かな幸せを期待している僕

というイメージです。

 

5.涙

バイオリンの寂しげで美しい音色が

まさに美しい涙をイメージさせるようです。

 

「君のまつ毛で揺れてる水晶の粒」

 

この一言で

今にもこぼれ落ちそうな美しい涙の粒を

イメージする事ができます。

 

一人、次の場所で歩き始めようとしている

君も、君の涙も美しい

といった曲だという感じです。

 

この曲の登場人物は「君」のみ。

そんな君を見ている自分自身は

たぶん側にはいません。

 

死後の世界から

一人、取り残してしまった「君」を

見守っている、

といったところでしょうか。

 

自分を失い、悲しみに暮れている君も、

次第に「時の海」…時間によって

その悲しみが少しずつ薄れていき、

新たな「緑色のドア」を自ら開けて、

変わりゆく景色にも気づき始め、

再び前を向いて

君の人生を歩もうとしていく

という様子が伺えます。

 

<まとめ>

以上でミニアルバム

「オーロラになれなかった人のために」を

聞き終わりました。

 

コンセプトが決まると

曲が作りやすいそうで、

この5曲はすぐに作ってきたそうです。

 

でも、こうして聞いてみると

狂気を感じるものから

いろんな解釈ができるものまで、

様々な5曲を

さくっと作ってきてしまう

その才能に

むしろ狂気を感じます…

 

アルバム名の意味を考えてみると、

こんな壮大なサウンドでも

どこか孤独とか

そういったものを感じる曲が多いなという

印象から、

「イマイチ輝けなかった人を

あえて壮大なサウンドで聞いてみましょう」

みたいな感じでしょうか。

それは、もう自虐というか

慰めの音楽という風に取れる

気がします。

本当はもっと

別の意味があるのかもしれませんが…

 

スピッツのバンドスタイルが好き

という方には

少し物足りないかもしれませんが、

スピッツの楽曲に

オーケストラのアレンジを加えると

いつもとはまた違った世界観を楽しむ事が

できるという発見もあるのが

このアルバムの魅力です。

 

また、ミニアルバムという事で

1曲の長さは結構ありますが、

それでも全5曲と少ないので

さくっと聞けてしまいます。

 

初期のアルバムの中でも

かなり特殊で実験的な

ミニアルバムとなっています。

ぜひ聞いてみてはいかがでしょうか。

 

以上、桃亀改めandでした。